【映画感想】サンセット/眩しいうなじと暗い闇(ネタバレなし)

(C) Laokoon Filmgroup – Playtime Production 2018

3月15日から公開された『サンセット』を一足先に試写会で鑑賞させていただきました。

『サウルの息子』のネメシュ・ラースロー監督が描いた世界は、独特の表現と丁寧に作り込まれたセットで吸い込まれそうなクオリティ。そして肝心の内容は難解極まるストーリーとなっており、完全に監督の手のひらの上で弄ばれました感覚でした。

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歴史の転換期が生み出す歪み

舞台は第一次世界大戦の少し前、1913年のブダペスト。そこはオーストリア=ハンガリー帝国という異形の二重国家の繁栄と、革命の風がぶつかり合う場所。賑やかな街を行き交う人々の視線は常に周囲を警戒した様子で、少しでも通りを離れればギラついた目の男たちが睨みを効かせている。

翌年の1914年には皇帝・国王の継承者フェルディナント大公とその妃ゾフィーがサラエボで暗殺され、それをきっかけに第一次世界大戦、ついには帝国の崩壊へとつながる、歴史の転換点に差し掛かろうとしている時代。

引き金1つで混沌に飲み込まれてしまう危うさ。監督の故郷ハンガリーの約100年前の空気は、現代の風潮に雰囲気がよく似ている。だからこの舞台が選ばれたのだと思う。

そして、こういった時代で華やかに咲く美しいものたちの足元には闇が広がっている。

主人公の眩しいうなじ

冒頭、帽子を被った美しい女性。高級品ばかりが並ぶ帽子店を訪れた1人の女性はエマ・ワトソンに似ていて凛とした雰囲気。彼女の名はイリス。かつて両親が経営していたその帽子店は、今ではオーナーもすっかり様変わりしてしまっている。昔のことを知りたいと願うイリスに対して店側は警戒の目を向ける。

カメラはイリスの周囲を舞いながら背後霊のように彼女を追い続ける。周囲から疎まれ、たった1人で真相を探るイリス自身も時に肉体を持たない存在のように思えてくる。浅い被写界深度が彼女の不確かな過去と未来を表現する。光と影、現実と非現実、過去と現在。境界線を失って入り乱れる。

1つだけ確かなのは常にイリスが目の前にいることだけ。彼女の眩しいうなじを中心に世界が回り始める。



過去を覆う暗い闇

断片的な手掛かりを探るうちに取り返しの付かないところまでイリスは踏み込んでいく。両親の死、店が隠し通すしきたりなど真実に近づけば近づくほど疑念が生まれてくる。

もしかすると、全てが幻想なのでは?

そう思い始めた頃に突如浮かび上がる、存在すら知らなかった兄の姿。追い求めるイリスはさらに闇の奥へと足を踏み込む。もちろんカメラも否応なく引きずり込まれていく。

もしかしたら、もしかしたら。この言葉が何度も頭の中を駆け抜ける。謎が謎を呼び収束することなく積み上がっていく。結論を言葉にするのが怖い。合っているかではなく、それを選択した自分が恐ろしくなってくる。

イリスのうなじに見とれて付いて行ったら、一緒に闇の中へと落ちてしまった気分。




おわりに

試写会では鑑賞後に映画評論家の大寺眞輔さんによるトークショーがあり、時代背景や監督の意図などをお聞きすることができたおかげで安心して帰路に着くことができましたが、何も知らずにフラッと劇場に足を運んでいたら発狂していたかもしれません。なんだか『ツイン・ピークス』みたいな。それくらい謎が深いです。

作中のいろいろな事象から考察を重ねるのが好きな人など玄人向きな作品だとは思いますが、監督にいいように弄ばれたいマゾヒスティックな方、または首筋、うなじフェチな方も満足できる内容になっています。

ヒューマントラストシネマ有楽町や新宿武蔵野館などで本日3月15日(金)より公開されていますので、是非観てくださいね!映画そのものよりも観た人の感想読むのが楽しみです!

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