【WRC2018】世界ラリー選手権 第11戦ラリー・GB(グレート・ブリテン)/タイトル争い大混乱

2018年10月16日

ラリーGB

トヨタが3連勝と波に乗り、迎えた伝統のラリー・GB。いつだって悪天候、ぬかるむ路面に足をとられ観客にも大変なラリー。なのに多くの人達が毎年詰めかけて「こうじゃなければラリー・GBじゃない」という長年愛されている場所。

しかし、走る方には全然甘くない地獄みたいなレースでした。

速くなさそうに見えるマシンが一番速い

ステージ20。最終ステージではなく、珍しく午前中に設けられたパワーステージ。これが当たり前だと言わんばかりに濡れた路面は時折見せる朝日を眩しく反射します。とはいえそれほど重くもないグラベルにマシンはスムーズなスライドを見せ、決して気をつけて走れば良いだけでなくプッシュする勇気も必要なことを物語っています。モンテカルロ、ツール・ド・コルスなどと並びユニークなイベントの1つ、ラリーGB。過酷なコンディションにドライバーたちは恐れをなすどころか闘争本能をむき出しにし、ギャラリーたちは歩きづらく泥まみれになるとわかっているのに毎年のように足を運びます。なぜそこまで人を聞きつけるのか、きっと行った人にしかわからないのでしょうね。

 

選手権リーダーであり続けながらスウェーデン以降苦しい戦いが続くヌービルは、今回もリズムを掴めずトヨタの走りについていけません。インタビューではグリップ不足を漏らしていたので走りをよく見てみると、車高が高いのかフワフワした感じでロールも大きく彼らしい走りには見えませんでした。好調だったシーズン前半はもっとカッチリとした足回りだったのに、まるで別人のようです。ミケルセン、パッドンの動きも似たような感じだったのでチームとして何らかの対応が入っているみたい。昨年は強い衝撃でサスペンションを破損するシーンが多かったヒュンダイですが、もしかすると今も同じ問題を抱えているのかも?それでも暫定トップタイムでボーナスポイントを狙いに来ました。

逆に固めの足回りに見えたのはシトロエン。好位置4番手につけたブリーンは地面の上を滑るように駆けていきます。前戦で全焼したので新車だと思うけど相性も良さそうで安心しました。と思ってたら滑ってスピン。でも順位には影響なし。トヨタ加入なんて噂もあって気になる存在になってきました。

Mスポーツはどちらかといえばヒュンダイのセッティングに近い方向性。フォルクスワーゲン時代のオジエは全然遊びのないドライビングスタイルでしたが、Mスポーツに移籍後はちょっと緩めているので最後まで完全にはマシンを信じきれなかったのかもしれません。今回のシトロエンC3にオジエが乗っていたらと思うと恐ろしい。

トヨタはシトロエンよりの固めな感じで、ブレーキングでフロントがさらに沈み込む、かなり攻めたセッティング。コーナリングの動きも良いしマシンも安定していますが、マシンの顎のあたりがかなりギリギリまで落ちているのでタナクはこれが原因で地面を抉ってしまったんじゃないかな。

 

そして上位陣の走行が始まり、まずはラトバラ。そんなに速い感じはないけど、マシンコントロールがしやすそうでカウンターの当て方も丁寧。フィニッシュに近いスプリット3ではヌービルが出したそれまでのタイムを5.4秒縮めてきて実況の人もビックリ!みんなに愛されるラトバラさん、苦しいシーズンが続いているけど、こんなエキサイティングな瞬間を待っていた!最後は2番手ヌービルに5.7秒の差をつけてフィニッシュ。本人は路面は滑りやすいしジャンプの後して着地のときはヤベーよヤベーよ!って気持ちだしメチャメチャ大変だったよ!頑張ってプッシュしたよ!とやりきった表情をしていました。

次に続いたのは彼と優勝争いを演じているオジエ。なぜかラトバラより速く見えるのにタイムにはつながっていません。コーナリング時にハンドルが激しく動き、マシンが安定していてません。それでもヌービルの前に出てパワーステージポイント獲得の権利を得ました。フィーリングがイマイチでプッシュできなかったと本人は言ってますが、ここが最終ステージではないのでまだ余裕がある様子。

お次はタナク。やっぱり速い。でもアンダーステアが出たりコーナーでのスライドが多く、小さなタイムロスが多いようです。オンボード映像ではずっと横向いて走っているみたいで、映るのはコースじゃなくて草ばかり。なんでこれで速いんだ?と思うんだけど外側から見るとちゃんと走って見える。不思議。やっぱり細かなタイムロスがあったようで、オジエの前には出ましたがラトバラには及びませんでした。

 

残りわずか3ステージ、この時点でラトバラが首位に立ちます。ですがここから王者オジエの底力を見るになるとは。さすがにWRC5連覇中のオジエさま、簡単に勝てる相手じゃないのです。

 

Mスポーツ・フォードWRT(M-SPORT FORD World Rally Team)

マシン:フォード フィエスタ WRC(FORD FIESTA WRC)

セバスチャン・オジエ選手/ジュリアン・イングラシア選手:優勝
エルフィン・エバンス選手/フィル・ミルズ選手:20位
テーム・スニネン選手/ミッコ・マルックラ選手:リタイア

シトロエンに移籍が決まっても、今季のタイトルは諦めていません。選手権3位に後退してしまい、そろそろ大量ポイントが必要だったオジエ。ここでは堅実に表彰台を狙ってくるかなと予想していたのですが見事優勝!タナク選手に速さでは敵いませんでしたが、ラリーは走りきった人しか勝てないのです。自分自身の力で傾いた流れを引き戻してくるとは、さっすが王者の底力。

来季Mスポーツのエースになるには少し物足りないエバンスは、昨年初優勝した縁起の良い地元ラリーで良いところを見せてほしかったのですが好走もむなしくマシントラブルでリタイア。まぁアホみたいに圧勝でもしない限りオジエさまに順位を譲ることになってしまうんでしょうけど。ハマれば速いっていうポジションから早く脱却してほしい。スニネンはクラッシュしてダメージが大きく3日目以降はレース続行できませんでした。無念。彼は移籍の話全然聞きませんけど、来年も継続なのかな?

 

トヨタ・ガズー・レーシングWRT(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)

マシン:トヨタ ヤリスWRC

ヤリ‐マティ・ラトバラ選手/ミーカ・アンティラ選手:2位
エサペッカ・ラッピ選手/ヤンネ・フェルム 選手:3位
オット・タナク選手/マルティン・ヤルベオヤ選手:19位

このまま行けば4連勝!というところで悪夢のリタイアとなったタナク選手。直後にはあまりのショックでふて寝してました。フロントの沈み込みが結構あったので、こういう結果も速さと引き換えのリスクだったのかなと思います。

ラトバラさんは最終日首位に立ったものの、競り合いで本気を出したオジエに軍配が上がりました。以前なら無理して追いつこうとしてミスしてたと思うんですけど、堅実にチームのために走る姿もカッコいい。耐え抜いて勝てるときに勝てばいいんです。マシントラブルが続いたりしなければ、選手権争いもできたのになぁ。来季はチームからラトバラさんに恩返ししてあげましょうね。

移籍の噂が漂うラッピもしっかり表彰台で2 – 3フィニッシュ。オジエ帝国っていうのが心配だけど、いろんな経験をするのも大切かも。もしシトロエンに移籍しても、いつかまたトヨタに帰ってきてね。

 

シトロエン・トタル・アブダビWRT(CITROËN TOTAL ABU DHABI World Rally Team)

マシン:シトロエン C3 WRC(Citroën C3 WRC)

クレイグ・ブリーン選手/スコット・マーチン選手:4位
マッズ・オストベルグ選手/トシュテン・エリクセン選手:8位

ステージ1での10位スタートから好走を続けて堅実な走りでいつの間にか上位まで浮上していたブリーン選手は、やっぱりインタビューでも上機嫌。前戦でマシンが全焼したので新車だと思いますが調子良いみたいです。今年は2位表彰台もあったし、あと1回くらい表彰台上がれたら自身にもつながりそう。若手に厳しい時代を耐え抜いてほしいけど来季のオジエの動向が心配。

こちらも堅実なんだけどポイント圏内の下の方に落ち着いてしまいがちなオストベルグ選手は、流浪の時期を耐え生まれ変わったかと思ったらまたこの辺りに来ちゃいました。もうちょっと良い成績出さないとシトロエンもMスポーツもシートを用意してくれなくなっちゃうのでもう少し頑張って〜。

 

ヒュンダイ・シェル・モービスWRT(Hyundai Shell Mobis World Rally Team)

マシン:ヒュンダイ i20 クーペ WRC((HYUNDAI i20 COUPE WRC)

ティエリー・ヌービル選手/ニコラ・ジルソウル選手:5位
ヘイデン・パッドン選手/セブ・マーシャル選手:6位
アンドレアス・ミケルセン選手/アンダース・イェーガー選手:7位

5位から7位まで順位が並ぶとか仲良しかよ!シーズン前半の勢いが信じられないくらい戦闘力が落ちています。ライバルたちが強くなってるのもあるけどヒュンダイ自身の問題があるような。念願のタイトルもオジエやタナク、コンストラクターズもトヨタに抜かれて焦っているのかな?来季はミケルセンじゃなくパッドンがついにヒュンダイから離れる噂もあるし、終盤に向けてゴタゴタしそうです。

レース内容もなんだか地味でヌービルはもちろんミケルセンもこんなレベルではないはずなのになぁ。パッドンは出場機会が限られているのに出場するとしっかり走ってくれるので嬉しいですが、この人も表彰台くらいいける実力はあるのに。

 

おわりに

躍進のタナク、復活のオジエ、そろそろヌービルに気持ちよく勝ってもらいたい気持ちが強くなってきました。あと残り2戦、まだまだ栄冠の行方はわかりません!

第12戦ラリー・カタルーニャ(スペイン)は10月25日から開催です。お楽しみに!

 

【動画】ステージ1 – 6 ハイライト

 

【動画】ステージ7 – 9 ハイライト

 

【動画】ステージ10 – 14 ハイライト

 

【動画】ステージ15 – 18 ハイライト

 

【動画】ステージ14 – 17 ハイライト

 

【動画】ステージ19– 21 ハイライト

 

【動画】ステージ22– 23ハイライト

 

【動画】イベント・ハイライト

 

【動画】ベスト・オブ・アクション

画像の出典:TOYOTA GAZOO Racing