6月9日に世界ラリークロス選手権(WorldRX)第6戦ヘル(ノルウェー)が開催されました。ノルウェーの森をバックに、全12戦のカレンダー前半を締めくくる戦い。その感想を書いていきます。
ルールについては以下の記事で説明していますので、事前に見ておくことをオススメします。
【ラリークロス】世界ラリークロス選手権(WorldRX)のルールについて説明します
舞台はその名もヘルサーキット
「地獄のサーキット」と冗談交じりに呼ばれるヘルサーキット。古代ノルド語「Hellir」(崖の洞窟)が語源となっており、その名の通り海辺にある観光名所。
コースはタイトなヘアピンを含むトリッキーなレイアウト。仕掛けどころはスピードに乗る1コーナーでしょうか。ここにはジョーカーラップも設置されており、特にスタート直後は要注意。グラベル(未舗装路)部分は路面に砂を巻いており、決勝の頃にはアスファルトが顔を覗かせてしまうんだとか。
TEAM VERKSTED WORLD RX OF NORWAY(FIA World Rallycross Championship)
【動画】ヘルRX プレビュー
予選~セミファイナル:痛みに耐えてよく頑張った!
雨によりQ1から過酷なコンディションとなり、各ドライバーを苦しめます。
プラクティス中にセバスチャン・ローブ選手(Team Peugeot-Hansen:プジョー 208)のマシンに足をひかれたヨハン・クリストファーソン選手(Team PSRX Volkswagen Sweden:ポロ GTI)が痛みに耐えながらの出走にも関わらずQ3ではトップタイムをマークする走りで予選を4位で通過。
昨年のチャンピオン、マティアス・エクストローム選手(Team EKS:アウディS1)とその前のチャンピオンのペター・ソルベルグ選手(Team PSRX Volkswagen Sweden:ポロ GTI)ら王者たちも天候に左右されない強さで予選2番手、3番手と好位置につけます。
予選首位を掴んだのはアンドレアス・バックラッド選手(Team Hoonigan Racing Division:フォード フォーカス RS)。Q2でのトップタイムを始め手堅くまとめて地元で堂々のセミファイナル進出です。同僚のケン・ブロック選手も10位で予選突破できたので、マシンの仕上がりも良さそうです。
セミファイナル1ではひと波乱。バックラッド選手との接触により、なんとソルベルグ選手が4位でファイナル進出ならず。故郷での活躍もここまでとなってしまいました。その代わり今季初めてティマ・ティマジヤーノ選手(Team STARD:フォード フィエスタ)が決勝に残りました。1番手がバックラッド選手、ローブ選手が2番手という結果です。
セミファイナル2はいつもの決勝の常連、クリストファーソン選手、エクストローム選手、そしてティミ・ハンセン選手(Team Peugeot-Hansen:プジョー 208)が順当に決勝へと駒を進めました。
【動画】予選Q1ハイライト
【動画】予選Q2ハイライト
【動画】予選Q3ハイライト
決勝:実力よりも意地の勝利!
スタートから飛び出したのはクリストファーソン選手。先手を取られたバックラッド選手はすぐ背後につけます。
戦略通りらしく速度を落とさずに迷わずジョーカーラップに飛び込むクリストファーソン選手。ティマジヤーノ選手も同じ戦略を取りますが、コーナー出口で外に膨らんだ瞬間にハンセン選手がオーバーテイクされます。あっという間にティマティマが最後尾へ・・・。
これで先頭を走るのはバックラッド選手。その後ろでローブ選手とエクストローム選手が恒例となった超濃厚バトルを開始。優勝争いそっちのけです。
そんな2台を置き去りにしてフルアタックのバックラッド選手が2週目でジョーカーラップを選択!ここが勝負の分かれ目となりました。
クリストファーソン選手の方が速いのを悟り、差をつけられる前にジョーカーラップを利用して前に出ようという作戦だったと思いますが、ギリギリマシン1台分届かず!スタート直後と同じピッタリ背後につく形に逆戻りとなってしまいました。
なんとか前に出ようと強い当たりを入れ猛プッシュしますが、クリストファーソン選手は全く動じません。セミファイナルでバックラッド選手に押し出されて決勝進出を逃したソルベルグ選手のためにも、ここは絶対譲らない!という姿勢です。
どうしても抜けないバックラッド選手の方は逆に後ろからハンセン選手に追いつかれ防戦一方に。その間にクリストファーソン選手は後続との差を広げにかかります。
5周目になっても相変わらずタイマン勝負を続けるローブ選手とエクストローム選手。2人とも試合巧者なのでギリギリの距離でクリーンな闘い。しかし鍔迫り合いを続けている後ろからクリストファーソン選手が忍び寄ります。
最後まで一緒に走るローブ選手とエクストローム選手は最終ラップでようやくジョーカーラップへ。抜けた先には悠々と前を行くクリストファーソン選手と、バックラッド選手の後ろ姿がありました。
最後は圧勝でクリストファーソン選手がチェッカーを受け今季2勝目。バックラッド選手は見た目以上に大きな差をつけられ2位フィニッシュ。
ローブ選手は1周目からファイナルラップまでエクストローム選手の猛攻をしのぎ切り、3位表彰台を獲得です。
最終結果は以下をご覧ください。
Live Qualifying Results – Supercar – Hell(FIA World Rallycross Championship)
【動画】決勝ハイライト
感想
今季2勝目を挙げたクリストファーソン選手、予選前にローブ選手のマシンに足をひかれ、痛みに耐えながらのレースでした。レントゲン検査の結果、骨には異常がなかったようでひと安心。次のレースにも出走の見込みです。
Good news from the hospital! X-ray shows no bone damage, ultrasound shows no ligament damage 👍🏼 thanks for all your messages of support! 😃 pic.twitter.com/fEvAjXMz3D
— Johan Kristoffersson (@JohanKMS88) June 12, 2017
去年までは予選は速くても決勝でなかなか結果が出せませんでしたが、大化けしましたね~。もみ合いになるとまた違った結果になるかもしれませんが、後ろからガッツリ押されても動じないメンタルの強さには大きな成長が見られました。選手権でも2位とのリードを広げてチャンピオンに一番近い場所にいますので、シーズン後半戦も有利に戦えそうですね。
2位フィニッシュのバックラッド選手は、ちょっとくやしい結果だったかもしれません。決勝で2週目のジョーカーラップは戦略通りでしたが、ほんのわずかなタイムロスでクリストファーソン選手に並ぶことができず完敗。あそこであとコンマ何秒か速ければ・・・。
ブロック選手もだんだんと調子を上げているようですし、チームとしても上り調子。まだこれからも勝利の可能性はたくさんあるので頑張ってほしいです。
ソルベルグ選手との接触の件は映像で確認できていませんが、個人的にはこの2人、タイプが似ているのでしょうがないかなと思います。どちらもトップレベルのスピードを持っていて、負けん気が強くて当たり負けしないファイター同士。同郷なんですからレース後はいがみ合ったりせず仲良くしてくださいね。
最近の楽しみの1つがローブ選手VSエクストローム選手なんですが、今回もやってくれました!しかも決勝の最初から最後まで戦い続けましたからね。マシンコントロールは世界ラリークロス選手権参加ドライバーの中でも1、2を争う優れたテクニックの持ち主同士、ギリギリの戦いはずっと見ていたくなるほど美しいので、ぜひ視聴してみてください。
おわりに
ここまで12戦のうち6戦を終え、次からはいよいよ後半戦。しかしチャンピオン争いはまだ混戦模様で誰が勝つのかわかりません。エクストローム選手はDTM(ドイツツーリンカー選手権)を優先して数戦欠場するようですが、他にも強豪勢揃い、一歩抜け出すのは至難の業です。
次回第7戦は6月30日、スウェーデンのホリェスサーキットで開催されます。お楽しみに!
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