【WRC 2019】世界ラリー選手権 第12戦ラリー・グレートブリテン(GB)/大人の泥んこ遊び

Photo by Warren Wong on Unsplash

雨の心配なんてバカらしいくらい普通に雨が降るラリー・GB。今年はハリケーンもやって来て少し不安だったけど、いつも通りのコンディション。タイトル争いも熱い終盤戦で、ここで勝てれば頂点まであと少し。

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戦いは必然で

木曜日にスタートを切ったラリー・GBはクリス・ミークがトップに立って「もしかしてミークさん勝ってしまうのでは?」なんて期待を抱かせる。金曜日の朝、ステージ2では地元出身のエルフィン・エバンスがトップタイムを出して、イギリス人ドライバーが大活躍。次にはヤリ-マティ・ラトバラが浮上してきて大波乱の予感しかない。

なのに土曜日の午前には、オィット・タナック、セバスチャン・オジエ、ティエリー・ヌービルの名前がリーダーボードのトップに並んでいるのだから、結局はこの3人のためのラリーだった。午後になってヌービルがオジエと順位を入れ替えると、後は最後までオーダーは変わらないままタナックの優勝。前戦ラリー・トルコでのリタイアして取りそこねたポイントをしっかり取り戻してチャンピオンに王手をかけた。

ラリーにはたくさんの「たられば」があって、エヴァンスがマシンを壊さなければとかラトバラさんがあの場所でのワンミスさえなければなんて考えたりもするけど、今回のイベントでは何回時間を巻き戻して最初からやりなおしても結局はタナック、オジエ、ヌービルの3人のうち誰かが優勝しちゃいそうな不思議な感じ。

王者オジエやヌービルでさえコースオフしそうになる。タナックでさえ慎重になってタイムを落とす。そんな雨に湿って滑りやすい路面にエサペッカ・ラッピが大スピンする。ラトバラさんが転がる。クレイグ・ブリーンが横ローリングして、それでも最後まで完走する。最新技術をふんだんに盛り込んだ大人の全力泥んこ遊び。全車にとって厳しいコンディションなのにトップ3以外に訪れる悲劇の数々。どんなコンディションでも、どんなトラブルを抱えていても完走できる走りがベースにあって、そのうえで強みを活かしたアタックができる人じゃないとWRCでは勝てないんだろうなぁ。

タナックの走りをオンボード映像で見ると勝負どころの気合いが違う。たとえば最終ステージ、サスペンションの沈み込みが激しいヤリスの挙動を見事に乗りこなしている。ブレーキングで沈むフロント、荷重を前に掛けながらのコーナリングに入る頃には既に出口の方にマシンの鼻先が向いている。加速を始めると離陸する飛行機みたいに視界が上を向き、リア側に荷重を掛けて後輪が力強くマシンを前に押し出す。マシンの特性もあるけど、アンドレアス・ミケルセンの走りがすごくマイルドで同じステージでも安全運転してるみたいに見える。本気の集中力を最も有効な場面で使える才能。F1とは違って3〜4日かけて戦い続けるWRCではこれも大事な勝利のスキルなのかもしれない。

ということでパワーステージでもトップタイムを叩き出し、1位25ポイント+パワーステージボーナス5ポイントをダッシュしてしまったタナック。ミークさんが頑張って4位入賞で、ドライバーズタイトル、マルティン・ヤルヴェオヤのコ・ドライバーズタイトルに加えてトヨタのマニファクチャラーズタイトルも見えてきた。これって実現すればルマン24時間レース優勝どころじゃない快挙だと思うんだけど、あんまり盛り上がってないのがちょっと切ないです。

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