混迷を続けるシリア情勢。日本で報じられる海外のニュースは、せいぜいトランプ大統領の発言くらいで、中東情勢などほとんど耳に入ることもなくなってしまいました。
しかし、自体は日本の思惑とは関係なく進行しています。国内の紛争から逃れたシリア難民は、いったいどこにいるのか調べてみました。
ヨーロッパにはもう行けない
2014年頃からはヨーロッパに向かう多くの難民の姿がありました。しかし2017年5月末の時点で約70,000人となり、2016年と比べると5分の1まで減少しています。内訳をみるとシリアからトルコ経由でヨーロッパに入る道はほぼ閉ざされてしまっています。
一方でアフリカ内での治安の悪化により、大陸から海を越えてイタリアに流れるルートが拡大するという新たな問題が顕在化しています。IS(イスラム国)による支配地域も中東から伸びてきているのも混迷の理由の1つとなっているようです。劣悪な環境での密輸という手段での渡航となるため、ときには沈没し多くの死者が出ることもあります。
Situation Mediterranean Situation(UNHCR)
シリア難民はどこにいった?
ヨーロッパへの道を閉ざされ、行き場を失った多くのシリア難民たち。彼らはどこに向かったのでしょうか。先日アルジャジーラ(中東の報道機関)からその資料が発表されました。
その内容によると、難民として登録されている(REGISTERED REFUGEES)だけで500万人を越え、その内訳は以下のようになっています。
- トルコ:約300万人
- レバノン:約100万人
- ヨルダン:約70万人
- イラク:約20万人
- エジプト:約10万人
- 北アフリカ:約3万人
シリアの北にあるトルコ、続いてシリアの西に位置するレバノン、そして南側のヨルダンと、近隣諸国へと流れています。難民として保護されているとはいえ、施設によっては劣悪な環境での生活を強いられるのです。
また、亡命希望者(ASYLUM SEEKERS)はヨーロッパとアメリカ、カナダを合わせて約100万になります。
- ドイツ:約50万人
- スウェーデン:約10万人
- その他ヨーロッパ:約40万人
- アメリカ・カナダ:約6万人
彼らは亡命が認められるまではそれぞれの国で保護されますが、それまでの長い時間をどこの国にも所属していない中途半端な状態のまま過ごさなければなりません。
Where are the Syrian refugees?(Al Jazeera)
シリアについて考える
今年2月のことですが、立教大学・池袋キャンバスで『シリア・モナムール』という映画の上映とシリアの生の状況を聴ける講演会があり参加しました。そのときの模様がYouTubeで配信されていますので、ご興味ある方は見て頂けたらと思います。
本当のシリアの姿を知ることができます。
【動画】シリアに今向き合う:「シリア 戦火と愛の慟哭…その狭間を生きる命『シリア・モナムール』上映会・講演会」|「ホワイトヘルメット」隊員によるアレッポからの現地中継
おわりに
一旦はISの弱体化により終焉を迎えるかのように見えたシリア情勢でしたが、未だに納まる気配が見えません。
解決のカギとなるはずのEUは崩壊の危機を迎え、アメリカは国策の転換により何をするのかわかりません。その間隙をつくように繰り返されるISからの様々な攻撃。
シリアに笑顔が戻るのはいつになるのでしょう。
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