F1モナコグランプリ、そして今年佐藤琢磨選手が優勝したインディ500と、それに並ぶ世界三大レースの1つ、ル・マン24時間耐久レースが6月17日から開催中です(この記事書いている間も走ってます)。
この季節になると観たくなるのがスティーブ・マックイーンさん主演映画『栄光のル・マン』。ですが今年はその作品の製作過程を追ったドキュメンタリー『スティーヴ・マックィーン その男とル・マン』を観賞しましたので、その感想です。
あらすじ
1970年。数々の名作に出演し、映画界で不動の地位を得ていたスティーブ・マックイーンが自ら立ち上げたプロダクションで挑んだ作品『栄光のル・マン』。
撮影期間は遅れ、予算は150万ドルもオーバー。脚本はない、監督は降板、マックイーンは演技以外の口出しを禁じられ、苦難の末に公開されたものの興行成績は目を覆いたくなるばかり。
それでも、多くの人から愛され崇拝されるカルト映画として今日も生き続ける作品の、制作の裏側に迫るドキュメンタリーです。
【動画】『栄光のル・マン』の裏側に迫る!映画『スティーヴ・マックィーン その男とル・マン』予告編
『栄光のル・マン』おさらい
この映画の中で取り上げている作品について、去年の全く同じ時期に書いた記事はこちらです。
【映画感想】栄光のル・マン/オレにとってレースは人生なんだ(ネタバレなし)
ストーリーが明確でなく、エンディングも初見では納得のいかない結末。しかしレースシーンは恐怖を感じるほどにリアルな描写となっており、全体としてチグハグな内容ながら映画ファン、モータースポーツファンの心に残り続ける不思議な作品です。
例えるなら、ピンク映画を撮ろうとしていたのに演技そっちのけで女優さんのおっぱいだけを執拗に撮りまくり、あまりに斬新な撮影手法が評価されカルト作品へと昇華した、といったところでしょうか。
作品の感想
狂気を感じるリアルさの裏側
当初の撮影は順調に進んでいました。実際のル・マン24時間耐久レースにカメラを持ち込んでの撮影や、その後もコースに居座って実際のドライバーたちが実際のレーススピードで走る姿を取り続けたりと、かなり無茶な取り組みも映像に残されています。
最近ではレース中のオンボード映像が見られたり実写と見間違えるほど映像の綺麗なレースゲームが楽しめるようになりましたが『栄光のル・マン』ほどの恐怖を味わうことはできません。その映像がどうやって生まれたのか。この作品を観ればはその謎が解けます。
栄光から挫折へ
本格的なレースシーンを収めたリアルな映像が集めただけでは映画という1つの作品にはなりません。監督との確執や脚本家の不在など様々な要素全てに問題が発生し、徐々に歯車が狂っていきます。
悲劇の事故や監督の降板など立て続けに起こる負の連鎖。どうして映画の印象がチグハグなのか、その理由が赤裸々に描かれていました。こんなにドラマチックに全てを失う人がいるでしょうか。
それはまるで様々な出来事が起こる耐久レースの姿そのもの。レースみたいな人生を送ったマックイーンさん。彼が撮ろうとした映画の過程ですらレースみたいになってます。
それでも彼が残したかったもの
事実上マックイーンさんの手を離れ完成した作品は、彼の望んでいた形にはならなかったのかもしれません。当時の評価は大きく2分され、興行的にも決して成功とは言えないものでしたが、それでも彼は最後まで俳優としての役割を全うしました。
一番の集客源でもある彼にとって、撮影に協力してくれた製作スタッフやドライバーたちの労力を無駄にしないためには、途中で投げ出すことなどできなかったのでしょう。その後はモータースポーツへの関心を絶ち、再び人気映画俳優への道を歩むことになります。
「レースの全てを映画で表現したかった」
その想いは届いたのでしょうか?決して完璧な姿ではありませんが、作品に込められた強い思いは確かに伝わってきます。時を超えて今もまだ作品を愛する人がいて、ドキュメンタリーまで作られている。その事実が証明してくれています。
おわりに
マックイーンさんのプライベートにもかなり深く迫っており、難しいヤツと呼ばれたりしても人間としての優しさも失っていない素敵な部分も見られたりと、あっという間の112分間でした。
今もル・マン24時間耐久レースを見ている最中ですが、現在トヨタがワンツー体制です。このままフィニッシュを迎えて初の栄冠を手にできるよう応援しています。
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