2017年4月1日にメキシコの首都メキシコシティでフォーミュラE 2016-2017シーズンの第4戦が開催されました。今期のベストレースになりそうな、運と実力が混じり合った激アツバトル。
ここまで影を潜めていたあの選手がついに戻ってきました。
コース:スタート直後からトリッキー。一瞬の油断が命取り
全長2.1km、17のコーナーを持つコースは、標高2,500mを超えるフォーミュラEでもっとも高い場所にあるサーキット。市街地ではなくレース専用のコースを走るシーズン12戦の中で唯一の場所でもあります。
昨年はルーカス・ディ・グラッシ選手がトップでフィニッシュするも車両規定違反で失格となった因縁の地。今年はその呪縛を振り払えるでしょうか。
スタート直後に複雑な形状の1コーナーを迎えるトリッキーな出だしから、強いGのかかる高速コーナーへ。その先には位置取りが難しいテクニカルなコーナー群が待ち構えています。そして最終コーナーから続く長い直線もオーバーテイクの大きなキーポイント。
オーバルコースをベースにしながらも油断のできない複雑なレイアウトは、いろんなドラマを演出する舞台となるでしょう。
【動画】メキシコシティ コースレイアウト
【動画】結構本気だよね?BMW i8による超高速コースガイド
予選:隠れた実力者たちの共演
予選
3連勝と波に乗るセバスチャン・ブエミ選手(ルノーe.ダムス)はタイムが振るわず苦い顔。ライバルのディ・グラッシ選手(ABTシェフラー アウディスポーツ)は更に遅く、それぞれ10位、18位で予選を終えました。
代わりに気合が入っていたのはダニエル・アプト選手(ABTシェフラー アウディスポーツ)、そしてオリバー・ターベイ選手(ネクストEVニオ)と普段はセカンドドライバー扱いの実力者たち。
元WTCC王者ホセ・マリア・ロペス選手(DSヴァージン レーシング)もようやく感覚を掴んだのか3番手タイムとなり、以下マーロ・エンゲル選手(ヴェンチュリー フォーミュラE)、ジャン・エリック・ベルニュ選手(テチーター)とスーパーポール進出です。
ロイック・デュバル選手(ファラデーフューチャー ドラゴンレーシング)がクラッシュした瞬間を見ると、どうやらかなり滑りやすいコンディションのようです。
スーパーポール
素晴らしい走りを見せるエンゲル選手。初のスーパーポール進出ですが、そうは思えない速さで暫定トップに立ちます。しかし、彼を更に上回る猛者たち。アプト選手が圧巻のタイムでポールポジションをゲット、ターベイ選手がフロントローを手にしました。
ところが予選後の車両点検でタイヤに規制違反がありアプト選手はグリッド降格。この日誕生日を迎えたターベイ選手にとって思いがけないプレゼントとなりました。
ABTアウディにとっては2年連続の悲劇。こういうのって続いちゃうんですね。
【動画】予選ハイライト
決勝:運と実力、全部味方につけての大逆転!
前半
ポールポジションのターベイ選手、2番手のロペス選手らが順調なスタートでレースをリードします。
後方ではディ・グラッシ選手は追突を受けてリアウィングを破損。いきなり不吉な出だしとなります。当たりの激しい序盤で他のマシンも接触が続き、3周目にセーフティーカーが入ったタイミングでピットイン。なんとか少ないロスでバトルに復帰できました。
4周目から仕切り直してようやく落ち着いた流れに。ここで徐々に順位を上げてくるのはブエミ選手。10周目あたりには5位まで浮上です。
13周目に入ると優勝争いに影響する悲劇が起こります。ここまで先頭を走っていたターベイ選手がまさかのスローダウン。無線で「動かなくなったら再起動してみて」というピットからの声が聞こえます。Windowsかよ!そして直らないし。Windowsかよ!
またまた17周目にセーフティーカーが入り再度仕切り直しへ。ここでディ・グラッシ選手、ジェローム・ダンブロシオ選手(ファラデーフューチャー ドラゴンレーシング)らはマシン交換を決行。残り28周を走りきれるか、ギリギリのギャンブル作戦です。
後半
27周目頃になり全車ピットイン作業を終えて見ると、なんとディ・グラッシ選手が30秒以上のマージンを築きトップに立っていました!他のマシンがセーフティーカーによってペースを落としている中での早めのマシン交換が功を奏し、超ショートカット作戦が見事に決まった瞬間でした。しかしほぼフル充電のライバルたちに比べ、すでに3割以上を失った状態。節約走行が鍵を握ります。
30周前後からは1つでも上位を狙おうと各地でバトルが勃発。前方ではロペス選手とベルニュ選手が絡み、後方ではハイドフェルト選手とローゼンクビスト選手(共にマヒンドラ レーシング)のチーム内バトルが起こり、あわや接触?という自体に。そんな中スルリと順位を上げていくのがサム・バード選手(DSヴァージン レーシング)。さすがレース巧者。
ロペス選手は頭に血が上ったのか痛恨のスピン。なぜか巻き込まれるブエミ選手。1コーナーの甘い罠に誘われて誰も彼もがオーバーテイクを仕掛けようと必死。
終盤ではベルニュ選手とバード選手が3位争いを賭けた壮絶なバトルが始まります。ベルニュ選手はアグレッシブ、バード選手は大人しめなスタイルなのですが、チームメイトだった昨年から実力が拮抗し過ぎてていつもこんな感じ。争っているときは挙動まで似てくるので不思議です。この勢いは前を行くダンブロシオ選手まで巻き込んで三つ巴の戦いに。
ダンブロシオ選手はエネルギーを使い果たして脱落していきます。同じタイミングでマシン交換したディ・グラッシ選手は彼のおかげで巻き込まれずに済み、ギリギリ残り1パーセントでフィニッシュ!待ちに待った今期初優勝を手にしました。
【動画】決勝ハイライト
【動画】決勝ハイライト(約40分拡大版)
順位結果
1位:ルーカス・ディ・グラッシ選手(ABTシェフラー アウディスポーツ)
2位:ジャン-エリック・ベルニュ選手(テチーター)
3位:サム・バード選手(DSヴァージン レーシング)
4位:ミッチ・エバンス選手(パナソニック ジャガーレーシング)
5位:ニコラス・プロスト選手(ルノー e.ダムス)
6位:ホセ・マリア・ロペス選手(DSヴァージン レーシング)
7位:ダニエル・アプト選手(ABTシェフラー アウディスポーツ)
8位:アダム・キャロル選手(パナソニック ジャガーレーシング)
9位:ネルソン・ピケJr.選手(ネクストEVニオ)
10位:エステバン・グティエレス(テチーター)
詳しい結果は以下をご覧ください。
第4戦メキシコシティ(メキシコ)リザルト(テレビ朝日)
感想
ディ・グラッシ選手の気合の入った作戦が見事功を奏して大逆転。前半はできるだけ引っ張って後半にエネルギーを多く残すのが今までのセオリーでしたが、戦略によってはそれが正解とは限らないことを結果を持って示した形となりました。
ブエミ選手の3連覇に目を奪われがちですが、ディ・グラッシ選手も我慢を重ねており今回の優勝で2人の差はわずか5ポイント。この2人が中心になりますが、まだまだチャンピオン争いは続きそうです。
今回はバトルの多い展開であったことも印象深く、今まで見てきた中でもかなり激しい一戦でした。特に終盤のベルニュ選手とバード選手の火花散るデッド・ヒートは見てるこっちがハラハラするほど。実力が近いから余計面白いです。
ブエミ選手にとっては残念な結果になってしまいましたが、今までが好調過ぎたので、もう一度気を引き締めてレースに挑んでもらいたいと思います。マシンが一番速いのは誰もが認めるところですが、それだけでは勝てないってことですね〜。だから楽しいフォーミュラE。
おわりに
このままブエミ選手の独走も予想していたのですが、流れが変わって次戦も楽しみになりました。
第5戦モンテカルロ(モナコ)は5月13日(土)の開催です。お楽しみに!
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画像の出典:Formula E