3月3日(木)から4日間にわたり開催された、世界ラリー選手権(WRC)の2016年シーズン第3戦ラリー・メキシコ。前回の記事に続いて感想を交えながら結果を振り返ってみたいと思います。
世界ラリー選手権(WRC)2016 第3戦 ラリー・メキシコの結果と感想です(その1)
DAY3:天国と地獄
DAY3は9ステージ152.40kmと今回のイベント中最も長い距離を走ります。この日の天候も良く、眩しく輝く朝日が空に昇ります。スタート時点の気温は12度、最高気温は28度と暑い1日が予想されます。
前日と同じくトップ勢は柔らかめのタイヤを多く選択、フォルクスワーゲン・モータースポーツのヤリ‐マティ・ラトバラ選手のみ硬めのタイヤを多めにチョイスします。ちなみにラトバラ選手は3本のハードタイヤと2本のソフトタイヤを選びました(1本はスペアタイヤ)。新しいタイヤに替えることができるのはお昼の休憩時間のタイミングなので、それまでは前後左右を入れ替えながら減り具合を調整して保たせなければなりません。また1レースで使用できるタイヤの本数には制限があるので節約も大事です(ラリーメキシコでは28本まで)
(ラリーメキシコ補足規定 18ページ 7.2. タイヤ使用本数)
硬いタイヤは減りが遅く、その分グリップ力が落ちるのでタイムは上がらないのが通常ですが、ラトバラ選手は8番手の出走順というアドバンテージを活かしてこの日も絶好調。前を走るクルマが道のお掃除をしてくれるので、どんどん2位とのタイム差を広げて終わってみれば2位を堅持するチームメイトのセバスチャン・オジエ選手に1分30秒以上の差をつけてしまいました。
SS14: Ogier: ‘I’m not pushing anymore’(オジエ選手:「もうこれ以上無理しない」)
3位以下の争いでは、いろいろとアクシデントが続きます。フォルクスワーゲン・モータースポーツ2のアンドレアス・ミケルセン選手は、3位をキープしているヒュンダイ・モータースポーツのダニ・ソルド選手を追い上げていましたが集中力を切らしてしまったところでクラッシュ、昨日のリタイヤから再スタートとなった同じくヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌービル選手はこの日も派手なアクシデントを起こし病院に運ばれます。首にコルセットを付けた写真がツイッターにアップされていましたが、どうやら無事でなにより。
また、MスポーツWRTのエリック・カミリ選手もこれで3戦連続となる不名誉なリタイヤとなってしまいました。Mスポーツにとっては今大会で200戦連続ポイント獲得という大きな記録がかかっています。チームメイトのマッズ・オストベルグ選手がいつもどおり堅実な走りで4位まで浮上と健闘を見せているので、このまま大記録を達成してもらいたいですね。
ステージ11-13 ダイジェスト
ステージ14-18 ダイジェスト
ベスト・オフ・ラリーより 3日目の様子
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DAY4:ラトバラ選手、余裕のフィニッシュで今季初優勝
DAY4は2ステージのみですが、1983年以降最長の80kmを走行するステージを含む96.47kmの行程となります。ドライバーは1時間近い道のりを集中力を切らすことなく走ることを強いられます。朝の気温は6度と肌寒くなりましたが昼過ぎには28度を超えると予想され、選手にとっては厳しいレースになりそうです。
長いステージ、一瞬のミスも許されないタイムアタックとあって心配だったラトバラ選手でしたが、前半からいいリズムを掴み余裕のゴールを見せてくれました。後半は後輪のブレーキの効きが弱くなるのを察して安全走行に切り替え、前日までに築いた1分30秒以上のタイム差を活かして堂々とした走り。
追いかけるのを諦めたと言っていたオジエ選手もスパートを見せ、30秒近く差を詰める脅威の走りを見せてくれましたがさすがに及ばず。代わりにパワーステージと呼ばれる最終ステージでもトップタイムを叩き出して3ポイントをゲットし、総合2位で順位を終えました。
ソルド選手は最後までマシンの挙動やオーバーヒートに苦しみながらも3番手でフィニッシュしましたが、タイヤを29本使っちゃったということでペナルティを受け4位に降格。ヒュンダイ・モータースポーツとしてはせっかくの3戦連続表彰台が小さなミスで水の泡に。堅実な走りで4位にいたマッズ・オストベルグ選手が3位に昇格となりました。Mスポーツの200戦連続ポイント獲得が達成できたご褒美みたいですね。
ステージ20 ダイジェスト
ステージ21 ダイジェスト
WRカー、街中を移動中
最終順位
順位は以下の通りです。ペナルティなどにより最終順位は変動する可能性がありますので、確定順位はこちらでご確認ください。
順位 | 選手名 | チーム名 | 車種 | タイム |
1 | ヤリ‐マティ・ラトバラ | Volkswagen Motorsport |
Volkswagen Polo R WRC
|
4:25:57.4 |
2 | セバスチャン・オジエ選手 | Volkswagen Motorsport |
Volkswagen Polo R WRC
|
+1:05.0 |
3 | マッズ・オストベルグ選手 | M‐Sport World Rally Team | Ford Fiesta RS WRC | +5:36.4 |
4 | ダニ・ソルド選手 | Hyundai Motorsport | Hyundai i20 WRC | +5:37.9 |
5 | ヘイデン・パッドン選手 | Hyundai Motorsport N | Hyundai i20 WRC | +6:22.6 |
6 | オット・タナク選手 | DMACK World Rally Team | Ford Fiesta RS WRC | +9:59.5 |
7 | マルティン・プロコップ選手 | Jipocar Czech National Team | Ford Fiesta RS WRC | +12:58.5 |
8 | ロレンツォ・ベルテッリ選手 | F.W.R.T. | Ford Fiesta RS WRC | +14:09.6 |
9 | テーム・スニネン選手 | TGS Worldwide | Skoda Fabia R5 | +18:01.8 |
10 | バレリー・ゴルバン選手 | Eurolamp World Rally Team | BMW-Mini Countryman WRC | +32:37.3 |
感想
最近不調のヌービル選手はともかく、ミスの少ないミケルセン選手までもがリタイアしてしまうことから、想像以上に苛酷なレースだったのではないかと思います。そんな中、ようやく優勝できたラトバラ選手は大きな自信に繋がるのではないでしょうか。相変わらず優勝かリタイアかという危なっかしい感じですが、こういう人がいるから面白いんじゃないでしょうかね?
しかもこの週末、ラトバラ選手のお父さんもドイツで開催されたラリーイベントに参戦。父バラさんは三菱ランサーエボリューションIIIを駆り、親子揃っての優勝となりました。
去年はクルマごと池に落ち、タイタナックなんて造語も作り出したオット・タナク選手は今年は何事もなく無事ゴール。成績も浮き沈みの激しかった彼ですが、今季は着実に得点を重ねるスタイルを続けています。新チーム、そして新興タイヤメーカーでもあるDMACKチームとしては多くの経験値を欲しているところでしょうから、我慢のできる走りを学ぶのはお互いにとって良い結果につながりそうです。たまにはキレのある走りを見せてくれると尚嬉しい。
ソルド選手は最後に残念な結果となりました。使用タイヤ本数はチームが管理してるのかな?今後は間違えないように気をつけてくださいね。オストベルグ選手は去年に続いての好成績となりました。最後まで諦めず走り続ければいいことあるんですね。
ラリーメキシコ ダイジェスト
ベスト・オフ・ラリーより ラリーメキシコ ハイライト
ラリー・メキシコ 空撮スペシャル
おわりに
メキシコはラリーファンも多く、ダイジェストでワーワー騒いでいる姿を見てるだけでも楽しくなりました。日本でまた開催されたときも、あんな風に盛り上がるといいなぁ。
世界ラリー選手権(WRC)2016 第4戦ラリー・アルゼンチンは4月21日(木)より開催です。
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