2017年6月10日にドイツの首都ベルリンでフォーミュラE 2016-2017シーズンの第7戦が開催されました。
週末ダブルヘッダーという過酷な日程の中、選手権の2強ドライバーに迫る第3の男が、ついに頂点へ!
ルールについては以下の記事で説明していますので、事前に見ておくことをオススメします。
【フォーミュラE】シーズン3(2016-2017)のルールを簡単に説明します
コース:テンペルホーフ旧国際空港の敷地を利用したワイドなコース!
昨年は難民キャンプとして利用されていたテンペルホーフ空港(現在は使われていません)に2年ぶりに戻ってきたフォーミュラE。
全長2.3kmのコースレイアウトはとってもユニーク。ドライバーたちも他では見たことがないよ!と驚く1コーナーは、内側へ内側へと食い込んでいく非常に難しいテクニカルなデザイン。各ドライバーごとに異なる攻略法があるようで、スタート直後から見ごたえ十分です。
市街地とは違ってコース幅が広いため、どんな場所も油断をすれば簡単に後続に抜かれてしまいます。また、コンクリートむき出しの荒れた路面がタイヤに与える影響も大きく、長い航続距離にギリギリの燃費と相まって、最後まで走り切れるのかという心配もしなければならないチーム戦略も重要な戦いになります。
そういえば、難民キャンプで暮らしていた人たちはどうなってしまったのでしょうか・・・。
【動画】ニック・ハイドフェルド選手のベルリンコースガイド
予選:運命の1/1000秒
予選
まずトップに立ったのは予選第1グループのサム・バード選手(DSヴァージン レーシング)。彼のタイムがベンチマークになります。
そのバード選手を上回ったのが期待の新人フェリックス・ローゼンクヴィスト選手(マヒンドラ レーシング)。同グループのホセ・マリア・ロペス選手(DSヴァージン レーシング)、ルーカス・ディ・グラッシ選手(ABTシェフラー アウディスポーツ)らも上位に顔をのぞかせます。
そして緊張の最終グループ。選手権リーダーのセバスチャン・ブエミ選手(ルノーe.ダムス)はオーバーステアに苦しみ、なんと決勝は14番手からのスタートからとなります。ニック・ハイドフェルド選手(マヒンドラ レーシング)が同グループ内から唯一スーパーポール進出となりました。
スーパーポール
サッカーの試合で足を痛めてしまったというディ・グラッシ選手がケガを感じさせない走りを見せ、いきなりの好タイムで後続にプレッシャーを与えます。
彼を追うロペス選手。なんと1000分の1秒差で2位となります。あと数センチ足りなかった。
そんな二人を脅かしたのがローゼンクヴィスト選手。前半のセクションではベストタイムを刻みますが、後半焦ったのか縁石に乗り上げたりマシンをスライドさせたりと小さなミスがありトップから0.083秒遅れの3位。上位は超接近戦となりました。
4位には同じくマヒンドラのハイドフェルド選手、5位にはアタックに失敗したバード選手が入り決勝を迎えます。
【動画】予選ハイライト
決勝:ヒートアップしたのは大接戦の4位争い
前半
オープニングは比較的落ち着いた出だしとなりました。ロペス選手がセカンドローからのスタート失敗で4位まで落ちてしまいましたが、それ以外は大きなアクシデントはありませんでした。ブエミ選手もジャンプアップは果たせず、じっくりと攻めていくしかありません。
ディ・グラッシ選手を先頭に、ローゼンクヴィスト選手が少し距離を置いて逃げるという展開に。3位以降の集団とはさらには慣れていきます。
オーバーテイクポイントと思われていた1コーナーが、想像以上に難易度の高いコーナーワークを求められるため、他車を抜くには難しく順位の入れ替わりがあまり起こりません。
しかしブエミ選手だけは9コーナーでのオーバーテイク方法を編み出して徐々に順位を上げ、気づけば9位まで浮上してきます。
いよいよピットインが近くなってくると、ディ・グラッシ選手をはじめ多くのマシンがブレーキ時にタイヤから白煙を上げ始めます。パワーマネジメントにも苦しむディ・グラッシ選手をこのタイミングでローゼンクヴィスト選手が一気に攻略。首位に躍り出ていよいよピットイン競争の開始です。
後半
全車ピットインを終え、上位の順位はローゼンクヴィスト選手、ディ・グラッシ選手、ハイドフェルド選手と変わらず。そこから大きく離れてロペス選手が追いかけます。
後半に入って勢いを増すローゼンクヴィスト選手に対し、ディ・グラッシ選手は熱によりパワー回生の問題が発生して勝負を仕掛けられません。徐々に差は開いていき、2秒以上のはっきりとした距離が空いてしまいました。
その間にブエミ選手が得意の9コーナーで次々とライバルを料理し、ついに4位争いの集団に追いつきます。ニコラス・プロスト選手(ルノーe.ダムス)、ダニエル・アプト選手(ABTシェフラー アウディスポーツ)、ピットイン戦略に失敗して順位を落としたバード選手、ジャン-エリック・ベルニュ選手(テチーター)らと死闘を繰り広げます。
混戦を尻目に独走するローゼンクヴィスト選手がファイナルラップまで余裕を見せた走りでそのまま優勝。2位ディ・グラッシ選手、3位にはハイドフェルド選手が入り、マヒンドラは1 – 3 フィニッシュのダブル表彰台でした。
詳しい結果は以下をご覧ください。
第7戦ベルリン(ドイツ)リザルト(テレビ朝日)
【動画】決勝ハイライト
【動画】決勝フル配信
感想
今季デビュー戦から新人らしからぬ走りで注目されたローゼンクヴィスト選手がついに初優勝。彼の才能だけではなく、マヒンドラ レーシングの成長ぶりにも目を向けなくてはなりません。ハイドフェルド選手はこれで3戦連続3位入賞と安定感があり、圧倒的なマシンの性能を誇るルノー陣営に対抗できるレベルにまで追いついてきているようです。
チャンピオンシップリーダーのブエミ選手のライバルとして並び立つ存在ながら今一つマシンの性能で劣るABTシェフラーも、来季はアウディのチームとして参戦し、チームとしての総合力を底上げしてきますので、今後の戦いがますます見逃せないものになるでしょう。
ディ・グラッシ選手は、優勝こそ逃したもののポールポジションと2位表彰台により大量のポイントを獲得しブエミ選手に迫ります。ブエミ選手の方はせっかく4位争いにまで絡んだのにタイヤの内圧規定違反で順位が取り消しに。今季は数戦欠場することが決まっていますので、痛いミスとなりました。
今回は初優勝となったマヒンドラ レーシングはインドが本拠地のチームですが、F1で戦うフォース・インディアよりも先にフォーミュラEで頂点を極めてしまうかもしれません。そしたらもっとアジアのモータースポーツが盛り上がってくれるんじゃないかなと期待しています。日本企業もそろそろ動きを見せないと、せっかく成長が見込めるイベントなのに置いて行かれてしまいますよ~。
おわりに
今回はハイライト映像配信遅いなーと思っていたらライブ映像フル配信になっていました。次戦以降も継続されることを期待しています。AbemaTVでも見られると尚嬉しい。F1見られない方は一緒にフォーミュラEを応援しましょう。
第9、10戦ニューヨーク(アメリカ)は7月15日(土)と16日とダブルヘッダーになります。ニューヨークで開催される初のフォーミュラE、どんな展開になるのか楽しみです。
第7戦とのダブルヘッダーとなった第8戦ベルリン(ドイツ)の感想も近々公開予定です。
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画像の出典:Formula E