【WRC2018】世界ラリー選手権 第8戦ラリー・フィンランド/4人乗っても大丈夫!

2018年7月31日

世界ラリー選手権第8戦ラリー・フィンランド

7月29日からWRC(世界ラリー選手権)の2018年シーズン第8戦ラリー・フィンランドが開催されました。今回も最終ステージまで表彰台争いが続くデッドヒートとなりました。

印象に残った最終戦の模様と、感想を書いていきます。

順位ではない、意地と意地とのぶつかり合い

最終ステージ、勝負の行方はほぼ決まっていました。タナクは余裕の首位独走。フルアタックが必要なのはわずか2.5秒差の接近戦で2位と3位を争うオストベルグとラトバラ、選手権を争うために1ポイントでもパワーステージのボーナスポイントが欲しいオジエ、ヌービルあたり。エバンス、スニネンはうっかり良いタイムを出すとオジエを抜いてしまうかもしれないから絶対やらない。他は多分ついていけない。そんな感じ。それほど盛り上がる予感はありませんでした。

ヌービルが渾身のアタックで暫定トップに立つと、チームの勝利目前で浮かれ気分のマキネンさんとゴール地点で一緒にお喋り。去年だったら不甲斐ない成績に渋い顔をしてたでしょうが、今年は余裕のある爽やかな笑顔。メカニックたちの努力にも言及したり、受け答えにも貫禄がついてきました。

その頃スタート地点でオジエがタイムアタックを開始します。イン側の轍にノーズを突っ込むようにギリギリを攻めるオジエ。ファーストスプリットで0.5秒上回り、セカンドスプリットでは少し落としてヌービルと同タイム。残るは数コーナーだけ。フィニッシュへと続くストレート手前の左に大きく周り込むコーナーでアウト側の深くえぐられた轍に右のリアタイヤが大きく沈み込むと、リアバンパーが地面に触れて吹き飛びます。

フィエスタのお尻の部分をヒラヒラさせながら、少し膨らみすぎたコーナーをクリアして加速。待ち受けるフィニッシュラインはジャンプ台。ドーンッ!と勢いよく飛んだマシンからはリアにぶら下がっていたパーツが花火のように飛び散り、着地点はなんと60m級の大ジャンプ!しかし最後のミスが影響したのか、タイムはヌービルにも先にフィニッシュしていたブリーンにも及ばず暫定3位。昨年まではパワーステージにめっぽう強かった王者ですが「これ以上できることはないよ」と応えて去っていきました。

パッドンが無理せず総合4位を確定すると、いよいよラトバラの出番。スタート前から頭の中でシミュレーションを開始しコースをなぞる手が右へ左へと泳ぎます。落ち着いた出だしから、コーナーを最小の半径を描いてクリアしていく綺麗な走り。セカンドスプリットで0.2秒のビハインドで迎えた最終セクション、母国ファンの歓声に後押しされるように加速して0.4秒差でトップに立ちます。

「最後の着地は最悪だったけど、大きなジャンプだったね」と答えたラトバラ。フィンランドも今年は日本と同じように暑く、タイヤも熱でヘタって乗りにくかったようです。

本人たちもマキネンさんも納得の走り。豊田章男社長が握手に現れるとマシンを降りて興奮気味にインタビューに答えます。このタイムなら2位表彰台とパワーステージ制覇も現実味を帯びてきた、誰もがそう思っていたでしょう。

しかしオストベルグがそんな甘い幻想を打ち消します。セカンドスプリットで0.3秒速いペースで攻める圧巻の走り。普段は愛嬌ある笑顔の彼が闘志を燃やしてフィンランドの地を駆け抜けます。決して攻めすぎてるようには見えず、ジャンプも着地がリアヘビーでバランスも良くはなさそう。なのに大きく膨らむこともマシンが暴れることもなく流れるように前へ前へと進みます。ミスター・ビッグジャンプが抑え気味のフィニッシュを決めると、タイム差はわずか0.3秒差でオスとベルグがラトバラを上回ります。

最後は勝者が堂々とウィニングラン、そう思っていたら思ったら最終走者タナクが猛アタック!限界点だと思っていたオスとベルグ、ラトバラのタイムもを上回るスプリットタイムで圧倒すると、それまでのトップタイムをさらに0.5秒縮めステージ最速タイム。一旦ロケットエンジンに点火したら誰も止められませんでした。

 

トヨタ・ガズー・レーシングWRT(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)

マシン:トヨタ ヤリスWRC

オット・タナク選手/マルティン・ヤルベオヤ選手:優勝
ヤリ‐マティ・ラトバラ選手/ミーカ・アンティラ選手:3位

エサペッカ・ラッピ選手/ヤンネ・フェルム 選手:リタイア

無事最終ステージを完走すると、よっぽど嬉しかったのか大興奮でインタビューに答えるラトバラさん。普段はシートに座ったままですが、クルマを降りて立ち話を始めてしまうほど。以前のような危なっかしさが消えたと思ったら今度はマシントラブルが増え、今季はここまで悔しい成績が続いていました。初戦モンテカルロ以来の表彰台で、ようやく苦しいトンネルを抜け出せたでしょうか?

最終走者のタナクはすでに優勝をほぼ確定していたので無理はしないのかと思ったら、まさかの全開アタック!限界を攻めていたラトバラ、オストベルグの2人をも上回る強烈なタイムで優勝の25ポイント+パワーステージのボーナス5ポイントの完全優勝でした。

走行前からソワソワしていたマキネンさんはフィニッシュ後に駆けつけて優勝ドライバーを2人をマシンのルーフ上に上がれと急かしますが、どう見ても本人の方が乗りたがってる様子。3人でポーズを決めると現地に足を運んでいたモリゾウさんまで呼んで1台の天井に大人が4人も乗っちゃいました。こんな光景、いつか日本で見てみたい。

絶好調のトヨタ勢でしたが、これで最終日にラッピのリタイアがなければ最高でした。去年といい今年といい全てを手に入れるのがどれだけ大変なことかよくわかります。

諦めたと宣言していたチャンピオンシップの方も、上位2人が今回みたいに苦しんでいるようならタナクにもまだまだチャンスがありそうです!

 

シトロエン・トタル・アブダビWRT(CITROËN TOTAL ABU DHABI World Rally Team)

マシン:シトロエン C3 WRC(Citroën C3 WRC)

オストベルグ選手/トシュテン・エリクセン選手:2位
ブリーン選手/スコット・マーチン選手:8位

ミークさんの場合はあまりにも予想外のところから優勝してしまうせいか感動よりも「おいおい何やってんだよ!」っていう驚きの方が強いんですが、攻めに攻めたオストベルグ会心の2位表彰台は感動のフィニッシュとなりました。

乗りこなせば速い(らしい)けど、なかなか簡単にはいかないジャジャ馬C3 WRCですが、今回はうまくハマってくれました。シトロエンのドライバーはどっちも多少の違和感くらいならカバーできてしまう才能があるので、アップデートの効果なのか単にドライバーの力量だったのかは次回以降で見えてくるでしょう。

優勝経験者ではあるけれど、1位失格(ミッコ・ヒルボネンの車両規定違反)による繰り上がり優勝だったから、実質これが自己ベストタイ。ようやく自力での優勝が狙える場所に帰ってきました。一時はレギュラーシートを失いどうなることかと思いましたが、ようやく陽の目が当たるときがやってきたのかもしれません。

ブリーン選手はステージ2でいきなり右リアタイヤをパンクさせ最悪の出だしとなりましたが、なんとか完走。今年は昨年のようにコンスタントな結果が出せてないですね。最高順位でもオスとベルグに並ばれて、チーム内での競争も大変そうです。

 

ヒュンダイ・シェル・モービスWRT(Hyundai Shell Mobis World Rally Team)

マシン:ヒュンダイ i20 クーペ WRC((HYUNDAI i20 COUPE WRC)

ヘイデン・パッドン選手/セブ・マーシャル選手:4位
ティエリー・ヌービル選手/ニコラ・ジルソウル選手:9位
アンドレアス・ミケルセン選手/アンダース・イェーガー選手:10位

前半は路面のコンディションに苦しみ、スピンでタイムを大きく失ったりと散々な目にあったヌービルですが、目標を優勝からオジエにに切り替えていたようで思っていたより冷静。余裕のあるところを見せたりとまだまだ大きなプレッシャーは感じていない様子。

Mスポーツが露骨なチームオーダーでオジエのチャンピオン連覇を全力で後押ししていますが、ヌービルはできるだけフェアな戦いで選手権を戦ってもらいたいけど、ヒュンダイも結構強引なことするのでどうなるのでしょうかね?

ヌービル、ミケルセンの2人が冴えない結果だった分、代わりに健闘したのがパッドンでした。4人もドライバーを抱えるヒュンダイではなかなか走る機会を得るのも難しいのですが、少ないチャンスでしっかりとした結果を出しています。2戦連続4位と表彰台までもう少し。トルコ、ラリーGB、オーストラリアとあと3戦出場予定なので、なんとか今シーズンに1回くらい届いて欲しいです。っていうかチーム3台体制の変則ルールを早く終わらせて欲しい。

 

Mスポーツ・フォードWRT(M-SPORT FORD World Rally Team)

マシン:フォード フィエスタ WRC(FORD FIESTA WRC)

セバスチャン・オジエ選手/ジュリアン・イングラシア選手:5位
エルフィン・エバンス選手/フィル・ミルズ選手:6位
テーム・スニネン
選手/ミッコ・マルックラ選手:7位

苦しいレースをなんとか5位にまとめたように見える王者オジエですが実はMスポーツのチームオーダーによるもので、エバンス、スニネンを後ろに下げて無理やり上げた順位であって実質7番手の成績でした。

今季3勝を挙げていて、去年まではパワーステージでも強かったオジエ。チームもフォードが正式に名を連ね資金面でも強化されたはずなのですが、総合力でも一発の速さでも予想以上の苦戦っぷりです。次戦ドイツではターマックに舞台を移し、良い結果が得られると良いのですが。

Mスポーツとのつながりが深いエバンスはともかく、スニネンはこのまま残り続けてもチームオーダーで順を下げられたりしてしまうなら早めにチーム移籍を考えたほうがいいのかも?

 

おわりに

最終ステージで勝敗が決まる展開って熱くなりますね。今回は2位争いでしたが300km以上走ってきてたったの2.8秒差とか本当に凄い。ドライバーたちの実力も近づいているようでシーズン後半も楽しめそうです。

第9戦ラリー・ドイチェランドは8月16日開催です。お楽しみに!

 

【動画】ステージ1 – 5 ハイライト

 

【動画】ステージ6 – 11 ハイライト

 

【動画】ステージ12 – 15 ハイライト

 

【動画】ステージ16 – 19 ハイライト

 

【動画】ステージ20 – 22 ハイライト

 

【動画】パワーステージ ハイライト

画像の出典:TOYOTA GAZOO Racing