【F1 2019】最終戦アブダビGP/次への想い

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夕刻のマジックアワーにアブダビの空が刻一刻と表情を変え、ドラマチックな風景に一年分の思い出が流れていく。そんな感傷などお構いなしにサーキットにはエンジンサウンドが響き渡り、赤のライトが今年最後の仕事を終えて眠りに就く。すると夕陽のオレンジと夜空の藍色、相反する2色のカラーリングに染められたマシンが序盤から緊張感を限界まで引き上げる。

スタート直後、格上のチームだろうが一切の躊躇もなくマクラーレンのランド・ノリスがレッドブルのアレックス・アルボンに喰らいつく。ピッタリと濃紺のマシンの後ろに取り付き、隙あらばと立ち上がり重視のコーナリングでプレッシャーをかける。ターン7のヘアピンをクリアして直後の長いストレートでサイドに並びかける勢いは、総合力で劣っていても序盤の接近戦なら互角の勝負だ。でもここは僅かに届かない。ならばとシケインを挟んで再び全開区間でもう一度オーバーテイクを挑む。すると今度はチームメイトのカルロス・サインツが2台のさらに大外から並びノリスと順位を入れ替える。もしこれがフェラーリだったら自滅の二文字しか浮かばない修羅場を迎えたのだろうけど、お互いをよく知る2人だけあってギリギリの駆け引きでサインツが前に出る。その先にある連続のショートコーナーで今度はノリスがサインツのインを差し、再び前へ。ヒヤリとしながら2台の無事を確かめる。お互いの負けん気の強さと阿吽の呼吸。そして絶対に2人とも楽しんでやってる。

1960年代から続く名門マクラーレンが低迷の時代を抜けて息を吹き返すのに成功した理由の1つに、この若い2人のドライバーが関係してるのは間違いないと思う。過去の大きな実績を一度忘れてルノーとの再スタートとなった2018年。ホンダじゃなくても勝てないじゃん、という事実を突きつけられながら下した新しいドライバーの加入は、偶然だったとしても確実にチームを変えた。苦虫を噛み潰したような顔をした大人たちはもういない。ナチュラルさが真摯さへ、ポジティブさがひたむきな進化へと良い方向に作用して、F1は過酷だけど楽しいってことをマクラーレンは思い出したに違いない。チームに欠けていた部分が補われたら、もともと強豪なんだから弱いはずなんてない。

最終戦も好走を続ける2台。だけどラスト10周でレーシングポイントのセルジオ・ペレスが8位に浮上すると7位のノリスは最後の試練を受ける。ペースの良いペレスがグングンと差を詰めて残り5周でほぼゼロ距離になり、やれることは全てやろうとチームからの無線が飛ぶ。タイヤはもう限界に近い。なのに自己ベストでペースを上げる。目には見えない激しいバトルをカメラの代わりに順位表の激しい点滅が物語る。途中まで使えなかったDRSも今は使用可能で、速度差があればオーバーテイクは比較的容易にできるはずなのに、2人のポジションはいつまで立っても変わらない。

その後方でもサインツが入賞目指して追い上げてる。前のマシンと10秒ほどあったはずの差が約4秒まで縮まっている。あと残り5周。届く。理論上可能なら、それは実現できるということ。机上の空論で罵り合っていた去年とは違う。

幾度、ノリスとペレスの攻防が繰り広げられたのかわからない。ノリスは一度も前を譲らないままいよいよファイナルラップに入る。一度距離を取って体制を整えたペレスも最後の勝負に出る。ターン9からの全開区間でペレスはノリスの背後に付く。鋭角な左のターン11でインに飛び込む素振りを見せるペレス。順位を絶対死守する姿勢のノリスは軽くノーズを左に振って牽制する。するとペレスは右側のスペースに向けて進路を変え、ストレートの勢いそのままに並びかける。意表を突いたアウト側からの攻略にノリスは対応できず、並走したままターン11へ。イン側の狭い方に押し込まれた形になったノリスは加速で鈍り次のターン12で鼻先を押さえられ、ターン13でなすすべもなく引き離される。ほんの一瞬の出来事で長い戦いに終止符が打たれた。

ペレスの名前が順位表の一段上に跳ね上がる。ほぼ同時にサインツの名前が10位入賞圏内に飛び込む。ルノーのニコ・ヒュルケンベルグをオーバーテイクしてようやく手が届いた。たった1ポイント。でもドライバーズランキングの順位を動かす大きな1ポイントでもあった。首位を走るルイス・ハミルトンが最終戦のチェッカーフラッグを受けて優勝を決め、物語は最後の最後に結末を書き換えて背表紙を閉じた。

なんとも今年のマクラーレンらしい戦いだったな、と思う。メルセデス、フェラーリ、レッドブルに続く4位の座は今日のレースみたいな日も乗り越えての結果だし、たとえ1ポイントでもしっかりと獲りに行ってこそたどり着けた場所だから。

自信を取り戻す。たとえやってることが同じでも、それだけで全く異なる結果につながったりもする。今季後半のピエール・ガスリーがそうだったように。チームの中には去る人も新しく来る人もいるだろうけど、2020年は今年の発展系だから今の雰囲気も持ち越せる。なによりもノリスとサインツ、2人の笑顔があるのなら、不安要素よりも可能性の方がずっと大きく見えてくるんだ。

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