画像の出典: 映画.com
先日coco.toさんの試写会で『アイ・イン・ザ・スカイ』を鑑賞してきました。現代らしい情報戦の不気味さ、そして人間としての葛藤が実に素晴らしく描かれ、激しい戦闘シーンは少ないのに最初から最後まで緊張しっぱなしの作品でした。これが現実なのかと思うと背筋が凍ります。
あらすじ
舞台はアフリカのケニア。イギリス諜報機関はドローンを始めとする電子兵器を駆使し、テロリストたちの拠点を探り当てます。今まさに自爆テロに向けて準備が行われている建物のすぐ隣には全く罪のない少女の姿。
作戦を指揮するパウエル大佐(ヘレン・ミレン)は、テロリストたちに対する攻撃を主張。ベンソン中将(アラン・リックマン)と協力してドローンからのミサイル発射の準備を進めますが、犠牲となる命の重さ、一国家の枠を超えた思惑、そして刻一刻と変化する状況に振り回され、彼らは次第に混乱の渦に呑まれていくことになるのでした。
【動画】『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』予告編
血の通わない「現代の戦争」の姿
この映画が始まってすぐに恐ろしいと感じたのは、イギリス軍が遠隔地から操る無人のドローンが上空をウロウロして、ミサイルまで積んでて、その気になれば味方は誰も傷つくことなる目標をクリア(殲滅)できてしまう異常な光景に対してでした。対するテロリストたちは生身の人間。これって捉え方によっては一方的な虐殺ではないのか?危険な人物だからといって、こんな方法が許されるのだろうか。そんな考えが頭の中をよぎりました。
しかし、一方でボタンを押すだけで任務完了という責任を負わされる兵士たちは、実際にその手で殺すのではないにしろ重いプレッシャーと戦っていたりします。どんなに楽のできる世の中になっても人に残る本能の声。血の通わないような兵器を振りかざす中でもこういった胸を締め付ける心理描写がきちんと表されているところが救いでした。
イギリス制作のためか007シリーズに登場しそうな電子器機も登場しますが、実際そこまで進んでいるの?こえーよ!と言いたくなります。窓の外が気になっちゃいます。
命を選択する「究極の二択」
この映画では最終的に究極の選択に迫られることになります。大義のために小さな犠牲をやむなしとするか、より多くの命を失ってしまう可能性があるとしても命の尊さを貫き通すか。きっとどちらにも正義はあって、だからといってどっちも許されることではなくて。きっと製作者側も己の正義の押し付けではなく鑑賞した人がそれぞれ考えてくれることを期待しているのではないでしょうか。
背負うのは正義ではなく、結果における責任なのだと僕は感じました。どちらが正しいとか、どちらの答えを選ぶとか、迫られる立場になったとき、きっと最後の1秒まで悩み続けることだと思います。
じゃあ「日本」ならどうなるか
こういう映画を観ていると、じゃあ日本で同じシチュエーションがあったらどうなるんだろう?という疑問が思い浮かびます。実際に起こった話ではないのですが、ちょうど今年公開された『シン・ゴジラ』の劇中で似たようなシーンがあって、映画ライターのヒナタカさんが取り上げていました。
『アイ・イン・ザ・スカイ』これもめちゃくちゃ面白い!『シン・ゴジラ』で攻撃するとき残された一般人がいたので、許可を求めるシーンがありましたよね?あれを1時間42分やる映画です。責任逃れから発生するたらい回しは万国共通ですね。 https://t.co/n2jGSfkvXT
— ヒナタカ (@HinatakaJeF) November 29, 2016
他人の命の瀬戸際を前にしての醜態でもあり、命の重さを認めているからこそ簡単には決められないということでもあります。個人的には迷いがあって多少判断が遅れる方が、感情も躊躇もなく決められる人やルールに従って選ぶだけの人による決定よりもまだマシだと思っているので、この時の対応にちょっとホッとしました。
さようなら、アラン・リックマンさん
画像の出典: 映画.com
本作品は、劇中でも重要なポジションに立ち最後まで責任ある立場から目を背けなかったベンソン中将を演じていたアラン・リックマンさんの遺作となってしまいました(声の出演としては『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』が最後の出演)。
ハリー・ポッターシリーズのセブルス・スネイプを始め唯一無二の光を放つ彼の最後の言葉は、役者としてだけではなく本人からのメッセージとして、残酷な未来を生きる僕たちに強い覚悟が必要な時代であることを伝えているかのようでした。
今でもどこかで笑っているような気がするのにね。もう会えないなんて夢見たい。
おわりに
戦争が嫌いといったところで、争いがなくなるわけではありません。日本のように戦争とは無縁でいられる国の方が少ないです。時にはこんな映画を通して、残酷な世界だからこそ見えてくる命の尊さについて考えてみるのも良いのではないでしょうか。
2016年12月23日(金)より公開です!お見逃しなく〜
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