1月21日(木)から4日間にわたり世界ラリー選手権(WRC)の2016年シーズン初戦、ラリー・モンテカルロが開催されました。今年一年を占う意味でも重要な1戦目、感想を交えながら結果を振り返ってみたいと思います。
概要
ラリー・モンテカルロの歴史は古く、初開催は1911年。それ以来の伝統を持つこのレースは世界中から訪れる観光客によって成り立つモナコ王国にとって、F1モナコグランプリと並んで大事な行事のひとつとなっています。
4日間、16ステージ計374.89kmに及ぶタイムアタック区間で渡り繰り広げられる戦いは、モナコ公国のカジノ前広場をスタートし、フランス領内に入ってアルプス山脈の雪道を走るルートになります。刻一刻と変化する気象条件に、アスファルトの路面を雪と氷が覆う複雑なコンディション。滑り止めのスパイク付きタイヤにするか、スタッドレスタイヤを選択するのかと先の読めない展開に対しての采配も大切になるコースです。
ラリーモンテカルロの紹介
ラリーモンテカルロのステージ紹介
DAY1:ミーク選手、スタートダッシュに成功
DAY1は2ステージ、41.34kmの夜間コース。SS1(第1ステージ)地点の気温は-2度と低いものの、晴れていてコースもまぁまぁ良好。でも路肩には雪や泥のぬかるみがあって油断は禁物です。有力選手全員がスパイクの付いていない柔らかめのタイヤを装着してのスタートとなりました。
全車慎重な出だしとなり、迎えたこの日の最後となるSS2。ゴール付近の約4km区間で路面が凍結しており、フォルクスワーゲン・モータースポーツのヤリ‐マティ・ラトバラ選手のクルマがコントロールを失い石にヒット、サスペンションを破損してしまいました。無理はしないって言ってたのに〜。でもこの後すぐサービスパーク(車両を修理できる場所)に行けたので大丈夫でした。
初日はアブダビ・トタルWRTのクリス・ミーク選手がトップ、続いてフォルクスワーゲン・モータースポーツのセバスチャン・オジエ選手、フォルクスワーゲン・モータースポーツ2のアンドレアス・ミケルセン選手が続きます。4、5番手はヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌービル選手、そして初戦はヒュンダイ・モータースポーツNからの参戦となったヘイデン・パッドン選手となりました。
ステージ1-5 ダイジェスト
DAY2:オジエ選手、定位置に着く
DAY2は6ステージ、115.52kmと朝から本格的な戦いが始まります。スタート地点の気温は-2度、この日も快晴でアスファルトの路面も乾いていますが、日陰では氷が残っている箇所もあり安心はできません。この日もトップドライバーたちはスパイクの付いていない柔らかめのタイヤを装着しました。余談ですがミシュランのスパイクタイヤは200個もの金属のトゲドゲで覆われているんだそうです。
フランス領内のアルプス山脈を走るコースはセバスチャン・オジエ選手の出身地都市ギャップのすぐ近くでもあったりします。超ホームコース。
絶対いいとこ見せたいオジエ選手がこの日の注目を集めます。午前中のステージでオジエ選手がトップに躍り出ると、午後に入ってからミーク選手が再度奪い返します。この日の最終2ステージとなったSS7、SS8では再びオジエ選手が逆転したところで2日目が終了となりました。
セバスチャン・オジエ選手とアブダビ・トタルWRTのクリス・ミーク選手が次元の違う走りを見せ他の選手を置き去りに。3位に浮上したヤリ‐マティ・ラトバラ選手は1分以上も引き離されてしまいました。4位も同じフォルクスワーゲン勢のアンドレアス・ミケルセン選手と続き、ヒュンダイ・・モータースポーツのティエリー・ヌービル選手がデビュー戦となったニューマシンのセッティングに苦しみながらも5位と健闘しています。彼曰く「足回りがグダグダ」だとか。同じヒュンダイ勢のヘイデン・パッドン選手はこの日最初のSS3で凍った路面に足を取られてクラッシュ。同じ場所で犠牲になったスポット参戦のロバート・クビカ選手と共にリタイヤとなってしまいました。
ステージ6-8 ダイジェスト
DAY3:ミーク選手、ラトバラ選手の脱落でオジエ選手独走!
DAY3は5ステージ、172.75kmと今イベントで最も長い距離になります。スタート時の気温は-2度と相変わらず低いものの快晴が続き、コース上のコンディションは概ね良好。
セバスチャン・オジエ選手とクリス・ミーク選手による首位争いがこの日も続く展開に。そして午後に入ると大きなドラマが待っていました。
首位の2人を追っていたヤリ‐マティ・ラトバラ選手がSS11走行中にコーナーを曲がりきれず外側の溝にハマってクルマを損傷。なんとか走り出したもののリタイヤとなりました。この際にクルマと観客との接触があったとして審議の対象になりました。
続いて犠牲になったのは首位を争っていたミーク選手。SS12完走後にリタイヤしてしまいました。前のステージでクルマを破損したダメージが大きく続行を断念。惜しい。
1日が終わってみると、トラブルもなく快走するセバスチャン・オジエ選手の独走状態になっていました。この日は他の選手と異なりスパイクタイヤを装着して挑んだアンドレアス・ミケルセン選手が調子を上げ、上位陣の脱落もあって一気に2位に浮上。ニューマシンのセットアップに試行錯誤しながらもペースを掴み始めたヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌービル選手がその後ろ姿を追いかけます。
ステージ9-10 ダイジェスト
ステージ11-13 ダイジェスト
DAY4:オジエ選手優勝、フォルクスワーゲンの1-2フィニッシュ!
最終日DAY4は3ステージ、45.28kmの短い工程。気温は1度と少し温かく良い天候も最後まで続き、上位陣の順位が変わるような波乱は起こりませんでした。
最終SS16のパワーステージでもセバスチャン・オジエ選手が最速タイムを記録し、ヒュンダイ・モータースポーツのダニ・ソルド選手がここで頑張り2番手に。チームメイトのティエリー・ヌービル選手が3番手につけ、それぞれ3ポイント、2ポイント、1ポイントを獲得です。
独走状態のままオジエ選手が優勝し、パワーステージの3ポイントと合わせて計28ポイントのチャンピオンシップポイントを獲得。2位のアンドレアス・ミケルセン選手との1-2フィニッシュとなりあした。ティエリー・ヌービル選手はニューマシンのデビュー戦で表彰台に上がる好成績が出せてひと安心ですね。我慢しながらも冷静に最後まで走るスタイルは彼らしさが出てて、これなら復調間近かも。
順位は以下の通りです。ペナルティなどにより最終順位は変動する可能性がありますので、確定順位はこちらでご確認ください。
順位 | 選手名 | チーム名 | 車種 | タイム |
1 | セバスチャン・オジエ選手 | Volkswagen Motorsport |
Volkswagen Polo R WRC
|
3:49:53.1 |
2 | アンドレアス・ミケルセン選手 | Volkswagen Motorsport II | Volkswagen Polo R WRC | +1:54.5 |
3 | ティエリー・ヌービル選手 | Hyundai Motorsport | Hyundai i20 WRC | +3:17.9 |
4 | マッズ・オストベルグ選手 | M‐Sport World Rally Team | Ford Fiesta RS WRC | +4:47.7 |
5 | ステファン・ルフェーブル選手 | Abu Dhabi Total World Rally Team | Citroën DS3 WRC | +7:35.6 |
6 | ダニ・ソルド選手 | Hyundai Motorsport | Hyundai i20 WRC | +10:35.5 |
7 | オット・タナク選手 | DMACK World Rally Team | Ford Fiesta RS WRC | +11:39.9 |
8 | エルフィン・エバンス選手 | M‐Sport World Rally Team | Ford Fiesta R5 | +18:30.8 |
9 | エサペッカ・ラッピ選手 | LAPPI Esapekka | Skoda Fabia R5 | +20:41.0 |
10 | アルミン・クレマー選手 | BRR BAUMSCHLAGER RALLY & RALLY TEAM |
Skoda Fabia R5 | +20:43.9 |
ステージ14 ダイジェスト
ステージ16 ダイジェスト
ラリーモンテカルロ・プレビュー
おわりに
結果を見ると、我慢ができて堅実な走りをするメンバーが上位を占めました。全日程で天候に恵まれたとはいえ、ところどころ凍結した路面に慎重にならざるを得ないコンディションでは、無理をしないで最後まで走る能力が必要なのでしょう。
あとは途中まで優勝争いを演じたミーク選手が光っていました。乗っていたのは去年の型落ちモデルなんですが、最新の改良型に乗れるオジエ選手と互角の勝負ができてましたね。今季はどのマシンも性能の差はそれほどなく、ドライバーの腕次第では誰でも優勝の可能性があるのかもしれません。リタイヤにはなってしまいましたが、世界トップクラスのスピードを持つミーク選手をトヨタが獲得に失敗したのは痛いなぁ。
ラトバラ選手は観客との接触があり5,000ユーロ(約64万円)の罰金と執行猶予付きですが今季1戦の出場停止という処分が下されました。これで今年もまたチャンピオンシップ争いから一歩遅れを取ってしまいましたが、引きずらずに頑張って欲しいところです。この件についてはまた別の記事に取り上げてみたいと思います。
世界ラリー選手権(WRC)2016 第2戦ラリー・スウェーデンは2月11日(木)より開催です。
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