世界ラリー選手権 第9戦ラリー・フィンランドは本拠地を置いて活動しているトヨタチームが大活躍!しかしその栄光の影には、苦い結果となったチームメイトの少し切ない笑顔が見え隠れするのでした。
各チームごとに感想を書いていきます。
トヨタ・ガズー・レーシング WRC(TOYOTA GAZOO Racing WRC)
マシン:トヨタ ヤリスWRC
エサペッカ・ラッピ選手/ヤンネ・フェルム 選手:優勝
ユホ・ハンニネン選手/カイ・リンドストローム選手:3位
ヤリ‐マティ・ラトバラ選手/ミーカ・アンティラ選手:21位
多分トヨタ陣営は、この母国フィンランド・ラリーの勝利を目標にして戦ってきたのだと思います。幸運にも2戦目スウェーデンでその願いは叶ったのですが、インタビューで自力で取りに行く姿勢を見せたのはここが初めてでした。
誰よりもこの地を知るドライバーたち。どこよりもテストを重ね走りこんだチームの力。それはタイムというはっきりとした形になって現れます。
母国フィンランドで、文字通りフライング・フィンとして大暴れする3台のマシン。このままいけば表彰台独占だって夢じゃない。そう思った矢先の出来事でした。
突如1台のマシンの異常をカメラが捉えます。そこに映し出されていたのは車内で同様した様子のラトバラ選手。一瞬、ポーランドのときのシーンが映り込んでしまったのかな?と思うような、既視感を覚える映像でした。
数人の観客(?)らに後ろからマシンを押してもらい、エンジンの押しがけを試みますが、かからず。勝利に一番近い場所にいながら、メカニカルトラブルにより優勝争いから降りなければならなくなるとは・・・。
ラトバラ選手のスピードに唯一ついていくことができていたラッピ選手。その後もペースを緩めることなく優勝へまっしぐら。デビューからわずか4戦で初勝利を手にしました。
わずかに2位の座を奪われてしまいましたが、3位にはハンニネン選手が入りワンスリーフィニッシュのトヨタ勢。チームの成績だけ見るとこれ以上ない結果に終わりましたが、一番勝利のために協力してくれて、一番勝利を必要としていたラトバラ選手を勝たせてあげられなかったのは無念でした。
Mスポーツ・ワールドラリーチーム(M-SPORT WORLD RALLY TEAM)
マシン:フォード フィエスタ WRC(FORD FIESTA WRC)
エルフィン・エバンス選手/ダニエル・バリット選手:2位
オット・タナク選手/マルティン・ヤルベオヤ選手:7位
セバスチャン・オジエ選手/ジュリアン・イングラシア選手:リタイア
2013年には優勝の経験もあるオジエ選手でしたが、今回もその強さを発揮できず、まさかのノーポイントとなりました。
連続するジャンプの着地時にサスペンションを破損し、その影響かコーナーを曲がり切れず木に激突。コ・ドライバーのイングラシア選手が脳震盪を起こしたためレース復帰を取りやめました。これにより15日間レースから離れて療養することになります。次戦ラリー・ドイチェランドは8月17日からなのでギリギリ間に合う予定ですが、ちょっと心配ですね。
代わりに表彰台争いに食い込んだのはタナク選手ではなくエバンス選手。ハマると速い選手が、見事大ハマりでフィンランド勢に割って入る大健闘を見せてくれました。
今回も2位と優勝まであと一歩のところまで来ています。タナク選手に続いて今季初優勝も夢ではない?そしたらタイヤメーカーDMACKとしても快挙となります。
タナク選手はフィンランド独特のジェットコースターラリーにリズムを掴めず低迷。しかし最後まで走り切って7位入賞となりました。
シトロエン・トタル・アブダビ・ワールドラリーチーム(CITROËN TOTAL ABU DHABI WRT)
マシン:シトロエン C3 WRC(Citroën C3 WRC)
クレイグ・ブリーン選手/スコット・マーチン選手:5位
クリス・ミーク選手/ポール・ネイグル選手:8位
カリッド・アルカシミ選手/クリス・パターソン選手:16位
マシンを壊し過ぎて一回休みとなったミーク選手が復活。しかし、牙を抜かれた獣のように大人しくなってしまい、無難に8位という結果に。いいんですよ、別に。ちゃんと入賞したし。でもあんまり楽しくなさそうな表情でした。
反対に、光る才能を見せる結果となったのがブリーン選手。低迷するチームの中で唯一それなりの成績を出し続けている男がここでもきちんと結果を出してくれました。それにしても、5位は今季5回目。そしてこれが最高順位。ヘンなところで落ち着いてしまったなぁ。
今回はアルカシミ選手も登場。チームを資金面でサポートする一方、自分でもドライブしちゃうアラブのスーパー王子様ですが、やっぱりC3は乗りにくいのかな?あんまり余裕はない感じに見えました。
リタイア覚悟で力を解放したミーク選手なら勝てるけど、そうじゃないとあまり速くないマシンというイメージが定着する前に、なんとか挽回してもらいたいですね。ローブ様!なんとかしてください!
ヒュンダイ・モータースポーツ(HYUNDAI MOTORSPORT)
マシン:ヒュンダイ i20 クーペ WRC((HYUNDAI i20 COUPE WRC)
ティエリー・ヌービル選手/ニコラ・ジルソウル選手:6位
ダニエル・ソルド選手/マルク・マルティ選手:9位
ヘイデン・パッドン選手/セブ・マーシャル選手:43位
このところ好調が続いていたヒュンダイ勢ですが、さすがにトヨタの地元では分が悪かったのか、目立った活躍は観られませんでした。
しかしヌービル選手は6位入賞にパワーポイントでの結果を合わせてついにオジエ選手に並ぶ選手権リーダーになることができました。無理せず着実にポイントを重ねることに専念したのかな?とも思えますが、どのドライバーもコーナー立ち上がりでトラクションがかかっていないように見えていたので、i20の苦手なコースだったのかもしれません。
その他
ラッピ選手の優勝がクローズアップされてしまうかもしれませんが、昨年のWRC2(WRCの下位カテゴリ)で彼のライバルだったテーム・スニネン選手もデビューから2戦目で4位入賞と驚異的な速さを見せています。彼の今後にも注目ですよ。WRC2には新井大輝選手、勝田貴元選手も参加していましたが完走ならず。世界の壁は高いですね。
そして少し違う意味で毎回楽しみなマッズ・オストベルグ選手は、今回50メートルというビッグジャンプを記録し、またまた盛り上げてくれました。ちなみに同じ場所でのハンニネン選手のジャンプ距離は35メートルです。1トン以上ある鉄の塊が50メートルも空を飛ぶってどういうこと?もう鳥人間コンテストとかに出てもらっても良いのかもしれません。
全体を通しての感想
どうしてフィンランド人は母国ラリーでこんなに強いんでしょうね?こんな極端なラリー、他にないんじゃないかな。
特にラトバラ選手の速さは感動ものでした。2日目は出走順の影響もあったのかラッピ選手の方が上でしたが、ほぼイーブンな条件になった3日目はやはりラトバラ選手の方が強い。最初のステージの走りを見ていて他のマシンより少し足回りが緩いように思えたのですが、多分彼はその遊びの部分をうまく利用してマシンをコントロールするタイプなんでしょうね。
反対に遊びの部分を極力減らそうとするオジエ選手は、正確な走りから少しでもズレてしまうと今季のように落ち着かないドライビングが増えてしまうようです。グリップがちょっと足りないようなフィンランドのコースでは特に難しかったのかな?とも考えてしまいます。
この予想が正しければ、似たようなタイプのヌービル選手があまり良い結果を出せなかったことにもつながりますね。
そのラトバラ選手の脱落によってラッピ選手は初優勝、ハンニネン選手は初の表彰台を手にし、これでトヨタのドライバー全員が表彰台を経験できたので良かったといえば良かったのですが、やっぱり悔しい思いはあります。でも一番悔しいのはトヨタチームの方々でしょうから、いつまでも引きずってないで、この苦難を乗り越えて次の結果につなげてくれることを信じてみようと思いました。
ただ、フィンランドは絶対有利という大きな手ごたえを感じることができたので、来年こそは表彰台独占するくらいの意気込みで応援していきましょう。
ラッピ選手、エバンス選手、タナク選手にスニネン選手。若手が続々と成長して行く中、ラトバラ選手にはベテランとして大きな存在であり続けてほしいなと思うのでした。
おわりに
今回のWRC+ではラトバラ選手がリアルタイムにリタイアする光景が映し出され、ビックリするあまり次の日に軽く熱を出してしまいました(WRC関係ないと思うけど)。
ライブってそれくらいインパクトがあるので、ちょっと見たいなってかたは初回1ヵ月無料とかキャンペーンで割引があるときにでも登録してもらえればと思います。
第10戦ラリー・ドイチェランドは8月17日(木)開催です。久しぶりのターマック(舗装路)ラリーでも、トヨタ勢の活躍する姿が見たいですね。
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(画像の出典:TOYOTA GAZOO Racing)