【映画感想】青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない/みんな思春期症候群

抵抗がなかったと言えば嘘になる。でも観て”やられた”と思った。良い意味で裏切られたのだ。

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忘年会

昨年の12月に入った頃、長い付き合いの友人から連絡があり軽く忘年会でもやろうよという話になった。予定を合わせた土曜日はどこに行っても混みそうなので少し早めの夕方5時に集まることにし、当日になって待ち合わせ場所の新宿紀伊国屋書店の1階に向かうとすぐに見知った顔を見つけた。久しぶりなのに、よっ、と昨日会ったばかりのような挨拶を返した友人の隣には彼の後輩の姿もあった。とりあえず3人で店を探し、それほど遠くない場所で見つけた居酒屋に入った。まだ店内には人がほとんど入っておらず個室風になっている4人がけのテーブルに悠々と陣取り忘年会とは名ばかりの飲み会が始まった。僕と後輩くんとも面識があり、腰を落ち着けると緊張もなくゆったりとした時間が流れた。

唐揚げをつまみながらビールを飲み始めるのは友人だけで、全くお酒を飲めない後輩くんと少し体調が良くなかった僕はウーロン茶を片手にシーザーサラダをつつきながら会話をしているうちにテーマがいつの間にか映画へとシフトしていた。友人が昨年に全作品を鑑賞した『ターミネーター』シリーズのネタに対して僕が『時をかける少女』を思い出したと呟いたら、アニメ好きの後輩くんが食いついた。

「青春ブタ野郎ってアニメも面白いですよ」

青春ブタ野郎。なんてもの凄いタイトルなんだろう。そう思いながらパッケージ写真を確認してみるとバニーガールの美少女が描かれていた。タイトルだけじゃなく画もキワモノ過ぎて、僕は「今度見てみるね」と言いつつも若干ドン引きしていた。

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

ささやかな忘年会を早めに切り上げた後、僕はすっかり後輩くんに教えてもらった作品のことを忘れていた。思い出したのは慌ただしい年末年始が過ぎ去って、またしても体調を崩してベッドに横たわっていたときだった。寝ているしかできないのに眠れないので仕方なくタブレット端末を枕元に置き、動画配信サイトの作品一覧から手っ取り早く見られそうな番組を探し始めた。画面をスクロールしていると突然バニーガール姿が目に飛び込んできた。うわぁ、と思いながらも後輩くんがお勧めしてくれたときの真剣な表情を思い出した。僕はまぁ暇だし見てみるかと再生のボタンに触れた。

『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』は『さくら荘のペットな彼女』などの著者、鴨志田一さんの小説(通称「青ブタ」)をテレビアニメ化した作品で、全13話のストーリーには原作の1巻から6巻の序盤までが含まれている。高校2年生の主人公梓川咲太(あずさがわさくた)が周囲の友人らと共に思春期症候群と呼ばれる不可思議な現象に巻き込まれながらも、お互いの絆を深めながら解決していく物語だ。

思春期症候群とは思春期の不安定な精神が生み出す妄想や無意識の願望が意図せず具現化してしまう現象で、何が起こるかは人によって異なる。咲太の憧れの先輩は周囲から存在を認識されなくなり、学校の後輩は同じ日のループを繰り返す。不思議な日常を次々と目の当たりにして僕は自身の思春期の頃を思い出す。学校の中で居場所を失ったときに消えてしまいたいと願ったり、良いことがあれば人生最高の1日だけを永遠に繰り返せたらいいのにと妄想していた。まさに思春期症候群だ。他人事じゃないと思ってからは夢中になってしまい、体調が回復するより前に全話視聴を終えてしまった。

青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない

最終話、涙のフィナーレを終え感動に浸っていたら、すでに劇場版として続編があるのを知った。すでにレンタルも開始されていて、もう気持ちを抑えられなかった。

映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』はテレビシリーズの続編で、原作小説の第6、7巻の内容にあたる。平和な日常を取り戻したかに見えた咲太に残された1つの疑問。それは「大人」と「中学生」2つの姿で現れる初恋の人の存在。手がかりを探すうち咲太の運命を左右する重大な事態へとつながっていく。

そうだった。後輩くんが僕にこのタイトルを教えてくれたのは『時をかける少女』の歴史改変について話し合っているときだった。もしも過去に行って昔の自分と出会ってしまったら、もしも過去の自分を殺して成りすましたとしたらと物騒な話をしていた気がする。ようやく後輩くんが僕にこの作品を勧めてくれた理由がわかった。思春期症候群によって作り出された矛盾を突き崩すためテレビシリーズでも登場したシュレーディンガーの猫の理論を用いて畳み掛けるように1つの結末へと導かれる。決してガチの量子力学理論ではなくルールの抜け道を利用した屁理屈みたいなけれど、その手があったか!と驚きの仕掛けに舌を巻く。胸の傷の意味、命の選択、恋の行く末とテレビシリーズでは解決していなかった主人公の謎がようやく解ける。テレビシリーズで満足してたのは何だったんだ?と思うほどクライマックで盛り上がるのは、やっぱり劇場版ならではのクオリティなのかな。

本当は見てはいけない夢だから、タイトルがいつも『〜夢をみない』なのだろうか。だとしても妄想は止められない。大人になるために必ず通らなくてはならない儀式みたいなものだから。

夢のつづき

どうやら原作小説は劇場版の先まで進んでいるらしい。小説版も好きだと言っていた後輩くんは僕よりもずっと先の未来を生きていることになる。今度会ったときには僕と後輩くんの2人の時間のズレが大きなパラドックスを招き世界を大きく変えてしまうかもしれない。

なんてことをきっと次の年末も話しているんだろうな。また一緒に青ブタの夢の続きを話そう。その頃までにテレビシリーズ第2期も始まってくれると嬉しいのだけれど。

登場人物の説明不足を除けば劇場版だけでも十分に楽しめるけど、テレビシリーズで置き去りにされた伏線の回収もあるので、できれば13話まで見てから挑むのが良いと思います。

(C)2018 鴨志田一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

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