【映画感想】聲の形/もっとうまく、わかりあえればいいのにね(ネタバレなし)

2016年11月18日

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もう随分前になってしまいましたが『聲の形』を観ました。今年はやっぱりレベルが高いのか、普段ならアニメはめったに映画館で観ないのに『君の名は。』に続いての劇場鑑賞となりました。

どちらか選べと言われたら、こっち。記録更新中のヒット作以上に心に残る1本でした。

鑑賞後の感想

『君の名は。』では全力で走った後のスッキリ感を、『シン・ゴジラ』は思いっきり叫んだ後のスッキリ感みたいなのを感じましたが、この作品の場合は、麻酔なしで体内に残る銃弾を取り出した後のスッキリ感?でしょうか。

まだまだ痛みは残り、人生は続く。許されないと思っていた”生きる続き”を許してくれる人たちがいる。決して楽じゃないんだろうけど、いや絶対に険しいばかりの道のりなんだろうけど、それでも、ちゃんと歩くためのスタート地点に立つまでの物語。そんな感じを受けました。

 

障害者との恋愛物語?

原作は未読です。なのでストーリーは知らず、障害者に対するいじめと恋愛?みたいな少し偏ったイメージを持ってしまっていたのですが、実は登場する各人物の人としてのありようを描くための要素の一部という印象でした。

耳が聞こえなくなることの恐ろしさや障害を持つ人に対する無意識な差別を感じる部分もありますが、そんな描写で心をチクチクと刺激しつつも様々な個性と考え方を持つ人間たち同士のつながりがメイン。各キャラクターの個性が全員良くも悪くも強いから、それぞれの心の問題の方がより強く心に残りました。

 

心をえぐる

登場するキャラクターたちはみんな個性がはっきりしていて、良いところもあるし嫌な気持ちにさせる部分持っています。しかもそれが身に覚えのある態度ばかりなんですよね。

悪意なく傷つけられる苦しさや、どんな言葉を投げかけても愛想笑いで返される虚しさ。クラスの中に漂う異物排除の雰囲気。激しいいじめに合うこともなく生きてこられた僕でさえ、したりされたりした数々の行為。それらがギュッと凝縮された展開に息苦しいくらいの罪悪感や既視感を感じて、忘れようとしていた記憶をシャベルでザックザックと掘り返されているようなイヤ〜な気分になります。

だけど目を離せない。惹きつけられる。それも恐ろしいまでの引力で。決して気持ちがよくなる話ではないんですけど、最後には強く心に残ります。気分が悪くなりそうな映画なのに不思議です。どうして?って思う人にこそ観てもらいたいです。

最初は本当に嫌なキャラクターもいたんですが、観終わった後には少し見方が変わっていてみんなを好きになれる気がしました(例外もいるけど)。

 

京アニ恐るべし

なんでこんなに感情移入してしまったのかと考えると、原作や脚本の素晴らしさはもちろんのこと、映像の表現力の高さもあってのことだと思います。ただ綺麗なだけでなく微妙な感情表現表情やちょっとした仕草から伝わってきます。下手すると実写よりもすごいのではないかと。アニメ表現ならフォーカスや画の歪みなんかは実写ではありえないこともできますもんね。京都アニメーションさんはどこまで進化してしまうのでしょうか。

バックで流れる音楽も、意識が途切れる瞬間に聴こえるような浮遊感を感じる音で、不安だけどどこか安心もできるような感覚は物語の内容と相まって夢と現実の境目にいるような不思議な体験を味わえました。

 

花火の中で

最後に、引きずり込まれそうになった瞬間の話を。将也が硝子の家族と花火大会にいったときのことでした。

すっかり映画の世界に入り込んでしまっていた僕は、あの夜の景色を見ながらこう思っていました。

大好きな人と一緒にいられて、素敵な景色を一緒に見ることができるなんて、これ以上ない幸せだなぁって。なのにきっと、またこの世界を壊してしまう。また大好きな人たちを傷つけて、苦しめてしまう。だったら、今この瞬間の幸福な気持ちのまま、全部終わりにできたらいいのに。自分自身もいつかそんな風に思った過去を思い出しながら、まるで彼女になったかのようにそんなことを考えたり。

硝子がどんな気持ちだったのかはわかりませんけど、あのシーンでは硝子と自分を重ねてしまっていたような気がします。

 

おわりに

みんなが分かり合えるようなことは現実ではなかなか難しいのかもしれません。映画でさえうまくいってないし。理解のズレではなく悪意のみで行われるいじめだってありますし、障害者に対しては少し距離を取ってしまいがちだし。でも、そんなあまり考えたくないことを無視してしまうのではなく、心に留めてくれる力を、この作品は持っていました。

多分次に観るのは自宅鑑賞なので、その時は周りを気にせず号泣しながら観ようと思います。あとは原作コミックも読まないと。