トルコへの強制送還で閉ざされたEUへの道【ヨーロッパ難民問題】

destructionシリア国内での戦闘停止がニュースとして流れた後は、ほとんど報道されなくなってしまったヨーロッパ難民問題。その現状を調べてみました。

 

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ヨーロッパ難民問題の現状

海を渡ってヨーロッパに渡った人の数は2016年4月には約1万3千人まで減少しました。ピーク時の2015年10月には20万人を超えてからは急激に減っています。シリア国内で停戦の流れがあったことも要因の一つですが、EUが難民の受け入れを厳しく制限し、不法入国した難民はトルコへと強制送還されるようになったことが大きいと思われます。

Refugees/Migrants Emergency Response – Mediterranean(UNHCR)

 

 

閉ざされてしまったEUへの道

EUとトルコ間の協議で決められた条件は、ギリシャなどEU領内に海を越えて渡ってきた難民はトルコに強制送還し、引き換えにトルコ領内で暮らしている難民をEU各国が引き取るという内容になっています。

これによりヨーロッパに逃げたとしても結局はトルコの収容所で暮らすことになりますので、危険な海を渡ってまでギリシャに向かう意味がなくなってしまいました。それでも1万人以上がたどり着いていることを考えると、それだけ必死だということなのでしょう。

「強制送還」されていく難民、その悲痛な叫び(東洋経済オンライン)

 

トルコではすでに250万人もの難民が暮らしていますが、キャンプには20万人を住まわせる程度の住居しかありません。学校に行けない子どもは8割と推測され、そこに人権というものは見いだせません。それでもまだ未来を諦めず生きる人たちがいるのです。

Pictures of life for Turkey’s 2.5 million Syrian refugees(INDEPENDENT)
(トルコで生きる250万人のシリア難民の姿)

 

 

停戦の裏での戦闘

一方シリア国内でも動きがありました。今年に入って報道された停戦協議により混乱は落ち着くかと思われましたが、あくまでもアサド政権(ロシアが支援)と反政府勢力(アメリカが支援)の間での協定であって、イスラム国(IS)などに対しての攻撃は続きました。特にアサド政権を支持するロシアの猛攻によってイスラム国からの拠点の奪還など国内安定への進展もありましたが、独裁政権に対抗するために生まれた反政府勢力の力も一緒に削がれているように見えます。

最近になってようやく本格的な停戦に向けての協議が進められていますが、内戦が落ち着いた後にアサド政権が全ての実権を握る体制が整ったためだと考えることもできます。

このままでは難民にとっては、トルコで苦しい生活を続けるか、アサド政権の独裁体制下で生きるか、どちらにしても自由のない選択肢しか残されないことになってしまいます。

Lavrov, Kerry: Syria meeting sees progress, agrees to turn truce into real ceasefire(ロシア・トゥデイ)
(ロシアのラブロフ外相とケリー国務長官の会合で本格的な停戦に近づく)

アサドを利する「シリア停戦」という虚構(ニューズウィーク日本版)

 

 

おわりに

報道しないのは日本だけかと思ったら、少なくとも英語のニュース媒体でもかなり扱いが少なくなってきています。もしかしたらアメリカも手を引いてアサド政権に元通りという筋道がすでに立てられているのかもしれません。

内戦が早く終結させることは確かに今一番重要なことです。でも建物も歴史も文化もボロボロになった独裁国家に、戻りたいと思う人はいるのでしょうか。

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