世界ラリー選手権 第8戦ラリー・ポーランドは悪天候の高速バトルとなり、首位が何度も入れ替わる大接戦!
アクシデント続出のサバイバルの末、ティエリー・ヌービル選手が今季3勝目を挙げた一戦、各チームごとにまとめて感想を書いていきます。
ヒュンダイ・モータースポーツ(HYUNDAI MOTORSPORT)
マシン:ヒュンダイ i20 クーペ WRC((HYUNDAI i20 COUPE WRC)
ティエリー・ヌービル選手/ニコラ・ジルソウル選手:優勝
ヘイデン・パッドン選手/セブ・マーシャル選手:2位
ダニエル・ソルド選手/マルク・マルティ選手:4位
次々と優勝候補が消えていく過酷な闘いとなったラリー・ポーランド。しかしヒュンダイ勢だけは大きなアクシデントやトラブルもなく1 – 2 – 4フィニッシュと快進撃。ヌービル選手は今季3勝目となりました。
ヌービル選手の速さは言うまでもありませんが、ヘリコプターからの空撮映像を見るとそのすごさがよくわかります。高速コーナーで軽くハンドルを切れば、クイッと綺麗に出口方向にフロントが向いて、まったくブレない美しい走り。
彼の無駄のないドライビングスタイルに合ったセットアップが完成の域に入ったかのようです。オジエ選手やミケルセン選手のスタイルと近いと思うので、彼らがヒュンダイに乗っていたらと思うと想像するだけで恐ろしい。
前戦では首位を快走しながらもクラッシュでのリタイアとなったパッドン選手も、これでようやく今季初表彰台。ここから復調なるでしょうか。
ソルド選手は目立たないけど今季ここまで全て入賞しているのはオジエ選手と彼だけ。このチームの総合力の高さを支えているのが、このベテランさんの力だったりします。
Mスポーツ・ワールドラリーチーム(M-SPORT WORLD RALLY TEAM)
マシン:フォード フィエスタ WRC(FORD FIESTA WRC)
セバスチャン・オジエ選手/ジュリアン・イングラシア選手:3位
エルフィン・エバンス選手/ダニエル・バリット選手:8位
オット・タナク選手/マルティン・ヤルベオヤ選手:リタイア
イタリアでは悲願の初優勝を遂げたタナク選手。今回のラリーも、優勝争いは彼を中心に回っていました。最終日までは・・・。
魔のステージ21で悲劇は訪れました。森の中の高速セクションで道脇の盛り土にリアタイヤがヒット。体制を崩したマシンは勢いそのままにフロントから木に突っ込んでしまいます。なんとかステージの最後までは走り切りましたが、致命的なダメージによりリタイアとなりました。残念ですけどこれもラリー。
2戦ぶりに表彰台に立ったオジエ選手は、とても彼らしくない走りで中盤に低迷していましたが、上位陣のリタイアで気づいたら3位まで上がってきました。
クラッシュあり、気づいたらバンバーなくなってるわでボロボロのマシンは、よく最後まで走れたなぁというのが個人的な本音。初戦モンテカルロのときみたいな落ち着きのない走りっぷりでした。それでも入賞してポイントを獲得できる忍耐強さも持っているからこそ、チャンピオンに君臨できるんでしょう。
昨年はタナク選手がDMACKのタイヤで優勝寸前まで行ったので、もしかしたらと思っていたエバンス選手もステージトップタイムを出したりしながら8位入賞。雨が降らなければ、もしかしたら?とも思えなくない活躍でした。
シトロエン・トタル・アブダビ・ワールドラリーチーム(CITROËN TOTAL ABU DHABI WRT)
マシン:シトロエン C3 WRC(Citroën C3 WRC)
ステファン・ルフェーブル選手/ギャビン・モロー選手:5位
アンドレアス・ミケルセン選手/アンダース・イェーガー選手:9位
クレイグ・ブリーン選手/スコット・マーチン選手:11位
ミーク選手の代わりにハンドルを握ることになったミケルセン選手。今回も着実に入賞と、レギュラー入りも視野に入ってきました。
しかしシトロエンC3は速いけど乗りこなすのが難しいのかもしれません。今後、もう少しミケルセン選手は慣れるための時間を得ることができましたが、ミーク選手にもミケルセン選手にも合わないとなった場合、チームの行方が心配です。
ルフェーブル選手がなんとか5位入賞でしたが、誰一人として優勝争いに絡むことができませんでした。しかし、ここにきてようやく完走率が上がってきたので、走行データを集めて早いところ他のチームになんとか追いついてもらいたいです。
トヨタ・ガズー・レーシング WRC(TOYOTA GAZOO Racing WRC)
マシン:トヨタ ヤリスWRC
ユホ・ハンニネン選手/カイ・リンドストローム選手:10位
ヤリ‐マティ・ラトバラ選手/ミーカ・アンティラ選手:18位
エサペッカ・ラッピ選手/ヤンネ・フェルム 選手:リタイア
ヌービル選手、タナク選手らと首位争いを演じたラトバラ選手。オジエ選手一強の時代が終わり、この三強によるチャンピオンシップ争いを予感させるような展開でしたが、メカニカルトラブルにより最初の脱落者となってしまいました。
正直自力での優勝は難しいとは思いましたが、表彰台か、せめてオジエ選手より前でフィニッシュしたかったですねぇ。
それでも最終ステージではうっぷんを晴らすように全開走行、トップタイムを叩き出しパワーステージの5ポイントを奪取。チャンピオン争いからは1歩遅れを取ってしまいましたが、よく考えたらデビューイヤーからこんな成績は想像していなかったので、来年確実にチャンピオンを獲れる準備を、今から進めていってもらえたらなと思います。
ハンニネン選手は、今回は速さよりも信頼性重視だったんでしょうか?いつもの速さは影を潜めてしまいましたが、着実に10位入賞。ラッピ選手はWRCの洗礼を受ける形でリタイアとなりました。
その他
今季は大ジャンパーとして有名になったマッズ・オストベルグ選手はポーランドでもピョンピョン跳ねてました。ステージ終了後に感想を聞かれた時も「ジャンプ大好き!」という感じで楽しそうだし。結果も8位で地味に4戦連続入賞。成績は去年と同じ感じだなぁ。
昨年のWRC2(WRCの下位カテゴリ)でラッピ選手のライバルだったテーム・スニネン選手も、ついにトップカテゴリでのデビューを経験しました。いきなり6位入賞とラッピ選手に負けない才能を発揮。来年レギュラーシートを得られるといいですね。
全体を通しての感想
ル・マン24時間耐久レースもそうですが、想定外の事態に弱いトヨタさん。ラリー・ポーランドをミスなく最後まで走りぬくのは難しいですし、マシントラブルがなかったとしてもどこかでクラッシュしてたかも?とは思いますが、最後まで走れば優勝もあり得ただけにもったいなかった。
この辺りでオジエ選手とのポイント差を詰めておかなければならないところでのリタイア、しかも不調のオジエ選手が最後には表彰台に挙がって大量のポイント獲得となり大ダメージになってしまいました。
それにしても今年のヌービル選手は速い。もともと無駄のない走りが特徴ですが、マシンとの相性も良くなってますます磨きがかかってきました。映像見てても一人だけ全然慌てませんし。弱点があるとしたら時々冷静さを失うくらいでしょうか?
初戦、2戦目と勝てるレースでミスしたりするので、余裕で勝てるようになると油断してくれるのかもしれませんが・・・。
最後はタナク選手のこと。彼のマシンのリアウィングがタイムアタック中に取れましたが、この前はオストベルグさんも同じことありましたよね?あのときはネジが緩かったのかと思いましたが、ジャンプの衝撃で壊れてみたいだったので、今後Mスポーツの意外な弱点になったりしませんかね?
おわりに
今回のWRC+ではライブ中継を見られるステージが5つにまで増えました。月額600円のお金を払ってるんだから、これくらいはしてくれないと無料で視聴できるレッドブルTVの方がお得になってしまいますね。
第9戦ラリー・フィンランドは7月27日(木)開催です。トヨタドライバーたちが故郷で活躍してくれることを期待しましょう。
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(画像の出典:TOYOTA GAZOO Racing)