8月18日(木)から、世界ラリー選手権(WRC)2016年シーズンの第9戦、ラリー・ドイチェランド(ドイツ)が始まりました。最終日に盛り上がったのは、誰になるか最後までわからない2位争いでした。
DAY2の感想はこちらです。
DAY3:わずか0.1秒差のファイナルバトル!
最終日は59.26km、4ステージ。ブドウ畑の広がる地とアイフェルの丘を走る2コースをリピートします。雨は上がり、路面は乾いた部分の方が多い状態。ドライバーたちは固めのタイヤを多めに選択して最終日に挑みます。
セバスチャン・オジエ選手(フォルクスワーゲン・モータースポーツ:ポロR WRC)はこの日最初のステージでトップから15秒ほど遅れるものの、インタビューでは余裕を見せます(実は焦ってたらしい)。
立ち入り禁止区域に観客が入ってしまったことによりこの日の3ステージ目はキャンセル、ついに最終コースへ。ここはパワーステージとなっており、タイム上位3人にそれぞれ3、2、1ポイントが与えられます。
まずトップに立ったのはヤリ‐マティ・ラトバラ選手(フォルクスワーゲン・モータースポーツ:ポロR WRC)。初日でリタイアした彼としては、ポイントを取るのはここしかありません。しかし彼を上回ってきたのがティエリー・ヌービル選手(ヒュンダイ・モータースポーツ:ヒュンダイ i20 WRC)。ゴール直後にはドイツの隣にある地元ベルギーから応援にやってきたファンからの歓声に迎えられ、ベストを尽くした彼も満足顔。現在2位にいるチームメイトのダニ・ソルド選手を超えるために十分なタイムを叩き出します。
そしてソルド選手のアタックが始まります。テスト中のクラッシュで脊髄を損傷し今回が復帰戦のソルド選手ですが果敢に攻め続けます。ステージタイムはヌービル選手に追いつけませんでしたが、総合タイムでは0.1秒上回り2位を守りきりました。インタビューでそれを知らされると、
「0.1秒差?めっちゃ危なかったやん!(意訳)」
と答える陽気なスペイン人。最後の締めでオジエ選手がステージ3番手のタイムを出し、ヌービル選手、ラトバラ選手、オジエ選手がパワーステージでポイントをゲットしました。
優勝はオジエ選手、7戦ぶりの勝利を手にしました。フォルクスワーゲンチームの監督、ヨースト・カピートさんはこのレースを最後にチームを離れF1マクラーレンのCEOに就任。そして今年生まれた息子に捧げる初勝利となりました。2位はソルド選手が今季初の表彰台、3位はイタリアで優勝後4位2回と惜しいレースが続いたヌービル選手が手にしました。
最終順位
順位は以下の通りです。ペナルティなどにより最終順位は変動する可能性がありますので、確定順位はこちらでご確認ください。
順位 | 選手名 | チーム名 | 車種 | タイム |
1 | セバスチャン・オジエ選手 | Volkswagen Motorsport |
Volkswagen Polo R WRC
|
3:00:26.7 |
2 | ダニ・ソルド選手 | Hyundai Motorsport | Hyundai i20 WRC | +20.3 |
3 | ティエリー・ヌービル選手 | Hyundai Motorsport | Hyundai i20 WRC | +20.4 |
4 | アンドレアス・ミケルセン選手 | Volkswagen Motorsport II | Volkswagen Polo R WRC | +27.2 |
5 | ヘイデン・パッドン選手 | Hyundai Motorsport N | Hyundai i20 WRC | +3:34.8 |
6 | マッズ・オストベルグ選手 | M-Sport World Rally Team | Ford Fiesta RS WRC | +4:31.2 |
7 | エサペッカ・ラッピ選手 | Škoda Motorsport | Skoda Fabia R5 | +8:36.8 |
8 | ポンタス・ティデマンド選手 | Škoda Motorsport II | Skoda Fabia R5 | +8:52.5 |
9 | ヤン・コペッキー選手 | Škoda Motorsport | Skoda Fabia R5 | +9:44.2 |
10 | アルミン・クレマー選手 | BRR Baumschlager Rallye&Racing Team | Skoda Fabia R5 | +10:10.6 |
感想
WRCでは出走順によるハンデがあり、砂利道のコースを走るときは先に走る選手が路上の掃除役になり不利になってしまうという問題を抱えています。そのせいでオジエ選手は今季苦しい戦いが続いていたのですが、ドイツのように舗装路を走るラリーになると本来の力量が結果にきちんと反映され、やはり強い。彼が強すぎて面白くなくなってしまうから今のようなルールになったのだと思いますが、このやり方では他の選手が優勝できたとしても彼のように強くなれないのでは?という気がしました。
そんなオジエ選手を脅かす存在になりつつあるミケルセン選手はラフな走りが目立ってしまいました。どうも優勝してから変化しているような気がするので次のステップに挑んでいるのかもしれませんが、セッティングやブレーキなどに問題があっても我慢して(しかも速く)走れる強みがあるので、そこを失わないようにしてもらいたいです。
今回一番面白かったのは、せっかく頑張ったのに2位まであと0.1秒足りなくて拗ねるヌービル選手と、それを見て爆笑するコ・ドライバージルソウル選手の2人でした。
一方残念なのがフォード勢。唯一勢いのあるオット・タナク選手(DMACK WRT:フォード フィエスタ RS WRC)が不調の今回、誰も表彰台を狙える選手はいませんでした。何気に6位に入ってるマッズ・オストベルグ選手(MスポーツWRT:フォード フィエスタ RS WRC)はすごいんですが、もう少し一発の速さのような切り札がないと辛いです。
【動画】ステージ14 – 17 ハイライト
【動画】ラリー・ドイチェランド ハイライト
おわりに
オジエ選手の本気炸裂!という結果になりましたが、ヒュンダイ勢も確実に速くなっていますし、今季後半はもう少し接戦になってくれると面白いですね。
第10戦ラリー・チャイナは洪水の影響でキャンセルになりました。第11戦ツール・ド・コルス ラリー・フランスは9月29日(木)開催です。
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