一時期は大きく報道されたヨーロッパ難民問題は最近ではテロ事件や受け入れ反対の姿勢などの陰に隠れがちですが、シリアの内戦停止のように今後に影響しそうな出来事も起こっています。
ヨーロッパ難民問題の現状と、シリア内戦停止について考えてみました。
ヨーロッパ難民問題の現状
EU各国が難民の受け入れに抵抗を示し始めても、2016年3月に海を渡ってヨーロッパに渡った人の数は3万人を超えました。ドイツなど最終目的地の態度が変化していることが難民にも伝わっていること、まだ寒さが厳しく動きにくいこと、シリアの内戦停止が落ち着きを見せていることなど様々な原因が考えられますが、2015年10月をピークに減少傾向にあります。
暖かくなる春以降の動向が気になります。あとはシリア以外、アフガニスタンやイラクからも増えていたりと不気味な兆候が見られます。
Refugees/Migrants Emergency Response – Mediterranean(UNHCR)
シリア国内の一時停戦は希望の光なのか
2月末、アメリカとロシアが呼びかけたシリア国内の一時停戦が実施されました。これによりアサド政権側と反体制派の間での戦闘が停止されました。
これまでシリア国内では3つの勢力による争いが続いてきました。
- ロシアが支援するアサド政権側
- アメリカが支援する反体制派
- 両者の混乱に乗じて勢力を伸ばしてきたイスラム国
ここに来てアメリカとロシアが歩み寄ったことでアサド政権が率いるシリア政府の悩み事も減り、イスラム国の掃討に注力できるようになりました。アサド大統領は反体制派との協力体制を示唆する発言もあり、停戦後の新しい国づくりにも一筋の光が射しました。
もともとは独裁政権による不満から火がついたシリア内戦。まだまだ予断は許されませんが、難民たちが故郷に戻るためにも必要な一歩がようやく始まったようです。
Syria’s Assad says ‘opposition’ could join new government(BBCニュース)
(アサド大統領、新政権では反体制派との協力の可能性があることを示唆)
ドローンによるシリアの都市ホムス上空からの映像
イスラム国から奪還したシリアの古代都市遺跡パルミラの様子
イスラム国の見境ない攻撃
昨年フランスで発生したパリ同時多発テロ事件、今年に入ってからはベルギー連続テロ事件と悲惨なニュースが続いています。報道の差はありますがレバノンやパキスタンなど中東でもテロ攻撃が繰り返されており、今後も何が起こるか予測できません。
追い詰められつつあるイスラム国のなりふり構わない攻撃なのか、それとも他に理由があるのか。今は見えない恐怖が世界中を包み込んでいます。
おわりに
シリア国内が落ち着き、難民が故郷に帰れるようになればヨーロッパ難民問題も解決への道が開けるようになります。しかし拠点を奪われる形になるイスラム国が次なる標的を狙う可能性もあり、中東やヨーロッパだけではなく世界中どこでも注意しなければならないと思っています。
アフガニスタンの動向の気になりますし、目を向ける範囲がどんどん広がっていきますが、これからもフォローしていきます。
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