『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』がもうすぐ公開になります。
人生を見失う瞬間の虚無感や、知らなかった本当の自分に出会うための過程などを、開いた口が塞がらなくなるくらいのビックリな演出と心温まる人間同士の心の交流を通して感じられる「優しいジェットコースター」のような作品でした。
試写会で鑑賞した時に感じたことを、公開前に振り返ってみます。
あらすじ
突然訪れた最愛の人の死。それは金融のエリートコースを淡々と歩み続けていたディヴィス(ジェイク・ギレンホール)にとって、全く想像していなかった出来事でした。
しかし、愛していたはずの妻が亡くなっても、悲しいという感情が湧き上がってくることはありません。病院の自動販売機で買おうとしたチョコレートが、お金を入れても出てこなかったこと。そんな些細なことに対する苛立ちを感じることはできるのに。
思いつきで書いた自販機の会社へのクレームの手紙。でもそこに綴られていたのは、彼が誰にも打ち明けなかった本当の気持ち。手紙を受け取った苦情係の女性の心にその文章はしっかりと届き、二人の出会いは思いもよらない心の開放へと向かっていくのでした。
【動画】ジェイク・ギレンホール主演『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』予告編
本当の、自分の心を探す旅
大切な人を失った時、人は混乱し、自分自身が見えなくなり、当時を思い出そうとしても思い出せなかったり通常とは異なる精神状態になってしまいます。
この作品の主人公は、悲しいという感情が湧いてこないという一種異様な感覚と、悲しくないのは妻を愛していなかったからではないのか?という冷静な感覚の間で思い悩むことになるのです。
でもさ、誰も主人公にしっかりと声をかけてあげない。それはショックを受けてるからなんだよとか一時的なものだよとか言ってあげようよ。友達じゃなくても。ウォール街の人たちって実際こんな感じなんですかね。
まぁ、そんなこんなで彼は妻が死んだ日に自動販売機にお金を入れたけど商品出てこなかった、というクレームの手紙にしか本当の気持ちを吐き出せず、その気持ちを偶然受け取った苦情係との不思議な交流が始まり、本当の自分を探す毎日が始まるのです。
一度、全部壊してみる
この作品の原題は『Demolition』、破壊とか取り壊しとか物騒な意味合いの言葉です。
一見静かな人間ドラマですが、原題どおりに結構ワイルドでした。ジェイク・ギレンホールさんが真顔で破壊活動を始めたり、奇声を上げながら壁を打ち抜いたりと、よく考えたら絶対近づきたくないです。
そんな物理的破壊だけでなく、社会にはびこる暗黙のルールを破壊するシーンも爽快でした。ヘッドホンしながら街中を人目を気にせず踊りまくるとか。
そんなこと現実でできるわけねーだろ!と思いつつも、羨ましいという気持ちもあったのも事実です。
自由の代償
しかし、自由にはいつだって代償が付きまといます。
現代社会が必要とするのは、自由を犠牲にしてルールに従って生きることです。素直な気持ちを持っていても相手には伝わらないかもしれないし、理解してもらえても受け入れてもらえるかは別の問題です。
ただ自由になればいい。
そんな都合の良い理想の言葉を示すのではなく、その生き方には責任が伴うことも、この作品には込められています。人とのつながりを断ってしまえば自分の好きにできるけど、きっとそこに幸せはないでしょうし。
主人公のディヴィスは、思い悩み、巡り巡ってもう一度自分に問いかけます。本当に妻を愛していたのだろうか。その答えと、たどり着くまでの過程を、ぜひ劇場で楽しんでもらえたらと思います。
おわりに
邦題が『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』になっちゃってますが、どうしてこうなったのかが気になります。劇中でも少しだけ登場するんですが、なんとなくフィーリングで付けました!みたいな気もします。
個人的には嫌いじゃないんですけどね。
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(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation, Demolition Movie, LLC and TSG Entertainment Finance
コメント
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」
邦題は捻りに捻ったタイトル。「晴れた日は君を…」の「キミ」は、裏側から見て妻のことにもなるし、妻が自分を、のことにもなる。しかし内容は原題の「DEMOLITION」そのものである。突然に妻を亡くした男が、妻を亡くしたというのに涙さえこぼれず、喪失感さえそれとは判らず、周りのものを全て破壊することによって何かを得ようとする物語。この作品に対して高い評価をする人はきっと多いのだと思う。ジェイク・ギレンホールはすごく上手かったし。だが、私は…。一言で言えば不愉快な作品だった。ディヴィス(ジェイク・ギレンホ…