【映画感想】リズと青い鳥/鳥かごの開き方

2018年12月10日

リズと青い鳥

冒頭から、2人の距離感に違和感があった。言葉ではなく、敢えて表現で伝えようと散りばめられた細やかな描画に目を奪われ、逆に主旋律の輪郭を見落とす要素になっているんじゃないかと不安になった。珍しく素直に受け入れられない物語を目にして少し焦った。流れに乗れない。僕は途中で席を立ってしまうかもしれない。

そう思っていたはずなのに。

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飛び立つ音

みぞれが志願した第三楽章。

鳥かごの中の一羽の小鳥が明るい外の光へと目を向ける。そこは愛する人のいない世界。だけど自分がいるべき世界。フルートの音が扉を開く。

あなたが望むならと、助走し空へと駆け上る。オーボエの軽やかなキーのリズムが、小鳥の羽ばたきのように軽やかに舞う。目を閉じればどこまでも広がる青い空が見える。決して振り返ってはいけないと言い聞かせながら、遠く、遠く、自由へと旅立つ青い鳥。あなたがそう望むからと。

大きな空を舞うための美しい翼を閉じて、狭い鳥かごの中の愛する人とひとつになることはきっと罪ではない。でもあの人は知ってしまったのだ。鳥かごの向こうへの消えない渇望を。

愛するからこそ、束縛ではなく自由であって欲しいという想い。それに応えるように力強く飛び立つ姿を吹奏楽の旋律が悲しげに、でも強い意志を持って奏でる。

「愛ゆえの決断」と名付けられたその曲の真実に、物語の主人公であるみぞれと希美は気づいてしまう。仲の良いはずの2人、でもその間にある絶対に埋まることのない深い溝。音を重ねれば重ねるほどに遠くなる。

実写では実現できないのでは?と思えるほど極限までノイズを削り落とした映像は、そのすべてがメッセージになる。音楽すらも形になって、まるで拡張現実のようにその世界を広げていく。些細な心の揺らぎで音色さえ変わってしまう繊細さが、視覚からも伝わってくる。演奏家である2人の、最高純度に仕上げられた心の声を、全身で受け止める。

「ハッピーエンドがいいよね」

希美の言葉通りの結末になったのかは僕にはわからない。正直言うと演奏後の2人の会話からも、最後のやりとりからも、希望と不安どちらの未来も見えた。お互いがお互いを重ね合わせた「リズと青い鳥」の物語。第四楽章で鳥かごから飛び立っていった青い鳥の行方は、どこか淋しそうに笑っているように思えたけれど。

おわりに

スピンオフだから本編を知らないとわからないことや、わからない人も出てきますが、そこは「何かあったんだな」って察してあげれば特に深掘りしなくても全然問題ないです。むしろ終わった後に知りたくなる感じ?

鑑賞後も音楽が頭の中で鳴り止まなくてサントラも借りてきちゃいました(買わないのかよ)。映画を観た後だと第一楽章~第四楽章の流れがまるで二人のエピソードのように聴こえてきます。DVD/ブルーレイも12月5日(水)に発売されるので、同日時にリリースされる『カメラを止めるな!』と一緒に買ってあげましょうね。

実はTVアニメ版『響け!ユーフォニアム』の方はちょっとついて行けなくて第1期しか見てませんでしたが、こっちも今すっごい見たいです。劇場版新作が来春公開される予定なのでそれまでに予習しておかないと。

(C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

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