【読書感想】シリア 戦場からの声/同じ世界で起きていること

シリア戦場からの声

先日「シリーズ ‘シリアを知る’ : Getting to Know Syria」のセミナー第1回に足を運んで、以前購入した桜木武史さん著『シリア 戦場からの声』をもう一度読んでみたくなりました。

戦争とは何を生み出し何を壊すのか。目を背けずに、この世界で起こっている現実とダイレクトに向き合った1冊をご紹介します。

アラブの春

2010年から始まった「アラブの春」と呼ばれる大規模な反政府デモにより、チュニジア、エジプト、リビアなどが次々と政権が崩壊していきました。地中海の東、中東の国シリアもデモが起こり、ついに2011年3月にはアサド政権との反体制派の争いが始まりました。抗議運動が拡大し始めたのは日本で東日本大震災が怒った直後であり、当時に日本に正確な情報はあまり伝わって来ていませんでした。

それから1年後、シリアの革命は周辺国とは様相が違い収束するどころかはますます混迷を深めるばかり。そんな2012年から2015年にかけて桜木さんは5度シリアに訪れ、現地で起こっている事実を目の当たりにして来たのです。死者の数や難民となった人数などの数字ばかりを報道されるニュースとは異なる、そこで生きる人間が描かれています。

 

ジャーナリストとは何なのかを考える

桜木さんは通常のジャーナリストとは違い、テレビ局のようなメディアのために働いている方ではありません。フリーの戦場ジャーナリストとして自らの意思で紛争地域に足を運び、現地の人たちと共に生活し、戦いの中に身を投じてありのままの姿を目にしてきました。

僕にとってジャーナリストとは、事実を正しく判断するために対立するどちらの勢力とも少し距離を置き冷徹に問題点を見つめるようなイメージがあったのですが、桜木さんの場合は反体制側にガッツリと入り込み仲間になってます。自由を夢見て一緒に笑ったり、大切な仲間を失って共に泣いたり、報道の姿とは少し違うのかもしれませんが、そうやって過ごした時間を手記にまとめて本にしたことで彼らの生き様が歴史になって永遠に刻まれていく。

良いとか悪いとかではなくて、このようなスタイルだからこそ伝わってくるものがあるんです。確かに当時のシリア全体の動きや周辺国の情勢は見えにくくなってしまうかもしれませんが、その分銃弾が飛び交い爆撃に晒されている生の空気を感じることができました。むしろ、現実に起こっている戦争を知ろうとするなら、数字の羅列よりも正しく認識できるように思えます。

アサド政権側の人とも知り合いになり相手側の微妙な心情を知ることになる辺りも、現地の人間と寄り添う桜木さんならではのエピソードでした。

 

戦争反対だけでは止められない戦争

2018年8月、8年目を迎えたシリアの騒乱はまだ終わっていません。アサド政権絶対優位な状態になり、反対派への一方的な攻撃が続いています。この混乱は戦争を始めたい人たちが起こしたのでしょうか?そうではありません。自由を求めた声から生まれた悲劇なのです。

戦争とは何なのか。なぜ始まるのか。どうしたら止められるのか。

そんな風に考えながら読んでいると、戦争反対を叫べば解決するような簡単なことではないのだと気づきました。

 

おわりに

今年も73年目の終戦記念日が近づいてきました。当時のことを知る人も少なくなり戦争が忘れられていくことを心配する声も聞こえますが、海を超えた向こうにはいつ終わるのかもわからない戦争があるということも知ってもらえたらなと思います。