【フォーミュラE】シーズン5 第1戦サウジアラビアePrix感想/新しく、懐かしく

2018年12月22日

フォーミュラEサウジアラビアePrix

2018年12月15日、5シーズン目を迎えたフォーミュラEの2018/2019シーズンがついに開幕しました。有名メーカーの本格参戦、レギュレーションの大幅な変更、そして何よりもニューデザインで生まれ変わったオープンホイールのエレクトリックマシンの強烈なインパクトとで注目を集める新世代のモータースポーツ。

しかし、そこから感じれれたのは古き良き時代の温もりでした。

スポンサーリンク

デジタルデータとヒューマニズム

スタートからの短い直線を加速してターン1を左に切り込めば、右、左、右、左とターン14まで続くライン上でマシンはダンスのステップを踏む。その先の大きく右に回り込むターン17を抜けると、ようやくお待ちかねのロングストレート、シケインの入り口を目掛けて飛び込めばストップ&ゴーのオーバーテイクゾーン。最後ターン21をクリアすれば、イン側にはアクティベーションゾーンが設けられていてアタックモードで一時的なパワーを得ることができる。ただしゾーンを通過するには通常よりも強い減速が必要で、増大するエネルギー量をポジションアップに活かせるかは腕次第。

金のテチーター、銀の日産。昨年以上に華やかで洗練されたチームそれぞれのカーリバリー。よりマッシブな外見になったGen2マシンが実戦で走る姿を早く見たかった。なのに予想外の雨が華々しいはずの開幕戦にジャバジャバと水を差す。フリープラクティスも遅れに遅れ、サーキット上を走るのは運営車両やトラックばかり。なんだかなーって思っていたら。

そこでカメラが映し出したのは人間らしさでした。

サーキットコンディションが回復せず、待つことしかできないドライバーたち。でも彼らはジッとしてなどいられない。アウディのピット裏にふらりと現れたのは昨年のチャンピオン、ジャン=エリック・ベルニュ。スマホ片手にアウディのドライバー、ダニエル・アプトにためらいなく近づいていくと、2人で仲良く動画を見ながら談笑し始めて、とってもフランクな雰囲気。

ピット前ではサム・バードがレースディレクターの車に颯爽と乗り込みコースの状況確認に向かって、戻ってくるとドライバーたちが集まって真剣に意見を出し合っている。

F1だとルールが厳格になりすぎて、そのために目的すら見失ってしまうようなことすらあるけれど、まだフォーミュラEは良い意味での緩さが残っているみたいです。ただし世界選手権というプロフェッショナルスポーツでもあるから適当なレースなど許されない。そんなときにドライバーたちが積極的に行動している光景を見られるのは、草レースっぽくもあるけどとても新鮮だし、これが本来のレースの姿なんじゃないかって思ったりもしました。

スピード、エネルギー使用量、ドライビング情報やチームディレクターの心拍数までがデジタルデータとして開示され、その全てを駆使して勝利の戦略を立てる情報戦のはずなのに、その舞台から伝わってくるのは古き良き時代の手触りの温かさ。関わる人達の表情。なんだかとっても懐かしい感じがしました。そんなレースが楽しくないはずがないじゃん。

雨で大混乱の予選でポールポジションを奪取したのは、昨シーズンは表彰台にも上がれなかったアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ。決勝が始まると今度は大幅に変更されたレギュレーションに振り回される、予選とは異なる混乱っぷり。

ポールスタートが久しぶり過ぎて焦ったのかスタートポジションの止まる位置を間違えて通り過ぎ、大慌てでバックするハプニングも。ちょっと戻したはいいけど、なんか斜めってるし。これ大丈夫?って思ってたら多めに見てくれたみたい。

レースに入ればアクセルペダルではなくソフトウェアに委ねられた最大出力コントロールはプログラムのミスが多発しペナルティが続出。せっかく首位に立ったベルニュもドライブスルーで後退。フェリペ・マッサはファンブースト(ファンがドライバーたちに投票して、上位5人だけが特別なパワーアップを受けられます)の権利をもらった直後に早速起動!後半にならないと使えないって知らなかったらしくこちらもペナルティ。

大きな見せ場でもあるアタックモード絡みではホセ・マリア・ロペスが2度もアクティベートゾーンを踏み損ねる(決められた走行ライン上を通過することでアタックモードが使えるようになります)痛恨のミス。その都度順位を落としてしまう1人罰ゲームの末、集中力を失ったのかウォールにヒットしてレース終了。

そしてポジションを争うグループ内で誰かがアタックモードを使用すれば、連鎖反応で次々とライバルたちもパワーアップ。画面表示はまさにカオス。使い切ってしまったドライバーたちが、後ろからやってくる脅威に怯える姿が目に浮かびます。

カメラに映っていないマシンもアタックモードを使用すれば画面に表示されるから、1つでも順位を上げようとする意気込みが感じられる。昨年からの勢いが続くテチーターは、不調から抜け出せないの日産(昨年はルノー・e.ダムス)に抗う時間も与えず追い抜いていく。口笛を吹いて喜ぶベルニュと、苦々しい表情のブエミの姿もたやすく想像できる。最先端の技術が、逆に人間臭さを明確に伝えてくる。

最後は猛追するベルニュをかろうじて押さえ込み、ダ・コスタが新時代の幕開けをポール・トゥ・ウィンの勝利で飾りました。シーズン1、フォーミュラE第一期に活躍したドライバーが第二期の初戦で復活を遂げるなんて想像してる人は少なかったと思います。さすが意外性の男、でもBMWの本気も伝わってきて、今シーズンは全く先が読めなくなりました。

結局どれだけ技術が発展しても、人が考え、人の手で創り、人の手で走る限りモータースポーツの楽しさは普遍なんだろうなと思います。面白くなくなってしまうのは、考えることを止め、機械的な精工さだけを求め、ただ形式通りのルーティーンを繰り返すだけの非人間らしさに、人はときとして陥ってしまうから。そんな冷たさは、ファンには簡単に見通されてしまうから。

F1との最高速度差は約100km。人間の限界を超えるスリルを味わうには物足りないし、世界に対するエネルギー問題を背負ったショーケース的な意味合いである部分も残っています。それでもモータースポーツの本質を失わない限り、未来のレースとしての可能性は秘めているんじゃないかと思います。

【動画】A New Era Begins | Race Highlights – 2018 SAUDIA Ad Diriyah E-Prix | ABB FIA Formula E Championship

おわりに

散々テスト走行の動画を見てきたはずなのに、実戦で見たニューマシンの姿はとっても重厚で刺激的。ワークス参戦したBMWがいきなり結果を出してしまうとか戦力図も大幅に変わりそうで楽しみです。

来年あたりはリーマンショック後久々の景気減速が起こりそうだし、そうなるとチームの撤退とかありうるし、まだまだどうなるのか不安なところも多いですが、期待多めでこれからも応援していこうと思います。

画像の出典:FIA Formula E

スポンサーリンク