【映画感想】空(カラ)の味/それでも生きていいんだよ(ネタバレなし)

空(から)の味

2016年の第10回田辺・弁慶映画祭で見事4冠に輝いた『空(カラ)の味』をようやく観賞することができました。

大きな評価に値する力作、まだ観ていない人に興味を持ってもらえるよう、作品についてサラリと感想を書きました。

あらすじ

仲の良い家族と友人たちに囲まれ、不自由のない毎日を送っていた高校生の聡子(堀 春菜)は、とあるきっかけから摂食障害になってしまい、食べては吐いてを繰り返す毎日に苦しみ始めます。

衝動を抑えられず、貪るように食べ物に手を伸ばす自分の醜い姿に苦しみ、やがて家族の優しさも友だちの声も届かなくなっていく聡子。

しかしある日、追い詰められてく毎日の中でマキ(林田 沙希絵)という1人の女性と偶然出会い、運命に変化が訪れるのでした。

【動画】苦悩するヒロインの行く末は…!映画『空(カラ)の味』予告編

 

感想

まるで心理ホラー

観ている途中の感想は、怖いの一言でした。幸せな毎日が続いていたはずなのに、何かが少し、違う。それはいつも一緒にいる人たちにとっては見えないくらい些細なことなんでしょうが、どんどんと悪い方に向かっている不安を掻き立てられ、落ち着いて見ていられませんでした。

後半、希望の光が見えたのかな?と思わせておきながら、やっぱり少しずつ異変に気づかされるという恐怖。ぬるいホラー映画なんかよりこの作品の方が何倍もゾワゾワしました。

日常に潜む魔物

主人公が陥ってしまうのは摂食障害という、耳にしたことはあってもどんな症状に苦しんでいるのか最初はピンときませんでしたが、映像で目の当たりにすると、その凄まじさに驚きました。映画が終わって誰とも会わず真っ直ぐ家に帰っていたら、多分数日は食べ物を見るたびに吐きそうになっていたと思います(幸いなことに1人じゃなかったので美味しくご飯食べられました)。

摂食障害はカロリーや栄養による体型への影響だけでなく、精神的にも大きなダメージを与えます。自分の欲求を抑えきれない苦しみや罪悪感、他人にどう伝えたらいいのかわからないもどかしさ。

それに、他人とは違う自分への嫌悪感。

その描写が、叫び声を上げたくなるくらいグサリ、グサリと胸を刺してきます。

それでも、生きていいんだよ

物語が後半に入り、心も身体も限界を迎えたとき、マキという女性と出会います。出会ったばかりなのに、不思議と心を開いてしまう聡子。

彼女の告白は、まるで自分の心の奥にしまってあった言葉のようで、1つひとつのセリフにうん、うん、と心の中で頷きながら聞き入ってしまいました。それを受け止めるマキの表情と行動が、愛しくて愛しくて。

そして、決して見捨てようとはしなかった家族の愛情。映画だからハッピーエンドといきたいところですが、そうは簡単にいきません。聡子がたどり着いた場所を、ぜひあなたの目で見ていただきたいと思います。

先陣を切って泣き出す監督

やっと映画も終わって、気持ちも落ち着いて、明るくなったところで予定になかった監督さんと出演者さんたちの挨拶が始まりました。

最初にマイクを持ったのは塚田万理奈監督。話し始めて3秒で泣き出します。ようやく冷静になった直後なのに今度はもらい泣きですよ。完全に不意をつかれましたよ!上映中も上映後も完全に塚田監督にもてあそばれてしまいました。とっても素敵な方ですが性格はきっとドSだと確信しました。

みなさんのお話を聞いていて感じたのは、監督、出演者、そして制作メンバー全員が心の底からこの映画が大好きで、できることを出し切って、想いをみんなで紡いで完成した作品なのだなぁという映画愛。

見方によっては粗削りに映るかもしれませんが、そんな荒々しさも含めて1つの作品として成り立っている、そんな気がしました。

 

おわりに

ご縁があってお知り合いになった方が出演されるということで応援しようと劇場に向かったのですが、観終わってみるとそんなひいき目は関係なく、この作品に関わった全員に感謝の気持ちでいっぱいです。

クルマが空からドカドカ降ってくるような大作も大好きですが、こんな風に心に触れてくる映画も絶対に必要です。なくなってしまわないように、1人でも多くの方の目に留まるように、これからも応援していこうと思います。

テアトル新宿では5月の11、13~19日まで、その後は大阪へと場所を変え上映が続きます。都内でなくとも、もしお近くの劇場で観賞できる機会がありましたら是非足を運んでみてくださいね。

(C)2016「空(カラ)の味」