【映画感想】獣道/伊藤沙莉さん全部乗せ丼みたいな(ネタバレなし)

獣道

先日、久しぶりに夜の映画館に足を運んで『獣道』を観賞してきました。ポスターからはヤンキーコメディ映画の雰囲気が伝わってきますが、実は全力で生きる人間たちの熱い青春ドラマ!予想と全く違う傑作映画でした。

ネタバレなしの感想を書いていきますよ!

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あらすじ

宗教にどっぷりとハマってしまった「信仰ジャンキー」の娘として生まれた愛衣(伊藤沙莉)は、周囲に翻弄されながら自分の居場所を探す毎日。

必死になってもがいても、もがいても、叶わない願い。次第に人生は行き詰まり、ヤンキーたちが牛耳る世界に落ちていく。それでもなお、本能のままに生きる獣のように、向かう先さえ知らずに歩み続けていく。

すぐ目の前に、微かな光があったことにすら気づかずに。

【動画】宗教、育児放棄、性産業…地方都市の青春を描く『獣道』予告編

なによりもまず、伊藤沙莉さんすっごいよ!

本作の主役を演じた伊藤沙莉さん。清楚な女子中学生の姿からヤンキーに変貌して、あんな姿を晒して、セクシーなシーンまでこなして、最後はまたそこに戻ってくるのか!という七変化ぶりが素晴らしいです。

残念コスプレみたいになることもなく、あんた誰?みたいになっちゃうこともなく、どの役でも彼女だと一瞬でわかる存在感。強さも弱さも全部ひっくるめて躊躇なくカメラの前に投げ出す度胸。あぁ女優さんて怖いなって思いました。

劇場で偶然伊藤さんファンのお知り合いに出会ったのですが、映画を観終わって、その方の気持ちがわかりました。あの演技力は人を吸い込みます。

対となる存在の亮太を演じる須賀健太さんは、常にクールな表情で大人しい役なんですが、愛衣の激しい生き方を更に引き立ててくれていました。最後まで観ると、あ、この映画青春映画だったんだ!って思い出します。

 

コメディーだけど、笑えねーよ!

うっそでしょこんなの!とか笑い飛ばそうとしても、どこかぬぐい切れない違和感。

映画にも出演され、脚本にも関わっている衣緒菜さんが体験した実話がベースになっているとかで、嘘みたいなシチュエーションなのにギリギリ嘘じゃないって感じがありました。

とにかく地獄に堕ちていく。その姿を見ながら笑えるってだけで異常なんですが、笑っても笑ってもスッキリしない、むしろ罪悪感を感じるようなダークなコメディ。

この闇はどこかで自分と繋がっている。そういう意識がずっとあって本気で笑えないという、今まで味わったことのない感覚に陥りました。ある意味ホラーより怖かったです。

 

地方の呪縛、抜け出せないジレンマ

この映画では地方都市で暮らす人々を描いています。暗黙の掟。一度踏み込めば蛇のように絡みついて離れない強力な連帯感。地方には東京とは異質の社会があります。

僕も地方出身なので、すっごくわかります。嫌悪感があったから飛び出してきたのかもしれません。人との距離の近さがイヤなものに感じられる瞬間があって、でも断ればすべてを失うような恐怖。そんな世界で幸せになれるのだろうか。

地方創生なんて言ってお金をいくらバラまいても、この環境を変えなくては地方の衰退は止まらないのでは?とコメディ映画のはずなのに、社会的に大きくて悩ましい問題を目先に突き付けられたような気持にもなりました。

 

本心を見せるヤンキーたちに思わず涙

踏み出した道を簡単に引き返すこともできず、進む先も見えなくなっていくヤンキーたち。その中心役を演じたアントニーさんと吉村界人さんの生き様も必見です。散々暴れておいてラストに見せる表情には、胸が苦しくなりました。

ひとつは優しさ、もうひとつは寂しさ。地方に残る理由は、ただ出られないからじゃなくて、愛おしいものがそこにあるからでもあるんでしょうね。

年初に観た『太陽を掴め』でも熱演していた吉村界人さんは、この作品でも異質のオーラをまとっていました。最高にカッコつけてるのに隠しきれない不安感というか、思わせぶりヤンキーを演じさせたらこの人の右に出るものはいないでしょう。

 

おわりに

どこかのジャンルに振り分けられるとしたら、単純に青春コメディになっちゃうのかな?でもひとつの枠に収まり切れない多様な見方ができる作品でした。

何ができるのかよくわからない地方創生コンサルとかが現れたら、この映画を見せて感想文を書かせればいいんじゃないかとか思うくらいリアルな重さも持っているので、もっと多くの人たちに触れてもらいたいです。

ちょうど観賞した日はトークショーがあり、監督の内田英治さん、プロデューサーのアダム・トレルさん、出演者の川上奈々美さん、冨手麻妙さん、日高七海さん、根矢涼香さん、松井薫平さん、衣緒菜さんらが登壇し、実話に基づいた脚本であることや、監督が感じたヤンキー観などのお話を聞くことができました。

皆さんとてもヤンキーを演じていたとは思えない美しさ&イケメンっぷりで、劇中の役となかなか一致しない点も笑えたり、たっぷりと楽しませてもらえました。

今後もトークショーは続くようですので、その日限りの発言があったりするかもしれませんよ。東京、山梨を皮切りに全国で上映されますので、ぜひご覧になってくださいね。

(C)third window films

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