5月26日から世界ラリークロス選手権(WorldRX)第5戦リッデンヒル(イギリス)が開催されました。
ラリークロスの聖地で行われる最後の戦いを振り返ってみます。
第5戦の舞台はイギリス、リッデンヒルサーキット
リッデンヒルサーキットはラリークロス誕生の地として知られる伝統のコース。しかし今季を最後に舞台をシルバーストーンに移すことが決定しており、これが歴史に名を刻む最後のチャンスになってしまうかもしれません。
コースの特徴は直線と大きな弧を描くコーナーの組み合わせ。テクニカルなレイアウトではありませんが、それだけに実力と、1コーナーに設けられたジョーカーラップの戦略が勝敗を大きく左右します。
WORLD RX OF GREAT BRITAIN(FIA World Rallycross Championship)
【動画】伝統のリッデンヒルをケビン・エリクソン選手と共に
予選~セミファイナル:今回も絶好調!フォルクスワーゲン勢が圧倒!
前戦メテに引き続き、フォルクスワーゲン勢が好調。ペター・ソルベルグ選手、ヨハン・クリストファーソン選手(共にTeam PSRX Volkswagen Sweden:ポロ GTI)がQ1からQ3までをワンツー体制を崩さないままに連勝、Q4こそティミー・ハンセン選手(Team Peugeot-Hansen:プジョー 208)がトップを奪いましたが、それでも2、3位を獲りまさに圧倒的な速さ。
2台の強さはセミファイナルでも他を寄せ付けず、ファイナルのフロントローをも独占。他にセミファイナル1からはアンドレアス・バックラッド選手(Team Hoonigan Racing Division:フォード フォーカス RS)とハンセン選手、セミファイナル2からはセバスチャン・ローブ選手(Team Peugeot-Hansen:プジョー 208)、そしてマティアス・エクストローム選手(Team EKS:アウディS1)が進出し、決勝に挑みます。
【動画】予選Q1ハイライト
【動画】予選Q2ハイライト
決勝:一瞬だって隙がない!圧倒的勝利!
全車綺麗な飛び出しで順位変動もなく1コーナーへ。アウト側からのスタートとなったクリストファーソン選手とローブ選手は少しでもタイムロスを減らすためジョーカーラップに飛び込みます。
隊列に乱れがないと見るや、2週目には先頭を走るソルベルグ選手がジョーカーラップを選択。まるで計画していたかのようにクリストファーソン選手の前に出て、フォルクスワーゲンがガッチリ編隊を組みます。
ジョーカーラップに入るまでにソルベルグ選手らとの差を詰めておきたいバックラッド選手、エクストローム選手、ハンセン選手の3台でしたが、接近戦になってしまい攻防入り乱れ、逆に後ろから追われる立場に。
3週目にジョーカーラップに入ったハンセン選手はノーマルルートとの合流地点であわやチームメイトのローブ選手と接触というシーンも。その後右リアタイヤをパンクさせスピンし戦線離脱となりました。
残る勝負所はバックラッド選手とエクストローム選手がジョーカーラップを抜けた先で前に出られるかの一点のみ。でもバックラッド選手に比べ挙動が落ち着かないエクストローム選手のバックミラーには、すでにソルベルグ選手のマシンの影が。
プレッシャーに耐えかねたのか、ここでジョーカーラップに逃げ込むエクストローム選手。ソルベルグ選手どころか4位を走るローブ選手の後ろにまでポジションを落としてしまいました。
しかしここから魅せるエクストローム選手。全戦の再現のようにローブ選手とのガチバトルを挑みます。ですが今回はローブ選手の方が上、しかもパンクに泣かされ引き離されてしまいます。
バックラッド選手が最終ラップでジョーカーラップに向かい、戻ってきたところはフォルクスワーゲン2台が通り過ぎた後でした。予選から決勝まで鬼のような強さを見せたソルベルグ選手が今季初優勝、2位にはクリストファーソン選手が入りフォルクスワーゲンチームのワンツーフィニッシュとなりました。
最終結果は以下をご覧ください。
Live Qualifying Results – Supercar – Lydden Hill(FIA World Rallycross Championship)
【動画】決勝ハイライト
感想と考察
どのチームもスタートを研究しているようで、昨年のようにスタートダッシュだけでは大きなアドバンテージを得られなくなりました。決勝だけでなく予選から全マシン横並びの出だしが多くなっています。
そんな状況でもフォルクスワーゲンの2台が突出して速いのは、レースに対してチームとして戦略がきっちりと組まれているからではないでしょうか。例えばジョーカーラップに入るタイミングも迷いが感じられず、かつ一番効果的なタイミングで選択しているように見えます。レースが始まる前にかなり入念に作戦を立てていなければ、あれだけ逡巡することのない選択は難しいでしょう。そのあたりをドライバーの采配だけではなく、チーム全体で考えているように見受けられます。
加えて2台体制によるチームの連携がうまくできています。おそらくソルベルグ選手は出し惜しみすることなくクリストファーソン選手にアドバイスを与えており、彼もみるみる成長しているのをしっかりと感じられます。ついに総合首位にまで躍り出てしまいました。
エクストローム選手率いるチームEKSも同じ2台体制ですが、ヘイキネン選手が今季は不調のためフォルクスワーゲンほどの戦略を立て辛くなっています。プジョーのローブ選手とハンセン選手も個々で戦っているような気配があり、やはりチームとしては弱いですね。
作戦強かったアウディだけではなくフォルクスワーゲンもワークスとして勝負を挑み、ドライバーズチャンピオンシップだけでなくマニファクチャラータイトルも視野に入れたプランを立てているようですし、これからメジャーなレースに変わっていくために草レースのレベルから抜け出そうとしている過渡期を迎えているのでしょう。
しかし、レースのレベルが上がっていくのは嬉しいのですが、F1と同じように資金のあるチームだけが強いというのは少々悩ましいところ。もう少しカオスなバトルというのも見たいものですね。
そういえばバックラッド選手がようやく復調の兆し。不運が続いていただけに、優勝こそ逃しましたが久しぶりの表彰台を今後の活躍の糧にして、もっとチャンピオン争いを盛り上げてもらいたいと思います。彼にもケン・ブロック選手という偉大なパートナーがいますから、2人の力を活かせるようなチームとしての戦略を期待しましょう。
おわりに
今回で最後の開催となってしまったリッデンヒルですが、7月27日に発売予定の「DiRT 4」にコースが収録されているようです。ラリークロスドライバーたちの代わりにゲームの中でガンガン走ってあげましょう。
次回第6戦は6月9日、ノルウェーのヘルサーキットで開催されます。お楽しみに!
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