世界ラリー選手権 第6戦ラリー・ポルトガルは、これまでと風向きが大きく変わったと感じられる一戦でした。
熱狂的なファンに囲まれながらの戦いを振り返ってみます。
Mスポーツ・ワールドラリーチーム(M-SPORT WORLD RALLY TEAM)
マシン:フォード フィエスタ WRC(FORD FIESTA WRC)
セバスチャン・オジエ選手/ジュリアン・イングラシア選手:優勝
オット・タナク選手/マルティン・ヤルベオヤ選手:4位
エルフィン・エバンス選手/ダニエル・バリット選手:6位
序盤は先頭走者としての不利もあってか目立ったタイムを出せてはいませんでしたが、後半に入ると持ち前の強さを発揮して、昨年の必勝パターンだった後続とのタイムをコントロールして相手の戦意を喪失させる作戦を決めての完勝でした。
そういえば少し前のニュースでニューマシンを投入って言ってましたけど、そのせいか今回のオジエ選手、ハンドリングのバタバタしていたところもなくなり、非常に昨年のドライビングスタイルに近づいているように見えました。サスペンションの動きも良く、しっかりと路面をつかんでいるのでトラクションもかかりやすくなっているみたいです。これはもしかすると、ついに王者覚醒のときを迎えたのかもしれません。
ただ今回に限って言えば、ミスさえしなければタナク選手が前にいた可能性もありますし、真価が問われるのは次のイタリア戦になりそうです。
エバンス選手もしっかり完走。DMACKタイヤはミシュランとの差をかなり詰めてきているようなので、来期以降プライベートチームだけに留まらず、より多くのチームからお声がかかりそうです。
M-Sport builds new WRC car for points leader Ogier(motorsport.com)
(Mスポーツ、オジエ選手のためにニューマシンを投入)
ヒュンダイ・モータースポーツ(HYUNDAI MOTORSPORT)
マシン:ヒュンダイ i20 クーペ WRC((HYUNDAI i20 COUPE WRC)
ティエリー・ヌービル選手/ニコラ・ジルソウル選手:2位
ダニエル・ソルド選手/マルク・マルティ選手:3位
ヘイデン・パッドン選手/セブ・マーシャル選手:29位
今季最速の男とはいえ覚醒したオジエ選手には一歩及ばず、タイム以上の差をつけられた2位フィニッシュとなったヌービル選手。今後どこまで本気のオジエ選手に立ち向かえるかによって、今年はどうあれ来季以降のチャンピオン候補として認められる存在になるか見えてくるでしょう。
一緒に表彰台に上ったソルド選手は、上位2人の速さについていけないと認めながらも最後まで粘りの走りで3位フィニッシュ。この人、本当に嬉しそうな顔を見るとこっちまで嬉しくなります。
パッドン選手は、一時はトップを獲りながらも謎のエンジントラブルで残念な結果に。最終日は元気に疾走していましたが、次戦までに原因をつかんでリカバリーできるのでしょうか?セブ・マーシャル選手とのコンビによる活躍もおあずけになってしまいました。
全体的にマシンの挙動はMスポーツよりスムーズに見えました。ヌービル選手のジャンプが相変わらず低くて、着地のインパクトなどを考えてあえて飛距離を抑えているのか、それとも空力的にものすごいダウンフォースが効いてるのか(多分両方)わかりませんが、すっごい地味。
シトロエン・トタル・アブダビ・ワールドラリーチーム(CITROËN TOTAL ABU DHABI WRT)
マシン:シトロエン C3 WRC(Citroën C3 WRC)
クレイグ・ブリーン選手/スコット・マーチン選手:5位
ステファン・ルフェーブル選手/ギャビン・モロー選手:13位
カリッド・アルカシミ選手/クリス・パターソン選手:17位
クリス・ミーク選手/ポール・ネイグル選手:18位
予期せずブリーン選手がチームの希望となってしまいました。堅実に5位フィニッシュ。これで6戦(うち1戦は出場せず)で4度の5位とヘンに安定した能力を発揮しています。ルフェーブル選手は13位。うーん。
今季初出場のアルカシミ選手は、かつてペター・ソルベルグ選手のコ・ドライバーだったパターソン選手と共に17位の成績。それに次ぐのがミーク選手。せっかくトップ争いを繰り広げていたのに、路肩の置石を破壊するほど激しくヒットして台無しにしてしまいました。
彼のスピードは魅力的なのでミーク選手をクビにしろ!とは言いませんが、マシンの経験値を上げること、そしてチーム戦での成績を考えると、早いうちにアンドレアス・ミケルセン選手の獲得をお勧めします。
トヨタ・ガズー・レーシング WRC(TOYOTA GAZOO Racing WRC)
マシン:トヨタ ヤリスWRC
ユホ・ハンニネン選手/カイ・リンドストローム選手:7位
ヤリ‐マティ・ラトバラ選手/ミーカ・アンティラ選手:9位
エサペッカ・ラッピ選手/ヤンネ・フェルム 選手:10位
なんと序盤はトップに躍り出たラトバラ選手。しかし脆くも優勝の夢は前半の横転で消えてしまいました。せっかくグラベルでも戦える速さを手に入れたというのに致命的なミス。
レッドブルTVにゲスト出演していたカルロス・サインツさんも、こういうところが残念だなぁとコメントしていました。
しかし最後まで走り続け、トップ10圏内にまで返り咲き、最後は9位フィニッシュとチームのエースとして最低限の仕事を果たしてくれたことには感謝としか言いようがありません。しかも体調を崩して病院行ったりしてのこの成績です。優勝を逃したことを責めたいのに責められないじゃないか!
ハンニネン選手もWRCデビュー戦のラッピ選手も入賞して、よく考えたら初年度でこの安定感ってすごくない?今はチームとしての成長を優先させているとしたら、すっごく成功しているんだと思います。隙あらば優勝する力もあるんだし。
映像を見ていると、ヤリスWRCは何度か跳ね上がるようなシーンが見受けられました。車高も低いような気がするし、サスペンションの性能を活かしきれていないような感じがします。おかげでスピードは出せたけど安定性を失ってしまったのではないのでしょうかね。
その他
今回も無事参戦できたマッズ・オストベルグ選手は今回も大暴れ。ステージ1でいきなりトップタイム、その後は初のDMACKタイヤでセットアップに苦しむも最終日にはお祭り男の血が騒ぎだし、名物コース、ファフェのステージでは華麗に大ジャーンプ!観客を大いに沸かせました。本人も満足したのか大笑いしながらのフィニッシュです。
去年は地味で堅実な走りでしたが、今年は財政的に苦しそうながらラリーを心から楽しんでるみたい。来年はレギュラーシート獲れると良いですね。そして今年もまだまだ魅せてくださいね。
WRCの下位カテゴリ、WRC2ではアンドレアス・ミケルセン選手が大暴れ。しかし最終ステージでまさかのリタイヤとなっています。この人、マシンが遅くてもう飽きてると思うので誰かWRCカテゴリのシート用意してあげてください。今ならもれなくチャンピオンシップポイント付いてきます(かなりの確率で)。
ハイライト動画集
【動画】ステージ1 – 4 ハイライト
【動画】ステージ5 – 6 ハイライト
【動画】ステージ10 – 12 ハイライト
【動画】ステージ13 – 15 ハイライト
【動画】ステージ16 – 17 ハイライト
【動画】ステージ18 – 19 ハイライト
【動画】ステージ19 パワーステージ ハイライト
【動画】オストベルグ選手の大ジャンプ!
おわりに
今回のレッドブルTVにはラリーレジェンドのカルロス・サインツさんが出演、コメントだけでなくプジョーのラリーマシンを駆りダイナミックな走りまで披露してくれました。毎回意外な人が登場するので目が離せません。
第7戦ラリー・イタリア・サルディニアは6月8日(木)開催です。
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【WRC2017】世界ラリー選手権の競技ルールについて簡単に説明します(その1)
【WRC2017】世界ラリー選手権の競技ルールについて簡単に説明します(その2)
(画像の出典:TOYOTA GAZOO Racing)