世界ラリー選手権 最終戦(第13戦)ラリー・オーストラリアが11月16日(木)より開催されました。
今年一年の締めくくりは、選手たちそれぞれの個性を象徴するかのような結果になりました。忙しかったり体調を崩したりで遅くなってしまいましたが、各チームごと、そして全体の感想を書いていきます。
ヒュンダイ・モータースポーツ(HYUNDAI MOTORSPORT)
マシン:ヒュンダイ i20 クーペ WRC((HYUNDAI i20 COUPE WRC)
ティエリー・ヌービル選手/ニコラ・ジルソウル選手:優勝
ヘイデン・パッドン選手/セブ・マーシャル選手:3位
アンドレアス・ミケルセン選手/アンダース・イェーガー選手:13位
グラベルコース(未舗装路)では先に走るマシンが路面の掃除をしてくれるので走行順位が後ろの方が有利。レース初日はチャンピオンシップポイント順のスタートになるため、今季フル参戦できなかったミケルセン選手にとっては大きなアドバンテージになりました。
彼が実力を出し切れば、トップ快走も納得。しかし調子に乗ってくるとドライブが大雑把になることがあるんですよね・・・。今回もそのせいなのか、2日目になってコーナーで左側面をヒット、前後輪共にパンクさせて首位から急転直下のリタイアとなってしまいました。
代わりにトップに立ったのはチームメイトのヌービル選手。こちらはチャンピオン争いが落ち着き、憑き物が落ちたかのような清々しい走り。マシンに問題が起こっていたようですが、ラトバラ選手に追い上げられても慌てることなく最後まで余裕を見せての完勝。この精神状態が保てれば来季は栄冠も夢ではありません。
今季不調が続いたパッドン選手も最後まで走りぬき、見事最終戦で表彰台に上がりました。インタビューで今年の成績を10点満点で採点すると?という問いかけに「マイナス10点かな?」なんて答えていましたが、これで来季復調のきっかけになってくれればと思います。
Mスポーツ・ワールドラリーチーム(M-SPORT WORLD RALLY TEAM)
マシン:フォード フィエスタ WRC(FORD FIESTA WRC)
オット・タナク選手/マルティン・ヤルベオヤ選手:2位
セバスチャン・オジエ選手/ジュリアン・イングラシア選手:4位
エルフィン・エバンス選手/ダニエル・バリット選手:5位
総合優勝こそオジエ選手に譲ったものの、後半は彼を凌ぐ強さを見せるタナク選手がMスポーツでの最後のレースで見事2位に。今季は本当に素晴らしい結果を出してくれました。チーム代表マルコム・ウィルソンさんが一生懸命育て、2017年モデルのフォード フィエスタ WRCの開発にも関わった彼がトヨタに移籍してしまうのは、トヨタファンとしてもちょっと罪悪感を感じます。
オジエ選手は調子がイマイチだったようで、スピンしたりパーツが飛んで行ってしまったり普段はあまりない映像が見られました。来季の去就で回りが騒ぐので集中できなかったのかも。イベントが終わるまでは噂を広めたりするのはやめましょうね。
そして今季初優勝を達成したエバンス選手は5位入賞で好調をキープ。上位5台がヒュンダイとMスポーツで独占されるという、チームの勢いがそのまま現れた結果になりました。
トヨタ・ガズー・レーシング WRC(TOYOTA GAZOO Racing WRC)
マシン:トヨタ ヤリスWRC
エサペッカ・ラッピ選手/ヤンネ・フェルム 選手:6位
ヤリ‐マティ・ラトバラ選手/ミーカ・アンティラ選手:リタイア
ミケルセン選手がリタイアの後、ヌービル選手と共に優勝争いに躍り出たラトバラ選手。調子は悪くなさそうでしたが、前を行くヌービル選手をなかなか捉えることができませんでした。
最終ステージ前のインタビューで「新品のソフトタイヤ4本で攻めるよ」なんて話していて、最後まで全力で攻める意気込みには感心したのですが・・・。
最終ステージの全長はわずか6.44km、ヌービル選手との差は14.7秒と逆転は難しいとわかっていはいても最後の1メートルまで攻め続けるのがラトバラさん。まぁ、結果は残念なことになってしまいましたが、ファンはそんな彼だからこそ応援し続けるのです。
ラッピ選手には苦しいラリーになったようですが堅実に走って終わってみれば6位入賞。初日にマシントラブルがありましたが見事にリカバーしてました。来年の活躍が本当に楽しみです。
シトロエン・トタル・アブダビ・ワールドラリーチーム(CITROËN TOTAL ABU DHABI WRT)
マシン:シトロエン C3 WRC(Citroën C3 WRC)
クリス・ミーク選手/ポール・ネイグル選手:7位
クレイグ・ブリーン選手/スコット・マーチン選手:リタイア
ステファン・ルフェーブル選手/ギャビン・モロー選手:リタイア
今季の不調をそのまま結果に表したみたいなシトロエンチームの惨状。初日はヌービル選手と互角の勝負だったはずなのに2日目には消えてしまったミーク選手。ブリーン選手は最終日を前に4位、ルフェーブル選手も7位と好位置につけていたはずなのにパワーステージのライブ中継の時にはいなくなっていました。
シーズン2勝できるポテンシャルを秘めており、ブリーン選手のようにそれなりに安定した成績も出せるはずのシトロエンC3 WRC。きっとメカニックたちも何が悪いのかわからず悩んでいるのではないでしょうか。しかも才能あるドライバー、ミケルセン選手を手放してヒュンダイに奪われてしまう始末。再起のために唯一残された方法はオジエ選手獲得だけしか選択肢がないのかもしれませんねぇ。
全体を通しての感想
ミケルセン選手が初日から飛び出しましたが、その時点で強そうなオーラを漂わせていたのがヌービル選手。もしもミケルセン選手がリタイアを喫していなくても、最終日までには追いついていたのでは?
ヌービル選手は今シーズン初戦から立て続けに2戦リタイアして歯車が狂ってしまいましたが、そこからさらに一段レベルが上がったような気がします。ラリーGBでのキレのある速さと、ここ最終戦のオジエ選手以上に王者の風格ある強さが来季も維持できれば、来年は彼がチャンピオンになれるはず。ただ、ヒュンダイは必ず誰か1人は調子悪いので他が犠牲になってしまうのですが。
オジエ選手にはゆっくりと将来のことを考えてもらうとして、もう1つ気になっていたのはDMACKチームの去就について。今季初優勝の勢いに乗り、来季はDMACK単独で1チーム作るのではと期待していたのですが、残念ながらトップカテゴリからの撤退が決定。
2017年はマニファクチャラーだけが新規定のマシンで登録できるというルールがあり(マッズ・オストベルグ選手ら数人がプライベートチームで参戦していますが実際はMスポーツの4番手ドライバー扱いで出走していました)来年は撤廃されると思うのですが、今の状態では登録チーム数が増えることもあまり期待できそうにないですね。
最後にトヨタについて。今季大活躍のタナク選手と、若手で成長著しいラッピ選手の間におそらく位置づけされるであろうラトバラ選手。今年はエースとしてチームを引っ張ってくれたのに、1年でナンバー2みたいになってしまうのはなんとも悲しい。あんまり序列はなさそうだし本人も気にしないとは思いますが、2018年って彼にとって総合優勝を果たせる最大のチャンスでもあると思っているので、もう1人エース級の人が飛び込んでくるとは予想外でした。総合優勝を争うライバルが身内になってしまったりして。
なんだか1年を通しての感想みたいになってしまいましたね。総括は改めて書いてみたいと思います。しばしお待ちを!
おわりに
今年くらい一戦ごとに熾烈な争いが起こったのは、WRCを追いかけるようになって初めてかもしれません。来年はマシンも熟成し、より高いレベルでの戦いが予想されます。
2018年シーズン初戦ラリー・モンテカルロ1月25日(木)開催です。また来年も一緒に応援しましょう!
【WRC2017】世界ラリー選手権の競技ルールについて簡単に説明します(その1)
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(画像の出典:TOYOTA GAZOO Racing)