【フォーミュラE】シーズン5 第2戦マラケシュePrix/リスクテイカーズ

2019年1月27日

マラケシュePrix
FIA Formula E

2019年1月12日(土)にフォーミュラE シーズン5(2018/2019)マラケシュePrixが開催されました。 北アフリカのモロッコにある都市、「神の国」を意味するマラケシュで行われた第2戦は、最後の1秒まで誰が勝つのかわからない超接近戦!

どうやら今シーズンも最後まで大いに楽しめそうです。

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恐れを知らぬギャンブラー

スタートで一瞬出遅れる。前を行くサム・バードの背中が少し遠ざかる。右サイドはセバスチャン・ブエミが被せてくる。ポール・ポジションからスタートしたバードはすぐさま内側のスペースを潰しにかかる。巧い、が少し甘い。イン側が縁石ならば飛び込める幅。だがメインストレートのコースエリアを区切るのはウォールだ。いくらパワーアップしたGen2マシンでアタックモードを使ってもさすがに壁は壊せない。

落ち着きを保ちつつ21台を従えてバードの青いマシンがターン1に差し掛かり、ブレーキングで減速する。彼の真後ろに付けたハンターの手が動く。ここしかない。ステアリングを左に切る。マシンが壁に吸い込まれていく。

あったはずの壁が消える。金色の矢がバードのインを射抜く。

ストレートエンドでウォールが途切れた矢先、バードのマシンの更に切り込んで内側にノーズを突っ込む。強引なレイトブレーキングでこれ以上曲がらない。右フロントがバードのマシンに触れる。接触を嫌がるバードが引くか、弾かれるか。勝負。

バードは、まるで接触に気づいてもいないような素振りでコーナリングを維持する。しっかりと、四輪全てがマシンを支えている。こっちはブレーキがロックして操縦もままならない。コース外のダストがグリップを奪う。一瞬で景色が変わる。他のドライバーたちと目が合う。

コントロールを失ったマシンは180度向きを変え、あっという間にターン1の外側に弾き出される。代償は21位からの仕切り直し。ただの1度、賭けに負けただけだ。タイトルホルダーでありながらチャレンジャーでもあるジャン=エリック・ベルニュは嬉々として後方からの追い上げに挑む。

天国と地獄

オープニングラップ、ターン1での強襲に失敗しレースの流れから弾き出されたベルニュ。コントロールを失った金色のマシンは外へと流れていく。

ブエミを始め、アウト側にスタートのドライバーたちは巻き添えを食って行き場を失っている。だが一箇所だけ、安全で確実なスイートスポットが存在する。ベルニュがいるはずだった場所。スターティンググリッドで彼の後方に位置していたアレクサンダー・シムズが混乱に乗じてすんなりと収まる。そのすぐ後ろに飛び込む。今回も勝てるチャンスがあると確信する。

レースは落ち着きを取り戻し、ようやく自力での勝負が始まる。モロッコの青い街シャウエンを彷彿とさせるBMWアンドレッティのリバリーが2台揃って走行する。前を行くのはシムス。でもペースはこっちが速い。 ターン3でインに飛び込む。無理なく前に出る。

首位のバードもペースが上がっていない。プッシュしてジリジリと差を詰める。後ろにつける。シムズと違って簡単には譲ってもらえない。後ろを見ながらアウトを牽制しつつインを締める。巧い。だがプレッシャーは確実に効いている。集中力が切れたそのときに勝負を懸ける。その時まで待つだけだ。

オーバーテイクポイントのターン3に差し掛かる。軽くイン側を意識させる。注意を後ろに払った分、立ち上がりでバードの加速が鈍る。ターン3を超えて安心したのか一瞬の隙を見せる。今だ。

ターン4。多少強引に、だが躊躇なくインに飛び込む。ターン5、6へとつながる変則シケイン。勝敗はターン7までのストレートでの加速勝負だ。十分に自信はあった。だがバードはミスであっさりと順位を落とし、後ろのシムズまで付いてきてしまった。バードの方が楽だったかもしれないと一瞬思ったが、まあどちらでもいい。後は順位を守るだけだ。

チェッカーフラッグまで残り10分を切った。勝利まであと少し。だが後ろにピッタリと付けたシムズの方が後半のペースがいい。ちょっと近すぎやしないか。チームメイトなんだからもう少し遠慮してくれればいいのに。

減速しながらターン4、そしてターン5、そこから加速してターン6を抜ける。おいおい、嘘だろ?ターン7手前のストレート、シムズが右サイドから飛んでくる。明らかにヤツの方が速い。レイトブレーキングで抑え込むしかない。シムズのマシンが減速を始める。並ぶようにブレーキを踏み込む。

オーバースピード、タイヤはロック。全くもって操縦不能。なのにシムズの方は態勢を立て直し、さっさとレースに復帰していった。マシンは力なくウォールに当たりフロントから衝撃を受ける。2連勝のはずが悪夢のリタイアになった。

レースは続いているのに、なぜここに立っているのか。本来いるべき場所にはシャウエンの青い街並みではなく、モロッコの土の色をした赤いマシンが見えた。アントニオ・フェリックス・ダ・コスタの名は勝利者どころか完走者のリストにも載らなかった。

ラスト1秒まで戦いだ

セーフティーカーの誘導中にフォーミュラEのがレース時間、45分間を超えた。このまま終われば表彰台が決定した。しかしレースは45分間+1ラップ。セーフティーカーがサーキットを去り、ファイナルラップと言う名の、たった1周だけのスプリントレースが始まろうとしている。

レースペースは悪くもないが良くもない。シトロエン製からアウディ製にMGUを切り替えても予選ほどのパフォーマンスを決勝で発揮できない問題は前シーズンから解消できていない。

運の悪いことに4番手のシムズがアタックモードを温存していた。25kWのパワー上昇。その威力は数字から連想するイメージよりもずっと凶暴だ。少しでもスペースを与えれば難なく横に並ばれる。

長い長いファイナルラップが始まる。

ターン1、イン側に寄せる素振りを見せてアウト側にシムズを誘う。ここでは大回りになる分タイムをロスする。ターン2からターン3へ。ここでもアウト側からオーバーテイクを仕掛けるように誘う。インには入らせずアウト側にも余裕を与えない微妙なラインをトレースする。

ターン5、そしてターン6。ターン7へのストレートにつながる難関だ。ブレーキングで相手にも減速を促しタイミングを外す。コーナー立ち上がりに合わせて力を溜める。絶対に譲れないインにウォールギリギリまで寄せる。ストレート。青いマシンが矢のように飛ぶ。追いついたシムズのマシンが横に並ぶ。できる限りプレッシャーをかけて走行ラインの選択肢を減らす。あとは耐えろ、耐えろ。

ギリギリのタイミングでブレーキングして左に切り込む。シムズにはクロスラインを取る余裕もない。抑えきった。気付くと前を行くジェローム・ダンブロシオとチームメイトのロビン・フラインスが目前にいた。ターン8からターン10までの複合コーナーを抜けるとストレートが待っている。トップから7台がノーズトゥているで並ぶ。が、もう追ってこない。ターン11、そして最終コーナーを超える。ダンブロシオがバランスを崩す。しかし順位は変わらない。

ようやくのゴール。ようやくの表彰台。サム・バードにとって今季初の入賞は最後の1秒まで死力を尽くした結果でもあった。

【動画】FULL RACE! 2019 Marrakesh E-Prix (Season 5 – Race 2)

おわりに

第1戦に続き最後まで激しい戦いに釘付けでした。こんなの毎戦やらなきゃならないドライバーたちは大変ですね。でもこれならファンが増えるかも。レースの長さも観戦するのにちょうど良く、いかにも現代が生み出した新しいレースって感じがします。

第3戦は1月26日、チリのサンティアゴで開催です。お楽しみに!

画像の出典:FIA Formula E

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