【映画感想】LISTEN リッスン/音楽は空気の振動じゃない、心の共鳴だ

2016年6月25日

movie
ろう者が奏でる無音の音楽映画『LISTEN リッスン』鑑賞してきました。音がない分を映像で補うのかな?と思っていたら、違うんです、聞こえるはずないのに聞こえてくるんです・・・(ホラーではありません)。

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作品紹介

『LISTEN リッスン』は最初から最後まで無音のまま視覚だけで観る映画です。監督の牧原依里さん、雫境さんそして出演者もほぼ全員がろう者の方たち。手話を使った彼らのインタビューやパフォーマンスの全てに音はなく、館内に入る前に耳栓まで配布される徹底ぶり。

耳の聞こえない彼らが普段感じている音楽の姿を体感しながら、そもそも音楽とは何なのか?という答えを探す、アートドキュメンタリームービーです。

【動画】LISTEN リッスン 予告編

 

感想

これは体感型ムービーだ!

冒頭は単にテレビをミュートしただけのような印象でした。しかし、次第に白黒の映像がカラーに変わっていくように変化していきます。

映像の中の動きに合わせ、心が共鳴して音を鳴らす。無意識のまま記憶にある音を探してパズルのように当てはめていく。風の音、波の音、大地を蹴るクツの音。それだけではなく出演者たちが紡ぎ出す動作の一つひとつに音色が重なって聞こえます。軽やかな動きにはバイオリンのメロディーが、ゆっくりとした身体の流れにはチェロの低く太い旋律が、速く鋭く鋭いモーションと同時に響くのはパーカッション。視覚がこんなにも音に影響しているとは知らなかった。

聞こえていないのにいつの間にか身体の動きがシンクロしてリズムが生まれていくところや、何というか、音を自由にできる解放感みたいな新しい感覚も新鮮で、最近では4DXシアターなんてのもありますが『LISTEN リッスン』もある意味極限まで無駄な感覚を削ぎ落とした体感型ムービーです。

 

聞こえなくなる不安が消えた

ずっと前のことですが、突然右耳が聞こえなくなったことがありました。全然聞こえないわけではないけれど、周波数の低い耳鳴りがずっと鳴り響いて本当の音が聞こえず、しかも24時間続くので結構なストレスです。

病院に行ってみると突発性難聴と診断され、若干でしたが左耳の聴力も落ちているとのこと。原因は過労によるストレスとかビタミン不足とかそんな感じで、ハッキリした理由はなく完治するかもわからない状態でした。

気長に治療していきましょうと言われモヤモヤした気持ちのまま病院を出て川沿いの道を歩いていると、木々の揺れる音や普段なら気に留めないような音たちがボンヤリを聞こえてきました。もうすぐこんな自然の音も好きな音楽も聴けなくなってしまうのかな、と重い不安にしばらくの間包まれていました。

映画が始まる前に一瞬だけそのとき感じた恐怖を思い出したのですが、すぐに忘れることができました。無音とは思っていたよりも賑やかなのかもしれません。

幸運だったのか、耳鳴りは2、3ヶ月後には完治して元の生活を送れるようになりました(この前ライブに行ったら2日くらい右耳が聞こえにくくなって焦りましたが)。

 

それぞれの音を知りたい

映画の中でインタビューを受けた出演者が、音のない音楽ってあると思うかの質問に「あると思うよ」って普通に答えていて、そのときに耳が聞こえないイコール音が聞こえないという発想が間違っていると気づきました。音は耳が受け取とった信号を脳が記録して再生している信号なんですよね。音を鳴らすのは耳じゃない。

中学の頃に吹奏楽部にいたおかげなのか、たくさんの楽器の音色が聞こえました。無数の音の粒。もっと真剣に音楽と向き合っておけば良かったなと思えるくらい受け取りました。この映画、観た人がどんな音や音楽を聴いて生きてきたかによって映画の感想も変わってくるんでしょうね。テルミン奏者とか(意外と音色合いそう)、レゲエシンガーとか(どんなときも前向きになれそう)、ラッパーとか(なんだかんだで万能)どんな音楽が聞こえたんでしょう?

もしかしたら音を聞いたことがない人も、頭の中で独自の音を創り出して、それが音楽になっていろんな記憶と結びついているのかも。だとしたらとっても素敵だな。どんな音を聞いているんだろう。お互いに聞こえる音を話し合ってみたい。

 

おわりに

映画が終わって振り返ってみると、音がなかったなんて信じられませんでした。出演者たちが奏でていたのは紛れもなく音楽で、映画と共鳴する心の音を確かに聴きました。

いつかまたこの映画を観たときには、頭の中で今と違う音楽が奏でられるのでしょうね。

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