突発性難聴になったときのお話

 Photo by Valeria Boltneva from Pexels
Photo by Valeria Boltneva from Pexels

ツイッターでつながりのある方が突発性難聴で入院したのを知って、かつて自分の身に起こった出来事を思い出しました。実は誰にでも突然起こりうるし、放置しておくと取り返しのつかないことになりかねない危険な症状なんです。

参考になるわけではないと思いますが、僕の場合はどんな感じだったのかお話します。

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それは静かに忍び寄る

本当になんでもない朝でした。目が覚めると、なんだか耳に違和感を感じました。痛みなどは特になく、テレビを付けてみると音がとても遠くに聞こえるのです。

聞こえにくいのもあるし耳鳴りもしていました。例えるなら耳の中に水が入ってる感じ?そして低い音がボワァーっと鳴り続けてました。昨晩シャワーに入ったときに水が耳に入ったのかなとか考えながら、まぁそのうち元に戻るだろうと思ってそれほど気にもせず仕事に行きました。

会話も、話している人の方を向いていればなんとか聞こえるので業務に支障はありません。ただ、横や後ろの音が拾い難く、ボワボワと聞こえて何を言っているのかわからないことがありました。ミーティングとかは結構集中しなければならず、思っていた以上に疲れました。

週末が近かったので(確か金曜日)土日をゆっくり休めば治るのかな、なんて考えました。幸いにも大きな仕事がひと段落した直後で、遊びの予定を立てる余裕もなかったので静かに過ごしました。音が聞こえないと距離感や方向感覚も落ちているような気がして、知らない場所に出かけるのが少し怖かったのもあります。とにかく、寝て、起きて、散歩して。そんな穏やかな週末でした。天気も良くて秋の空が高かったのを覚えています。

でも週明けの月曜になっても元に戻らず、だんだん心配になってきたしストレスも溜まるので火曜日の午後になって病院に行きました。そこで言われたのが、

「突発性難聴ですね」

という聞いたこともない症状だったのです。

わからない不安

診察を受けても特にはっきりとした原因はわかりませんでした。ただ、問診の中で当てはまっていたのが過労や栄養不足でした。ちょうど半月ほど前まで忙しい日々が続いており、土日も出勤したり、ほぼ毎日終電ギリギリでの生活でした。寝不足に弱いので徹夜はしないようにしてたのですが、1度だけ終電を逃して職場に泊まったこともありました。多忙になると食事もあまり摂らなくなるタイプなので(意識して食べるようにはしてるんですが)栄養も不足していたかもしれません。それでもなんとか納期までに終わらせ落ち着きを取り戻した矢先だったので、なぜ今頃?と驚きました。

とりあえず様子を見ることにし、薬だけ処方してもらって(といっても栄養剤くらいしかないのだけど)帰りました。

1週間後、再診してみると全く良くなっていませんでした。耳鳴りは続いてるし、聞こえないというストレスで頭痛は起こるし、明らかに正常ではない結果を見せられて再びショックを受けました。入院して治療したところで治るかどうかもわからない。この「わからない」というのが一番辛い言葉でした。わからないから不安になってやって来たのに、わからないで返されるなんて。

外に出ると、その日も秋の空がとても綺麗でした。気分転換に遠回りして帰ることにしました。

病院を出て玄関前の階段を降り、いつもと反対方向に歩いて行くと川にかかった小さな橋がありました。下までは結構な高さがありました。小さい頃から目も悪いのに、その上耳まで聞こえなくなってしまったら。そう思うと絶望的な気持ちになって、制す橋の欄干に持たれながら、ここから飛び降りてしまうことすら想像しました。音が聞こえなくても立派に生きている人もいるんだからそこまで思い詰めなくていいのに。今ならそんな気もしますが、気持ちの落ち込んでいるときに追い打ちを掛けられてしまえばどこまでも堕ちていってしまうんですね。

奇跡みたいな、ある日

もちろん自殺なんてせず、でもしばらくの間テンション低いまま過ごしました。そのうち聞こえにくさへの対策を考えるように鳴りました。聞こえた音への意識を高めたり、視覚で補おうと考えてみたり。後ろから来る車の音も耳だけじゃなく振り返って実際の距離を確かめるとか、今は完全に聞こえないほどじゃないから、ひと手間加えるだけでいいんだと気づいたら少し気持ちが楽になりました。仕事面でも、体調に問題があることは一緒に働くメンバーに伝えました。ちょうど繁忙期が終わったあとだったので無理することも少なく、身体を休めることができました

それから目や耳が不自由な人たち向けの施設を調べたりもしました。あるにはあるけどそんなに近い距離じゃなかったし、外から様子を伺ってみても、本当に運営されているのかわからないくだいひっそりとしていて安心して頼れる感じはしませんでした。中に入って相談すれば全然印象は違うのかもしれませんけどね。

サポートしてくれる場所は、あるにはある。だけど自分ひとりでも何とかやっていけるくらいの努力はしなければならないようでした。手話も覚えなきゃ。会話は筆談なのかな?仕事は大丈夫だろうかと、頭の中がいっぱいになりました。

その後何度か通院しましたが症状は改善せず、諦めかけていた頃のことでした。いつものように目を覚まして出かける準備をしていると、なんだか違和感がありました。左側がすっごく広く感じる……。

なんと左耳の耳鳴りが、ずいぶんと静かになっていました。突然窓が開いて遠くの音が聞こえるようになった、そんな感覚でした。ボワーっとした低い音も何となく小さくなった気がしました。

数日後に病院に行って検査をしてみると数値上にも症状の改善がはっきりと表れていました。その後は右耳も徐々に治り始め、約半年で通院を終えました。最後の通院のとき、病院の玄関から空を見上げるとすっかり春の空になっていました。帰りに遠回りして川沿いを歩くと桜並木がサラサラと音を立てて揺れていました。耳を澄ませば世界中のどんな音だって聞こえそうな気がしました。

全く聴力が戻らなかったり、手術したとしても完全には治らなかったりする人も多いそうです。

病院でも言われましたが、身体の異常を早めに意識し、早くから症状を改善するための生活ができたのが一番の幸運だったのかもしれません。

おわりに

こんな感じで、僕の身に突発性難聴は突然やってきて突然去って行きました。今は通常生活の中では疲れていると耳鳴りがするくらいです。通常の映画館の音は平気です。爆音上映とかは怖いので行けません。ライブハウスでは大音量な演奏で右耳が詰まった感じになって2、3日戻らなくなりヒヤヒヤしたことがあり、それからは主にアコースティックなライブに足を運ぶようになりました。

耳くらいって考えて無理してる人がいると、早く病院に行って!って思っちゃいます。耳は身体の一部です。せっかく授かったのなら、長く大事に使いましょうね。


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