【WRC2019】世界ラリー選手権 第3戦ラリー・メキシコ/満身創痍のマシンたち

Photo by Patrick Hendry on Unsplash

WRC(世界ラリー選手権)第3戦ラリー・メキシコが3月7日から開催されました。シーズン初のグラベル(未舗装路)ラリーはほぼ全てのマシンにトラブルが起こる過酷なレースになりました。

あんまり時間なかったので、残念ながらリタイアになってしまった2台に注目した感想を書いていきます。

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アディオス、メキシコ

WRC9連覇の記録を持つ伝説の男、セバスチャン・ローブの元チームメイト、ダニ・ソルド。当時所属していたシトロエンからセバスチャン・オジエの急成長で追われるようにチームを去り、苦労の末に手にしたヒュンダイのレギュラーシート。今度はそのヒュンダイi20 WRCを、ソルドとローブが文字通り同じマシンを交代に乗りシーズンを戦うことになるなんて。

モンテカルロ、そしてスウェーデンをローブに譲り、シーズン3戦目のメキシコでようやくソルドの番が回ってきた。闘争本能を剥き出しにしたりはしないけど、まだまだ若手に負けてやるつもりはないらしい。もちろんローブに対しても。

お披露目も兼ねた木曜夜のナイトコース、ステージ1を終えて首位から1.5秒差の9位。ひと晩明けて金曜の朝を迎え、いよいよ本格的な戦いが始まる。ステージは滑りやすく感触を掴むのが難しい。それでも午前は上々の滑り出し。チームメイトのアンドレアス・ミケルセンから2.7秒差の3位、2位のオジエとは僅かに1.1秒差。オジエの速さには舌を巻きながらも、それほど必死さは見せない。いつ何が起こるかわからないメキシコでは攻めるよりも守りの方が難しいってことを知っている。さすがベテラン。

気温が上がる午後のループは熱にも強いハードタイヤに履き替える。スペアもハード。選択は正しかったようでステージ5でもオジエのタイムに肉薄する。ミケルセンがパンクとサスペンションの破損でリタイア、労なく2位へと繰り上がる。

テレビクルーがステージ終了後のインタビュー時に気づいた少量のオイル漏れだけが気がかり。

メキシコではポテトチップスの袋がパンパンになるような現象が起こる。高所では気圧が下がることで外側から袋を押す力が弱くなるから膨らんでしまうという原理は、マシンの内部、たとえば空気や液体が通る金属の管でも同じように当てはまる。そして管の継ぎ目には普段以上の負担がかかりオイルなどが吹き出す原因になったりもする。何が起こるかなんて正確に答えられる人はいない。

と思っていたらステージ6からステージ7への移動中にマシンがストップしてしまう。原因はオイル漏れではなく電気系だった。メキシコは気圧の低さだけでなく暑さとの戦いもあって、電気系は特に熱に弱い。目に見えるものならタイヤだろうがシャフトだろうが直せるのに、精密機器はもはやドライバーが扱える領域ではなくなっている。これからはもっと電子機器やコンピューターへの依存が増えていくから、今回みたいなあっけないリタイアが増えていくのかもしれない。それはとてもつまらないものに思えてくる。

ともあれ、これでゲームオーバー。まだまだ戦える力は残っているのに披露する場がなくなってしまった。アディオス、メキシコ。アディオス、ダニ。来シーズンもここで会えるのかな。

何がなんでも最後まで運ぶ

ステージ1では首位から1.7秒差の10位。レッキ(コースの下見のこと)で確認したポジションとは異なるフィニッシュラインに違和感を感じて早めにブレーキを踏んだせいで、ほんのわずかに出遅れた。金曜日の朝のステージ2では路面の岩に当たったのか、早速左フロントタイヤにダメージを受けてしまう。出だしからして嫌な予感がした。

満足できるタイムではないものの、それでも少しづつ感覚が掴めるようになってきた。今シーズン最初のグラベルロード。新しいマシンとのフィーリングがまだ合っていない。毎年常に進化するミシュランタイヤのグリップともバランスを合わせなくてはならない。午後に入って気合を入れ直す。ステージ6の終了後にエンジン音を高らかに鳴らすと、インタビューアーに心配されてしまった。大丈夫、なんでもないから。

そうやって、ようやく調子を取り戻してきた矢先だった。3番手のタイムでステージ7を終えるとソルドのリタイアで総合4位に浮上した。前を行くチームメイトのクリス・ミークとの差は約10秒。表彰台だって狙える位置だった。

なのに突然、オルタネーター(マシンに搭載された発電機)が作動しなくなった。暑い環境によるものか原因はわからない。とにかく、今年も表彰台に上がる道は絶たれてしまった。ラリー・メキシコ。トヨタのデビューイヤーから必ずトラブルが起こる因縁の地は、いつだって試練ばかりだ。

ペナルティを受けての再スタートとなった土曜日はトップ勢と変わらないタイムで走れていた。このまま何事もなく終われば良い1日になるはずが、ライト・フィッティングゾーン(夜間用の追加ライトを装着できる場所)でのアンチロールバーの調整作業を不正行為と見なされ1分の追加ペナルティ。日曜日は岩盤にヒットしてサンプガード(マシン底部に付けて小石などからエンジンなどを守るパーツ)とラジエーター(エンジンの冷却装置)を破損してしまった。壊れた箇所を応急修理をして、失った冷却水の代わりに近くの川まで駆け下りてボトルに組んだ川水で補充して完走を目指す。フロントバンパーも無くなりダウンフォースも失った。急場しのぎの対応でマシンは満身創痍。勢いをつけたジャンプなんて絶対無理だし、これ以上の衝撃には耐えられないかもしれない。最終ステージでは本気の走りをしたかった。でもある意味、これも本気の走りだ。慎重に、慎重に。旅が終わる最後の1メートルまで気を抜かず、祈るように。

昨シーズンの最終戦では優勝し、オィット・タナックの躍進にマニファクチャラーズタイトルの獲得と確実に流れは来ているはずなのに、また遠ざってしまったように感じる。

それでも僕らは走り続ける。1人じゃない。隣には頼れるコ・ドライバーもいる。ゴールの向こうでは僕らの帰りを待っているチームの仲間たちがいる。だから走る。何がなんでも最後まで、このマシンを運んでみせる。

誰かが不運をこう呼んだ。That’s a part of rally. それもラリーの一部だと。そんなときだってドライバーの役目はマシンをフィニッシュラインまで運ぶことだ。終わってみれば上から8番目の場所にヤリ-マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラの名前が刻まれたじゃないか。この努力は決して無駄じゃない。

おわりに

哀愁漂うドライバーたちがいる一方で、選手権リーダーになるとスタートオーターのハンディキャップがあるので苦労するかと思っていたタナックが大健闘の2位表彰台で首位をキープ。改めてチャンピオンの資質を感じました。

第4戦ツール・ド・コルスは3月28日開催です。ここはオジエの得意なコースでまだ試練が続きますが、タナックにもチャンスがあるので楽しみです!

ハイライト動画

ステージ 1 – 4

ステージ 5 – 7

ステージ 8 – 12

ステージ 13 – 15

ステージ 19 – 21


総集編


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