【読書感想】この世界の片隅に/年表と一緒に読む、すずさんの物語

2017年3月2日

この世界の片隅に

映画『この世界の片隅に』を見てから気になっていた原作コミックの電子版がセールになっていたことを知り、ついまとめ買いしてしまいました。

映画では語られなかったストーリーにも心を奪われましたが、何よりも、あの頃を知らなすぎる自分を知ることができました。

すずさんの生きていた時代を、世界史の年表と軽く重ね合わせてみたいと思います。

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<上>昭和9年(1934年)〜

物語のスタートは昭和9年。まだ幼いすずさんがお使いに出かける話から始まります。日本国内にはまだ戦争の影は届いておらず、作中で描かれている情景も穏やかに見えます。

しかしヨーロッパでは争いへの歩みをすでに始めていました。1年前から実験を握っていたヒトラーによりドイツは後戻りできない戦いへの道を踏み出します。その影響は近隣諸国にも広がり、2年後にはスペインの内戦が始まります。その怒りを表現したかのような絵画「ゲルニカ」が生まれたきっかけにもなりました。

翌年以降次々と他国に戦争を仕掛け、この年に結んだポーランドとの不可侵条約をドイツが5年後に破棄してポーランドに侵攻し、ついに第二次世界対戦のきっかけとなるのでした。

 

<中>昭和19年(1944年)〜

この頃になると戦況は過酷を極めます。連合軍とドイツの戦いが激しさを増し、ヒトラーの勢いに陰りが見え始めました。海外で戦う日本軍は次々と玉砕し、東京など都市圏で集団疎開が始まります。

6月にはついにB-29による北九州への爆撃が始まり、戦火はついに普通に暮らす人々の生活を脅かすようになっていきます。

配給も減り、夜も眠れず、それでも生きて行くすずさんたちの苦労と不安はどれほどのものだったのでしょう。物語にも、いつもどおり振る舞いながらも少しずつ壊れていく日常が淡々と描かれており、かえって不気味さを感じます。空一面の爆撃機。それはどんな景色だったのでしょうか。

ささやかな毎日の中に堂々と入り込む空襲や不発弾の恐怖。すずさんの暮らす呉にも訪れ、11月にはついに東京への攻撃も始まります。

戦争が日本全体を黒く包み込んでいくのでした。

 

<下>昭和20年(1945年)〜

神がかり的な強さを誇ったドイツ軍も、連合軍を前にしてついに崩れるときが来ました。首都の陥落、そしてヒトラーの自害が続き、5月に無条件降伏。終焉を迎えます。

その逆風に日本軍も追い詰められていきます。3月には東京と大阪への大空襲、最終防衛拠点の硫黄島で玉砕。空襲が当たり前となったすずさんたちの生活にも、身を引き裂くような悲劇が訪れるのでした。

5月には総攻撃にうって出るものの、運命の8月を迎えます。

終戦を迎え、何のために戦ってきたのかという無念さと、ようやく訪れた静けさに安堵する人々の姿。他の戦時中を描いた作品が、その凄惨さばかりを強調して見えなくなっていた、それでも生きていく人間のしたたかさを初めて感じました。

 

おわりに

この作品は、どんな苦しい戦争の中の毎日にだって、おはようがあっておやすみがあって、笑ったり泣いたり怒ったりする、普通の暮らしがあるのだと教えてくれました。

何気ない平和な1日が、どれだけ幸せなものか。そう考えるともっと大切に日々を過ごさなければならないのだと思います。

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

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