【WRC2019】世界ラリー選手権 第2戦ラリー・スウェーデン/王者を狙う者たち

2019年2月25日

WRC
Photo by Peter Besser on Unsplash

WRC(世界ラリー選手権)第2戦目となるラリー・スウェーデンが2月14日から開催されました。シーズン唯一のスノーラリーは、モンテカルロとはひと味違う波乱の展開に。

今回も妄想をたっぷりと込めて振り返ってみます。そこには2019年のチャンピオンを狙うドライバーたちの思惑が見え隠れしているように感じられました。

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強さを形に変える

開戦はトールシュビーの競馬場。ライトアップされた白銀の舞台は、まるで闇夜の中に浮かんだ小島のようだ。よく晴れた夜空には不思議な形の雲が浮かんでいる。気温は3度、優しい風が吹いている。オープニングステージはたった1.9kmのショートコース。2台並走のトラックには人工のジャンプ台が設置され周囲を騒がしい観客たちがグルリと囲んでいる。純粋なラリーとは趣向の異なる、いわばお披露目の舞台。

マシンのノーズをスタートラインに揃えてサイドウィンドウの向こうに目をやれば、青がメインカラーのMスポーツから赤のシトロエンに乗り換えたセバスチャン・オジエの横顔が視界に映る。落ち着いているようにもあり、以前よりも覇気を失ったようにも見えなくはない。

ライトアップされた会場に響き渡るエンジン音。スタート。

2台のダッシュは横一線。轍がタイヤに噛み付く。左右にブレるマシンをねじ伏せる。アウト側からスタートしたオジエが大きな弧を描いてコーナリングを開始するのを横目に、半径の小さいイン側コーナーの先にあるジャンプスポットに照準を合わせる。

どんなミスも許されない。与えられたオジエとの決戦の場。欲しいのは良いタイムではなく彼に勝ったという事実だ。

昨シーズンはオジエを上回る力を得たと確信した。イタリアでは直接対決も制した。追い風が吹いていたはずだった。しかしMスポーツのチーム戦略が徐々に効果を発揮した。敢えてペナルティを受けてでもポイントを奪い、チームメイトの順位すら下げるしたたかさ。それはオジエの心にもポイントにも余裕を与え最終的に頂点に立ったのは彼の方だった。ドライバーとして、そしてヒュンダイというチームとして彼らに対しフェアに戦いすぎたと思った。もっと徹底的に叩く必要があった。手加減して勝てる相手ではないのだ。

2ラップ目。長い最終コーナーを抜けた先にフィニッシュラインが見える。どこかでミスでもしたのだろうか、オジエのマシンは後方だ。

フィニッシュ。これから始まる長い旅路にとって、わずか0.8秒差の勝利でしかない。だがこの結果がプレッシャーを与える。ラリー・スウェーデン。2年前はくだらないミスで1年を台無しにした場所。昨年は優勝し、今度こそはと思わせてくれた場所。

ここで有利に立てなければ次はない。ティエリー・ヌービルという名をWRCの頂点に飾る。そのためだけに、走る。

もう一段上へ

マシンが飛ぶように駆ける。どこまでも高く舞い上がりそうな気持ちを抑える。ここはスウェーデン、WRC屈指のハイスピードコース。その分ミスをしたときのダメージもデカい。前半は慎重に入る作戦だった。それが功を奏した。

ステージ10、最終日を明日に控えた3日目の朝の時点で、ライバルたちはあらかた脱落していた。あのオジエでさえ一瞬のミスで姿を消してしまった。普段ならスノーバンクにリアを当てても大きなミスにならないが、ラリーではほんの僅かな差で命運が大きく変わってしまうことがある。

モナコでのオジエとヌービルの一騎打ちの余韻が消え失せて、視線がオット・タナクという第三の男に向けられる。ここで優勝すれば一気にチャンピオンシップ首位に躍り出る可能性がある。

楽に勝てるのか。いや違う。ここからなのだなと思う。

ラリードライバーは常に全力でアタックしているわけではなく、安全圏に入れば後続とのタイム差をコントロールしつつリスクを抑えてクルーズ・モードで走る方法を持っている。

かつての王者セバスチャン・ローブと現在のチャンピオンであるオジエは、それだけでは無いように思う。戦闘機が長時間の高速巡航を可能とするようなスーパークルーズ・モードを会得しているはずだ。それを手に入れるには、今がまたとない好機だ。

スロットル、ブレーキ、そしてステアリング。すべてのインターフェースからのフィードバックに全神経を集中する。速さを失わず、かつリスクも増やさない走りが可能なのだろうか。そんな不安にマシンが無言で答えてくれる。トヨタ ヤリスWRC。こいつとならできそうな気がする。

たとえ一瞬でも

スプリット1を通過する。ここまでのペースは悪くない。もっと踏み込めるはずだと自分に言い聞かせる。白雪が剥がれ土混じりになった黒い路面を削り取りながら、青いリバリーのマシンが疾走する。

Mスポーツ、フォードフィエスタRS WRC。その名を与えられたマシンの出来は決して悪くない。トヨタほど開発資金に余裕はないが決して遅くはないのだ。

現にチームメイトのテーム・スニネンと合わせて5ステージでファステストタイムを奪っている。オジエがいれば勝てた。そう言われても仕方がない。

昨シーズンは彼のサポートに徹した。実力どおりに走れば時には上回ることもあった。確かにオジエのために作られたマシンは、他のドライバーが乗りこなすのは難しい。だからと言ってそれを言い訳にしてはいけない。オジエ自身、かつてセバスチャン・ローブのために作られたマシンを駆って強さを証明して見せたのだから。

今の自分に足りないのは走りの一貫性だ。そして、たとえ一瞬でもオジエよりも速く走る闘志だ。パワーステージのためにタイヤを温存して勝負に懸けたオジェだが、このペースなら追いつけるかもしれない。

スプリット2を駆け抜ける。まだまだいけるはずだ。大きな円を描く左コーナー。轍に足を取られる。上下に跳ねるマシンを抑え込む。これが最終ステージ。最後にいいところを見せてやろうじゃないか。一瞬でもいい。オジエに勝てる力があると世界に示したい。

フィニッシュ。歓声が聞こえた。

エルフィン・エバンス。その名はオジエの上にあった。

ハイライト動画

ステージ 1 – 4

ステージ 5 – 8

ステージ 9 – 11

ステージ 12 – 16

ステージ 17 – 18

最終ステージ(パワーステージ)

おわりに

これ以上ないってくらい、タナク選手の強さが現れた一戦だったと思います。でもWRCのチャンピオンシップリーダーには出走順ハンデが課せられるので、次戦のメキシコではヤリスの苦手な高地で高温の環境もあり厳しい戦いになるかもしれません。次の課題は首位の座でどこまで耐えることができるかです。

第3戦ラリー・メキシコは3月7日開催です。お楽しみに!

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