【映画感想】Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆/深まる理解と、深まる謎

Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆
(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活製作委員会

ちょっと時間ができたので『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』を鑑賞しました。直前まで『ターミネーター:ニュー・フェイト』の予定だったので急に変更した自分にびっくらこいたんですが見逃さなくて良かった。

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『Re:ゼロから始める異世界生活』とは

『Re:ゼロから始める異世界生活(以下「本編」)』は現実世界で引きこもりの主人公ナツキ・スバルがトラックに轢かれる大イベントもなく現実世界からあっさりとファンタジー感漂う異世界に飛ばされ、1人で右往左往している彼の窮地を救ってくれたヒロイン、エミリアを助けようと彼女のために文字通り命を懸けて次々と降りかかる大騒動を乗り切るお話。

何の特技も持たない少年スバルは、命を失っても記憶を持ったまま一定の過去までさかのぼり時間をやり直せる特殊な能力をいつの間にか授かっていて、死にゲーみたいにゲームオーバーを繰り返しながら正解にたどり着く。だけど死の恐怖や痛み、自らの選択によって生まれる犠牲と後悔の繰り返しは無限に遊べるヌルゲーとは完全に異なり良くも悪くもスバルを変えていく。周囲のキャラクターたちも実はそれぞれに重い過去や心の闇を抱えているのが見えてくると、いよいよストーリーに深みが増してきます。

一見ほんわかした見た目でありながら数多くの闇が秘められたダークな世界観、そしてスバルが特殊能力を利用して回避不可能とも思える運命を名探偵のごとく逆に追い詰めていく爽快感。そんな魅力に惹かれてファンになったのかな?と自己分析してます。

Web版では第六章(そろそろ終盤?)、そして書籍版が追いかけるように第六章に突入、コミックは第三章いよいよクライマックスと進み具合はそれぞれですが、この作品はアニメ第二期に大きく関連してくると思うので、アニメ版(第一章〜第三章)時点の情報をベースとしています。

氷結の絆

本作『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆(以下「氷結の絆」』はオリジナルのifストーリーではなく本編と同じ世界上のある1日とエミリアの邂逅を描いています。第二章ロズワール邸の大騒動直後、第三章の王選が始まる前で、劇場版前作『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow(以下「Memory Snow」)』からの続編でもあり、エミリアがふと過去を思い出した形で第一章以前の前日譚へ飛ぶややこしい時間軸。加えてベースになる世界設定には何の説明もないので、映画館に足を運ぶ前にアニメ第一期までのあらすじくらいは押さえておいた方が楽しめるでしょう。Amazonプライムの会員なら11月28日現在本編アニメとMemory Snowが追加料金なしで視聴できるので、時間のある方は是非観てください。いきなり挑んでもそれはそれで何も知らないまま異世界に飛ばされた感覚が味わえて楽しいかもしれないけど。

物語は本編ではあまり語られていない時代、エリオール大森林と呼ばれる極寒の地でたった1人暮らしていた頃のエミリアの回想がメインになります。白銀一色に染まる周囲の景色は美しくも異様で、かつてこの地で起きた悲劇を言葉なしに伝えてきます。近くの村人との僅かな交流に小さな幸せを感じながら森を見守り静かに暮らしていたいだけなのに、それすら彼女の運命は許してくれないのでした。

タイトルが氷結の絆である通り、氷の魔法を得意とするエミリアとパックの絆の物語。本編初登場時には既に強い信頼関係を築いており精霊使いと精霊としての契約も結んでる2人の、お互いを信じあうきっかけになった過去の出来事が語られます。

屈指の大バトル

見どころの1つはテレビシリーズではほとんど出てこないエミリア&パックが戦うシーン。え、エミリアってこんな残酷で無慈悲な必殺技(しかもコントロール不能)を隠し持っていたの?とかパックのガチ接近戦ってさすが都市をひとつ滅ぼしたとか噂されてるだけのことはあるわーとか想像以上の激しさ。その強さはスバルが命を削って守ってる意味がないのでは?と心配になるほどで、他のメンバーの活躍が多すぎて目立たない2人の能動的なアクションがようやく見れたと喜ぶ一方、お飾り的存在になってしまっている本編との力の差は歴然。過去の方が強いなんて設定上の矛盾があるのでは?と一瞬疑ってしまいました。

でもリゼロの世界では権能や契約と呼ばれる縛りによって記憶に制限をかける嫌らしいテクニックが多用されていて、しかもその効果はサラリと言葉ひとつで流されたりするので、セリフに注意深く耳を傾けていれば本編にも関連するキーワードも含めて過去と現在で食い違いが起こっている理由がなんとなく理解できるようになります。

本気を出したら物語のバランスが一気に傾く程のポテンシャルを目の当たりにして、今後の期待と同時に不安も高まったような気がします。2人揃って全力見せたら世界が軽く滅びそう。

エミリアの揺れる感情

エミリアの本質って素直で優しくてお人好しな、いい子過ぎるほどいい子なんです。性格も子供っぽいのでふとした瞬間に見せる笑顔は天使みたい。なのに誰かのことになると自分を顧みない向こう見ずなところもあって、スバルが守りたくなってしまう気持ちがよくわかる。戦いのない日常のシーンでは本編より少し幼い感じの表情もあって今までとは異なるファン層を取り込めそうな可愛さです。

しかし、そんな無邪気な笑顔とは正反対の闇の深さも容赦なく突きつけられます。かつて世界の半分を滅ぼしたと古くから伝わる魔女の容貌と瓜二つの彼女を世界は拒絶するのです(どうしてそんな怖い人と似ているのかはまだ謎のまま)。現実世界で例えるならヒトラーと瓜二つの顔でドイツに生まれてしまった、ううん、それよりもっと強い憎悪を向けられている感じ。誰かを不幸にするために生まれてきたんだろうか?そう自分に問いかけ苦悩するエミリアを見ていると、戦闘シーンの物理的な攻撃よりも大きなダメージを心に喰らいます。

ただただ理不尽な周囲からの敵意に揺らぎつつも、パックだけを頼りにして絶対に自分を曲げたりしないエミリアの姿を目にしてるうち、ほとんど氷結の絆のストーリー上出番のないスバルの顔が脳裏をよぎります。エミリアの容姿に全く偏見を持たずに真っ直ぐ見つめてくれるスバルの言葉がどれほど嬉しかったのだろうと、もう一度第一話から振り返りたくなるほど彼の存在が強く浮かび上がってきました。エミリアを語る上では、スバルってパックと並んで必要な存在なんだなと再認識。ちょっとウザいけど。

この作品では主人公なだけあって、エミリアの存在感だけでなく彼女の喜怒哀楽の振れ幅が強く大きく伝わってきて、すごーく応援したくなります。この地で背負った大きな罪を1人で耐えようとする彼女の強い芯の部分はエミリア派じゃない人にもわかって欲しい。

パックの正体は?

氷結の絆でもアニメ第一期の中でもエミリアにとって一番信頼のおける存在、パック。ですが彼は意図が読めない意味深な発言が多く、可愛い容姿の割に腹黒そうな雰囲気もあります。例えばエミリアを「僕の娘」と読んだりするもんだから、もしかしてパックの正体って父親なの?と邪推してしまったり。その呼び方が生まれたきっかけは氷結の絆でも描かれているので気になる方には見てもらうとして、それ以外の謎を解く明快な鍵は与えてもらえませんでした。

それに、エミリアに対する接し方が本編と随分違うようで気になります。距離を置きつつもいつも真剣にエミリアのことを考えている姿は、本編のどこか冷たい態度とギャップがあってどうも腑に落ちません。これも2人の間にある契約上の問題として片付けられてしまうのか、より深い意味があるのか判断がつきません。

エミリアとの初めての出会いも、記憶が断片的に差し込まれたりするだけで謎は深まるばかり。エミリアのことばかりじゃなく、パックのことももっと知りたかったよーってのが本音です。

深まる謎は今後に期待

アニメ第二期でも語られるであろうエリオール大森林。エミリアとパックの2人がその地で出会った経緯は理解できるようになりましたが、ハーフエルフと忌み嫌われるエミリアは誰から生まれたのか、精霊パックはどうやってこの世界に生み出されたのか、2人の出自については想像を膨らませる僅かな情報が手に入っただけで明確にはされませんでした。パックに匹敵するほど巨大な力を持つ他の大精霊の存在や本編に登場するキャラクターたちのご先祖さまとの絡みもなく非常に限定的な内容なので、続編を待ち望んでいるファンへのチラ見せサービス的な意味合いの方が大きいのかもしれません。

細切れの情報を与えられてあれこれ悩みながらつなぎ合わせても、確信に至る要素が足りない。そんなスッキリしない後味が残ります。

でもちょっと待てよこのフラストレーション、ピークを迎えた瞬間に冴え渡るスバルの智略が一発大逆転の真実を引き当てるって展開が待ち受けてるとしたら、まさにリゼロだ。この作品から受け取るモヤモヤも本編を面白くするためのパズルの1ピースなんだ!と納得しました。

おわりに

本編自体が完結しておらず、謎の人物や語られていない歴史上の真実もこれからいくらでも上乗せし放題なので短編集やDVD購入特典までコンプリートしてる人でもきっと全てを見通せはしないでしょう。なので劇場公開版の後はアニメ続編と物語が大きく動き出す直前のタイミングを迎えますが、今からファンになっても遅くはありません。もし意味不明なキーワードが出現しても後で調べればいいやくらいの軽い気持ちでお付き合いしていって欲しいなと思います。

正直、Memory Snowが完全にファンサービスだったのであんまり期待していなかったのですが(すみません)、僅かな情報をかき集めて真相に少しでも近づかんとするリゼロ魂を刺激する内容に加え、アニメでは影の薄かったエミリアたんの真っ直ぐな思いと勇ましく戦う姿を拝めたので、結果的には大満足でした。

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