【WRC 2019】世界ラリー選手権 第10戦ラリー・ドイチェランド/トヨタが最高に輝いた日

Photo by Alex Gorbi on Unsplash

本音を言えば、今の1チーム3台体勢は好きじゃない。だけど、そのおかげでこんな光景が見られたと思えば悪くない。1位から3位まで全てが同じトヨタのドライバー。同じウェアを来た6人が表彰台に並ぶと、凄さよりも仲良し集合写真みたいで微笑ましかった。

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最良の日

初日、ぶどう畑の中のあぜ道はコース幅も狭く視界も悪い難コース。うっかり畑に飛び込めば、そこで収穫されたワインにドライバーの名が付けられてしまう羞恥プレイが待っている。

2017年のMスポーツ在籍時代からドイツラウンド連勝中のオィット・タナックが、今回もスタートダッシュを決めてレースをリードする。ライバルの1人であるティエリー・ヌービルとのタイム差はそれほど大きくないのに、インタビューの表情を見れば違いは歴然。焦りの色を全く見せないタナックに対して、ヌービルは去年までセバスチャン・オジエから受けていたプレッシャーを、今はタナックから浴びている。

2日目に入ってそのプレッシャーが効いてくる。実は最初から最後まで地雷だらけのサバイバルレースなのがラリー・ドイチェランド。それでもリスクを取って限界まで攻め続けるしかないヌービルは、左リアタイヤのパンクという形で優勝の可能性を絶たれてしまう。2位、3位の座を狙うライバルたちも次々とふるいにかけられて脱落していく。王者セバスチャン・オジエにさえ、レースの神様は特例扱いを許さない。

最終日、タナックの後に続く2番手にはクリス・ミーク。トミ・マキネン監督に何を言われたのか、今回は頭のネジがしっかりと締まっている。3番手にはヤリ-マティ・ラトバラが、かつてのキレのある走りの代わりに近年身につけた安定感でサバイバルレースを耐え抜いて浮上する。トヨタのデビューイヤー、2017年の本拠地開催ラリー・フィンランドを思い出す。競技3日目にはラトバラとエサペッカ・ラッピが首位を争い、ユホ・ハンニネンが5位のポジションから表彰台を目指して健闘していた。トヨタの表彰台独占、中央ではラトバラさんの姿。そんな夢が叶うはずだった。だけど最終日、優勝を飾ったのはラッピの方で、ラトバラのマシンはメカニカルトラブルで首位から姿を消していた。ハンニネンは3位に届いたのに、中央にいるはずの姿だけが消えていた。

今度こそ夢が叶う。そんな歴史的瞬間を前にして、最終ステージをラトバラとミークのマシンが激走する。いやちょっと待って。本能なのか落ち着いていられないのか、見てるこっちは気が気じゃない。また何か起きてしまうのでは?そんな不安なんてもちろん気にすることもなく全開で攻めていく。でも2人とも走りは正確で、いつもの不安は消えていく。ワイン畑の間を縫うように、わずか車両1台分の狭いあぜ道を駆け抜けていく。サイドブレーキを引けばキュキュッと小気味良い音が鳴り、突然向きを変えるコースを流れるようにクリアしていく。ラトバラの顔が緊張で固まっている。ミークの眉間にシワが寄る。2分間隔で走り出した2台は、ほぼその間隔を維持したままフィニッシュを迎え、あとはタナックの結果を待つ。

そのタナックは余裕の走りで最終ステージを走行。終わってみればタイムは8番手、どの場面でも無理をせず確実に優勝を狙ったのかなと思ったら実はブレーキトラブルだったとか。最後の最後にピンチを迎えながらも冷静に対応するあたりが完全にチャンピオンの貫禄。慌てて無理していたら今年も表彰台独占の夢がまたも潰えてしまったのかもしれない。

できればラトバラさんが中心にいてくれるともっと嬉しかったかな。でもありがとう、おめでとう。

日本人WRCドライバーの未来は見える?

スポンサーロゴの無い、白と赤と黒のシンプルなデザインが逆に目を引くトヨタ・ヤリスWRC。そのマシンを丁寧な走りで最後まで持ち帰ったのは、トミ・マキネン・レーシングから出走した勝田貴元選手。完走で10位入賞とはいえ、実はWRCトップカテゴリーにエントリーしたのは11台だけでMスポーツのテーム・スニネンが金曜日にリタイアがあっての10位ではあるけれど、それでもデビュー戦で初めてのコースを完走できる能力はすごいと思う。

隣に座るコ・ドライバーが読み上げるペースノートを200%信じきって、そこに道はありませんが?ってところに躊躇なくマシンの鼻先を突っ込んでいけるトップドライバーたちとはまだ大きな差はあるけれど、そんな風にならずに頭のネジがちゃんと締まった日本人っぽいWRCドライバーになれるかも。

ただ、今のWRCはドライバーが余っている状態。チーム数が少なくてトップチームでも2台体勢を維持するのがやっとってところもあったりするから、デビュー戦で優勝しそうなくらいの才能がないとシートが確保するのも大変。日本でもラリー・ジャパンの開催で知名度を上げたり、彼のような人材を支えられる環境も必要になってきそう。

そういえばトヨタとスズキが資本提携したから、スズキのWRC活動をトヨタがバックアップするってのはどうでしょう?今度はトヨタとスズキで入賞圏内独占みたいな。

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