【映画感想】スティルライフオブメモリーズ/女性は宇宙の入り口だ

スティルライフオブメモリーズ

静止しているかのような映像に水の音やシャッターの音が生々しく響いて、ようやく時間の流れを思い出す。

ただ2人だけが静かに、でも獣のように絡み合う。指先すら触れ合うことなく。

正直言うと最初は苦手なタイプの作品だなって思った。なんとなく言わされてる感じに聞こえてしまう台詞。カメラがそこにある前提の動作。そして、うまく感情移入できない登場人物たち。

僕は2人の行為をじっと見ているしかなくて、ありゃ~これは失敗だったかな?そう思っていたのだけれど。

そうじゃなかった。

 

女性器を取ることに取り憑かれてしまったカメラマンの春馬と、理由も説明せず女性器を撮ってほしいと頼む女性、怜。

回を重ねるごとに、2人の表情が変わっていくのがわかる。奥へ、もっと奥へとレンズ越しに入っていく春馬の視線。初めは緊張して硬い表情なのに、次第に恍惚の表情を浮かべる怜。普段の清楚な佇まいとのギャップもあって余計に美しく見え、女性になってこんな風に感じてみたいと嫉妬してしまうほど。ギリギリの境界線を絶対に超えない2人の関係は、究極にプラトニックな性行為。何一つ言葉のない時間が、より多く心に語りかけてくる。

目を逸らせず時間が経つのを忘れて食い入るように画面を見つめていると、ふと序盤みたいな映画っぽさの残る場面に戻って安堵する。でもその繰り返しが余計に高揚感を煽る。

 

もう1人の女性、カメラマンと同棲している夏生はどちらかと言えば幼い感じで自由奔放な性格だけど、しなやかな強さが持った人。なぜ聖母マリアを思い浮かべたのか、その理由は終盤になると答えが現れる。三角関係かと思っていたらちょっと違った。あえて三角を描くなら彼女が頂点にいて春馬と怜を見つめている。

 

他では見たことのない3人の不思議な男女関係が命へと繋がっていく。生と性って結局は同義なんだって知った。

静かに、淡々と、シャッター音だけが時を刻むような静かな作品でした。女性のもの凄い裸体も拝めるんですが(かなり長時間にわたって)エロいんだけどそんなこと考えるとバチが当たりそうな神々しさ。こんな方たちがゲストトークなどで目の前に登場したら鼻血出してしまいそうですが。

そして、この日一番驚いたのは劇場を出てからでした。階段、柱、お店の入り口。全てが艶めかしく見えて。しじみ汁って言葉にゾクゾクしたり。感覚がおかしくなったのはきっと暑さのせいだけじゃない。

 

観る人は女性が多いのかなと思っていたら、おじいちゃん率が高かったです。上映前は裸が見たいならストリップ劇場にでも行けばいいのになんて穿った見方をしていたのだけれど、今ならなんだかわかる気がする。この映画には長く生きてきた人だからこそ見える生(せい)の力があって、それと同時に還るべき場所が描かれているから。

 

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