3月3日(木)から4日間にわたり、世界ラリー選手権(WRC)の2016年シーズン第3戦、ラリー・メキシコが開催されました。氷点下のスノーラリーから一転、暑い中米でのバトルとなったこの一戦を、感想を交えながら結果を振り返っていきたいと思います。
概要
メキシコの首都であるメキシコシティから北西400kmに位置する都市、レオンを拠点に4日間、21ステージ計399.71kmに及ぶレースとなります。開催地の標高は約2,000メートル、一番高い場所は2,700メートルを超えます。
自動車のエンジンは空気と燃料を混ぜた気体を爆発させることによって発生するエネルギーを動力としているので、空気の薄い高地では20パーセント程度のパワーダウンになると言われています。30度を超えることも珍しくない高い温度も加わり、ドライバーだけではなくクルマにも適応力、耐久力が試されます。
路面は第1、2戦の雪や氷とは違いグラベル(砂利道など舗装されていない道)となり、メキシコを皮切りに同コンディションのレースが4戦続くため、今後の展開を占う意味でも重要な1戦となっています。
観戦する側としては、世界遺産にも登録されているグワナファトの市街地や美しい山脈をバックに疾走するモンスターマシンの勇姿を見られる絶好の機会ですよ。
ラリー・メキシコの紹介
ラリー・メキシコのステージ紹介
DAY1:大観衆の中、順当な滑り出し
DAY1は3ステージ、5.69kmの短いナイトステージとなります。初日の天候は晴れ。日が暮れて26度の気温から下がったものの、最初のステージ開始時点でも22度でベタつくような蒸し暑さ。
派手なセレモニーの中でスタートラインを通過した各車はすぐさま最初のステージに向かい、まずは世界遺産にも登録されている美しいグワナファトの市街地を駆け抜けます。途中にはかつて銀鉱山の地下道にも使われていたという狭いトンネルがあったりと見てるぶんには面白いけど危険なコース。ぶつけて世界遺産壊したら弁償させられるんでしょうか?
その後はスーパースペシャルステージ(SSS)と呼ばれる2台同時にスタートするコースが待ち受けています。レオン市内のサーキットコースでジャンプ台やウォータースプラッシュなど、ほぼファンサービスみたいな取り組みが、この先DAY3まで続きます。
初日で首位に立ったのは、もはや定位置フォルクスワーゲン・モータースポーツのセバスチャン・オジエ選手。3位にはチームメイトのヤリマティ・ラトバラ選手が入り、いつも通りの強さを見せます。2位にはヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌービル選手。今年のニューマシンは序盤から好調みたいです。
この日注目を浴びたのは、FWRT srlというチームでスポット参戦しているロレンツォ・ベルテッリ選手。ステージ1でトップドライバーたちを押しのけ2位でのフィニッシュとなりました。観客の多いところで目立っちゃうなんて、さすがプラダの御曹司です。
ステージ1-6 ダイジェスト
ロレンツォ・ベルテッリ選手、怒涛の走り
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DAY2:ラトバラ選手、翼を授かる
DAY2は7ステージ145.15km、エル・ショコラッテを始め、場所によっては2,700メートルを超える山道を走ります。
天候は快晴。スタート時の気温は18度ですが27度まで上がる予想となり、まずまずのコンディション。上位は柔らかめのタイヤを多く選択する中、ラトバラ選手は硬めのタイヤを選びました。
グラベルラリーでは、出走の順番もタイムに大きな影響を与えます。先頭走者は路上に積もる土埃の掃除役となってしまい思うように走れません。今季ここまで2連勝のチャンピオンシップリーター、フォルクスワーゲン・モータースポーツのセバスチャン・オジエ選手は、DAY1からDAY3までの間その役割をこなしながらも好タイムを維持します。
しかしその上を行ったのはヤリ‐マティ・ラトバラ選手でした。この日最初のステージで後続に22秒以上の差をつけて首位の座を奪うと最後は30秒以上に差を広げてDAY2のレースを終了。同じチーム、同じクルマで8番手出走のアドバンテージを活かし、今季ここまでノーポイントの鬱憤を晴らすような圧倒的強さを見せてくれました。オジエ選手も言い訳を入れつつ彼の復活を喜んでいるようです。
「それでこそ僕のライバルだよ。路面は良くなってきてるけど、後から来るクルマの方が走りやすいみたいだしね」
SS7: Latvala widens Mexico lead(ラトバラ選手、さらにリードを広げる)
一方前日2位と良いところを見せたヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌービル選手は朝一番のタイムアタックでコースアウトしてクラッシュ、リタイアとなってしましました。変わってオジエ選手に続く3位まで浮上したのはチームメイトのダニ・ソルド選手。しかし2位との差は1分以上あり、朝からクルマの挙動が落ち着かないと嘆いていました。首位争いに加わるよりも、すぐ後ろに付けているフォルクスワーゲン・モータースポーツ2のアンドレアス・ミケルセン選手とのバトルになりそうです。
ミケルセン選手の方もソルド選手を追いかけていきたいところですがコース脇にある民家の庭にミスして入り込んだりと(家の人は自慢できそう)珍しく落ち着かない様子。慎重にいってもらいたいです。
速いときはとてつもなく速いけど、最後の瞬間までドキドキなラトバラ選手。インタビューでも我慢しなければならないと言っているけど、今回こそは最後まで我慢して走りきって欲しいです。
ステージ7-10 ダイジェスト
ベスト・オフ・ラリーより 初日、2日目の様子
続きます
次回に続きます。
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