【難民問題】シリアにもう一度平和は訪れるの?『After Spring』観賞後の感想を交えて

難民問題

2017年10月16日、IS(イスラム国)が首都と称していたラッカがついに陥落。これはISにとって大きな打撃になり、組織の崩壊も近いと言われています。

しかしシリアに再び平和が訪れるのは、まだまだ先なのです。シリアのドキュメンタリー映画を観た直後の出来事だったので、せめてこの快挙が彼らの希望となることを願っています。

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いつか戻れる日が来ると信じて

先日、第12回 国連UNHCR難民映画祭2017に足を運び『アフター・スプリング ~ザータリ難民キャンプの春~』という映画を観賞しました。シリアの南側に位置するヨルダン、そこに建設されたザータリ難民キャンプに住む人々の姿を映したドキュメンタリー映画です。

スクリーンに映し出されていたのは嘆きや悲しみではなく生きる人間の強さでした。キャンプの中では人があふれ、独自の経済が生まれ、まるで1つの国のようです。国のために人があるのではなく、人のために国があるのだと、彼らを見ているとそう感じました。

でも難民という状態が続く日常で、大事なものを失ってもいます。子供たちへの正しい教育、母国の文化、安らぎの場所。長いキャンプ暮らしの中で生まれ、未だに祖国を知らない子供たちもいます。これが「普通の生活」となってしまっているのです。

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)という難民に一番近い立場の視点から見る、あまり報道されない難民キャンプの姿。葛藤と戦いながらも献身的に難民を支える人々、そして現地の本当の声を聞くことができ、貴重な経験になりました。

下の記事にも、映画に映し出されていたような様子が載っています。

【動画】アフター・スプリング ~ザータリ難民キャンプの春~ トレイラー

 

アラブの春が終わる日

2010年頃からアラブ世界に吹き荒れた大規模な民主化デモ運動、通称「アラブの春」。その風に乗ってシリアでも大きな反政府デモが活発になりました。アサド政権の独裁体制に対して大きな抗議行動が起きた2011年3月15日、ついに軍は市民に銃口を向け発砲。長い内戦が始まったのです。

シリア政府と反政府勢力の争いによる混乱に乗じて、ISが勢力を広げます。当初は反政府側の武装集団でしたが次第に肥大化、独立し、2014年にはシリア北東部のラッカ県を制圧、一大勢力を築き国内は三つ巴の状態になります。

その後アサド政権を支援するロシア、反政府勢力を支援するアメリカとの代理戦争の構図が生まれ、その間隙をついてISがさらに勢力を伸ばすなど泥沼化していきました。

2016年頃から、ようやく停戦に向けての動きが広まります。2017年に入りトルコやイラクなど周辺国との協力により、ISの排除という名目で共同作戦が開始され、2017年10月、ついにラッカの地を取り戻すことができました。

 

消えない不安

しかし、ISの全てが壊滅したわけではありません。シリア東部、イラクとの国境周辺には彼らの勢力が及ぶ地域が残っていますし、突発的な戦闘は国内各地で発生するでしょう。

戦いが落ち着いても、今も存在し続けるアサド政権の下にどれだけの難民が戻れるのかもわかりませんし、三つ巴の勢力のうち一つが潰えて、残る二つが話し合いで和解するのも難しいことです。

それにシリアからISを根絶しても、すでに中東南部のイエメンやアフリカ北部、フィリピンなど東南アジアでも活動が大きくなってきているので、拠点が別の国に移転するだけで根本的な解決ができないのが現状です。

ISの重要拠点奪還は、中東を中心とした混乱が大きく世界全体に広がるというきっかけを作ってしまったのかもしれないのです。

 

おわりに

明るく平和だった街並みが復興できるまで、どれほどの歳月を必要とするでしょう。その道のりは戦いの期間よりもはるかに長く厳しいものになるでしょう。これで終わりだと思わずに、むしろこれから未来への歩みを、世界は伝え続けなくてはならないと思います。

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