傷ついた心で幸せになれるの?【ショート・ターム】感想です(ネタバレなし)
つい先日、Apple Storeで「ショート・ターム」が100円レンタル対象になっていたので借りてみました。重いテーマではあるんですが、それだけに深く考えさせられることの多い作品でした。
多くの人に観てもらいたいと思ったので、ネタバレしないようちょっとだけ感想を書きます。
あらすじ
心に傷を持つ少年少女たちを保護するための施設「ショート・ターム12」。そこではグレイスや彼女の恋人のメイソンらケア・マネージャーと、一時的に受け入れられた子供たちとの共同生活の場です。
様々な理由によって不安定な感情を抱える入居者たちは、ときに反発したりしながらも支えあい心を落ち着かせ、いつか旅立つ日を迎えます。その間グレイスたちは厳しい素振りを見せながらも優しく見守り、そっと背中を押してあげるのです。
ある日新しくジェイデンという少女がやって来ます。周囲と打ち解けようとしない彼女にやがてグレイスは昔の自分の姿を重ね始め、現在の不安と過去の苦痛の中、子供達と同様に自身も変化していくのでした。
- 監督・脚本:デスティン・ダニエル・クレットン
- 主演:ブリー・ラーソン
- 製作国:アメリカ
- 上映時間:96分
感想
もどかしい、仕事という名の壁
ケア・マネージャーたちはは施設に入れられている子供たちの世話をしていますが、あまり距離を取り過ぎてもいけないし親密になり過ぎてもいけないという制約があります。しかも施設の外に出てしまえば、触れることも許されません。あくまでも管理するお仕事なのです。
ですが単なる仕事として受け止めていると子供たちに見透かされてしまいます。遠過ぎず近過ぎずのシビアな関係の描写は、どっちに転ぶかわからない不安定な感覚をうまく作り出していて観ている間変な汗が出てました。
新人ケア・マネージャーのうっかり発言に反発するシーンや子供たちが持つ繊細で鋭い嗅覚など、普段ならスルリと流されてしまいそうな細かい部分にフォーカスを当たっていて、この辺りは監督自身が実際にこういう施設で働いて感じた体験から生まれたのではないかと思います。
傷つけられても優しさを
ときには喧嘩もします。疑心暗鬼になることもあります。問題があるから連れてこられた子供たちではありますが、でも決して悪人ではないんです。彼らは辛い思いをしている仲間がいれば励ましてあげられるような思いやり持っています。人を傷つけるくらいなら自分を傷つけてしまうくらい繊細な心の持ち主です。
ちょっとだけ物語のキーワードを出しますが、ストーリーの中で「タコのニーナ」のお話が登場します。これによりグレイスがあることに気づくのですが、僕にとっては子供たち同士の姿にも見えてきました。お互い友達になりたいのに、その方法を知らず相手を傷つけてしまう。そんな彼らのメタファーでもあるように思えるのです。
心を傷つけられていても優しさを持ち続けられる子供たちの強さに感動すると同時に、彼らが苦しい過去を背負わされていることへの不条理さに困惑しました。
ぜひご自身でも見て、確認して、何か感じてもらえればと思います。
願わくば、みんなに希望を
この映画は奇抜なアイディアを楽しむような作品ではなく(ビックリすることはあるけど)、現実と向き合うことの苦しさを体感するような内容です。小刻みに揺れる手持ちのカメラの映像は、まるでその場に立たされているような気持ちになって、目を逸らすことを許してくれません。
だからこそ最後に訪れる希望がみんなに届いて欲しいと心から願えるようになっています。現実はそんあんい甘くない。それでも希望を捨てないで欲しいと思える暖かい物語でもありました。
この感想を書くために参考にさせていただいたサイトやブログ
- ショート・ターム (Short Term 12) 感想(きままに生きる 〜映画と旅行と、時々イヤホン〜)
- ショートターム 【感想】(から揚げが好きだ。)
- #183 ショート・ターム/寄り添う時間(tsunagu.)
おわりに
自分自身も内に秘めた過去を抱えながらも強く生きようとするラーソンさんの姿が素敵でした。日本でも今年になった「ルーム」も評価が高いようで、耐え抜こうとする力強さを演じられる女優なんですね。
「ショート・ターム」は人を観る人を選ぶと思いますが、最後まで観続けた人には強く心に残る作品になるでしょう。子供たちの、そして命の大切さを教えてくれた映画でした。
彼氏、彼女と一緒に観れば結婚したくなっちゃうかも?