【WRC2018】世界ラリー選手権 第7戦ラリー・イタリア・サルディニアの感想です

世界ラリー選手権第7戦

6月7日からWRC(世界ラリー選手権)の2018年シーズン第7戦ラリー・イタリア・サルディニアが開催されました。まさかこんなに熱い展開を今年見られるとは!っていうくらいのサプライズ!

ちょっと時間が経ってしまいましたが感想を書いていきます。

ラストワルツ

青い海、広がる空。穏やかな風がゆっくりと前走の土煙を溶かしていく。

SS20パワーステージ、最後のアタック。見えないパートナーと踊るラストダンス。ヌービル+0.8。約300km走破の末に追いつき掴み取った勝利のチャンス。

スタートの瞬間エンジンが吠える。獲物を狙う獣のようにゴールに向かって駆け出す。右、左、右。見えないコーナーの先にノーズを突っ込み、エイペックスから次のエイペックスへと飛び移る。瞬間、足を取られて左側面が中に浮く。前だけを見て踏み込む。マシンが応える。まだ終わるわけにはいかないと。

コーナーでスピードを落とせば路面の砂がタイヤを飲み込む。強引なトラクションで引っこ抜く。急斜面を下ればあと残り僅か。更に加速する。迷いなど微塵もない、ペースノートを読み上げる声。可能な限りの最短距離を脳裏に描いてなぞる。限界のルート。左のミラーが弾け飛ぶ。かまうもんか。

難所のヘアピンを迎える。浅過ぎず、深過ぎず、完璧なアングルで入り口へと吸い込まれていく。深い砂地の上をスライドする。出口。マシンの正面から真っ直ぐ伸びる最高のラインが見える。ここだ。迷わずペダルを奥まで踏み込む。コーナーの引力から解き放たれる。獲物までもう少し。高速コーナーでマシンがブレる。引く気などない。気迫が前へと導く。フィニッシュ地点まで駆け抜ける。

ヌービル4:52.9。誰よりも高い目線で、あとは踊る相手と目を合わせるだけだ。

 

静かな炎はいとも容易く、相手のペースに足並みを揃える。全コーナーのエイペックスを優しく撫でながら小気味良いリズムで駆け抜ける。スプリット1でのタイム差-0.4。ヌービル渾身の走りさえ上回るハイペース。クラシックさえ聴こえてきそうな軽やかな身のこなし。

だが鳴り響く旋律は細くて脆い。アウトのブッシュにリアが触れる。走行ラインが僅かに乱れ、タイヤが深い砂に取られる。一瞬で先程までの余裕が消えていく。またリアがブレる。ボディサイドがバンクを叩き土煙が青い空に舞う。

耐え続けたプレッシャーの重みが徐々に効いてくる。スプリット2で互角、スプリット3でも互角。しかしスプリット4で+0.3と離される。決して手は抜いていないのに、強く燃えていた炎が小さくなっていく。ほぼイコールコンディションなのに砂の路面が重く感じる。いつの間にかヌービルの背中を追いかけている。まだなのか。相手の姿が遠ざかる。フィニッシュラインが遠い。

オジエ4:54.4。僅か0.8秒のリードは0.7秒のビハインドへと変わっていた。あと1ステージあれば追いつけただろうか。誰にもわからない。僅か1秒に満たないギャップは、もう永遠に埋まらないのだから。

 

ヒュンダイ・シェル・モービスWRT(Hyundai Shell Mobis World Rally Team)

マシン:ヒュンダイ i20 クーペ WRC((HYUNDAI i20 COUPE WRC)

ティエリー・ヌービル選手/ニコラ・ジルソウル選手:優勝
ヘイデン・パッドン選手/セブ・マーシャル選手:4位
アンドレアス・ミケルセン選手/アンダース・イェーガー選手:19位

走り終えた後のひと言が堂々としていて、まずはチームへの感謝から入るところからも選手権リーダーとしての風格が見えてきたヌービル選手。途中ミスがありましたがずっとプッシュし続けて最後の最後に大逆転と、最高にカッコいいエンディングになりました。これで更にファンも増えちゃいそうですね。

これからは追われる立場で、オジエ選手からのプレッシャーを振り払うことができるんでしょうか。WRCの未来はヌービル選手にかかっています!

先頭にいたはずなのにいつの間にかいなくなっている感が強いミケルセン選手はギアボックストラブルでリタイア。フォルクスワーゲン時代も首位に立つとドライビングが大雑把になるとこあったから、前半は抑えめにして後半追い上げる方が良いのかも?

今季の出走回数が少ないパッドン選手は前戦ポルトガルで嬉しい復帰を迎えましたが、まさかの病院行き。今回は4位でしたが成績よりも大人しめな感じで、身体がまだ万全じゃないのかな?

どのマシンもスピードがあって足回りもフワフワした感じもなく、このマシンは速い!って見ててもわかるくらい仕上がってきました。でもなんだろ、コーナーで飛び出しちゃうシーンが何度かあって、サスペンションが良くなったら今度はブレーキが弱点?

 

Mスポーツ・フォードWRT(M-SPORT FORD World Rally Team)

マシン:フォード フィエスタ WRC(FORD FIESTA WRC)

セバスチャン・オジエ選手/ジュリアン・イングラシア選手:2位
テーム・スニネン選手/ミッコ・マルックラ選手:10位
エルフィン・エバンス選手/フィル・ミルズ選手:14位

ラリーで先頭走者が不利になるのは基本的にドライコンディションのときで、雨になると時間の経過と共に路面がドロドロになっていくので逆に有利になる場合もあります。

雨になったら一番有利なのはヌービル選手ですが、一番雨を待っていたのはオジエ選手だったのかもしれません。悪天候の2日目では5位から一気に首位に立ち、2位のヌービル選手に20秒近い差をつけて1日を終了。もしも天候が回復しなかったら彼の独走は止められなかったでしょう。ヌービル選手も速いけど、やっぱりオジエ選手が最強なのは変わりないのかも。

イングラシア選手の方はちょっと心配ですね。ほぼミスのない彼にミスが続いているなんて。ラリーでは各マシンがタイムカードを持って、スタートからフィニッシュまでの間にあるタイム
コントロールと呼ばれるポイントでチェックしてもらうというルールがあります。

会社員に例えると毎日勤務表書いてね!みたいな大事な決まりなので失くしたりすると大変です。そんな大切なタイムカードを忘れてきちゃうなんてイングラシア選手のラリー人生に置いても初めてのことだったとか。

 

スニネン選手、エバンス選手は共にミスが原因で優勝争いから脱落。フィエスタがどんどんオジエ選手に特化されてるのかもしれません。そうすると他のドライバーが乗りにくくなってしまったりするんですよね。

 

トヨタ・ガズー・レーシングWRT(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)

マシン:トヨタ ヤリスWRC

エサペッカ・ラッピ選手/ヤンネ・フェルム 選手:3位
ヤリ‐マティ・ラトバラ選手/ミーカ・アンティラ選手:7位
オット・タナク選手/マルティン・ヤルベオヤ選手:8位

タナク選手がジャンプして着地シーンを見ると、ボンネットの上まで衝撃が来ていて明らかに深刻なダメージを負ったのが伝わってきます。タナク選手本人は普段通りに行ったと答えていて、早く原因をはっきりさせてほしいですね。ヒュンダイのマシンも(誰か忘れたけど)同じような角度で着地してたのでマシンのせいではないと思うんですけど。

そしてラトバラさん……。今回はマシントラブルですか。なんとか完走して4戦連続ノーポイントは免れましたが、そろそろちゃんと走らせてあげて欲しい。毎年シーズン後半は心が痛いなぁ。

並の新人なら9位くらいでフィニッシュしてチームメイトたちの悲劇を少しばかり和らげるみたいなことをするんでしょうが、そこは並じゃないラッピ選手。上位2人は及びませんが3位フィニッシュで表彰台です!もうすぐやってくるフィンランド戦に向けていい結果が出せました。

結果には結びつきませんでしたが3台とも走りやすそうで、特にコーナリングがスムーズで気持ち良く走ってる感じが映像からも見て取れました。

 

シトロエン・トタル・アブダビWRT(CITROËN TOTAL ABU DHABI World Rally Team)

マシン:シトロエン C3 WRC(Citroën C3 WRC)

オストベルグ選手/トシュテン・エリクセン選手:5位
ブリーン選手/スコット・マーチン選手:6位

優勝かリタイアか、ミーク選手の今季出走がなくなってしまい一時的だとは思いますが2台体制となったシトロエンチーム。まぁこの前のクラッシュ映像見るとケガどころか死亡事故でもおかしくない壊れ方してましたし安全面を考えると仕方がないのかも。

結果は2台とも前戦より1つ順位を上げてまずまずの成績。オストベルグ選手はまだマシンにフィットしてないみたいですがよく粘ります。

2人とも堅実に走れて混戦になってくると上位に顔をだすタイプなのでチーム編成次第ではどちらか外されてしまいそうな予感がありますが、完走してデータをしっかり取って強くなっていくって王道を歩むには必要な存在。このまま安定した成績を残して、来季はどっちかが1段上にいければ戦えると思うんですけどね。

 

おわりに

WRCは前半の戦いを終え、しばしの休戦。休暇明けはいきなり超高速ラウンドが待ち構えています。昨年に続いてホームコースのトヨタ大勝利となるでしょうか?

第8戦ラリー・フィンラントは7月26日開催です。お楽しみに!

 

ハイライト動画集

【動画】ステージ1 – 5 ハイライト

【動画】ステージ6 – 9 ハイライト

【動画】ステージ10 – 12 ハイライト

【動画】ステージ13 – 16 ハイライト

【動画】ステージ17 – 18 ハイライト

【動画】ベスト・オブ・アクション

画像の出典:TOYOTA GAZOO Racing