WRC(世界ラリー選手権) 2015 第9戦 ドイチェランドが開催されます。ドイツと言わず、ちゃんと国名をドイツ語にするのが通例です。なかなか聞き慣れませんが。
開催拠点はドイツ西部の歴史ある都市トリーア。競技は3日間、21ステージ374.43kmの舗装路を走ります。今季はここまでグラベルと呼ばれる砂利道続きだったため、各チームともクルマのセットアップやドライビングスタイルを大きく変更することになり、選手やメカニックたちの腕の見せ所となります。
DAY1
DAY1は8ステージ136.30km、ドイツ郊外にあるブドウ畑など美しい光景が広がる中を走ります。とはいえ道の両側にそびえ立つブドウの木々はまるでトンネルのようで視界も悪く、ドライバー達にとっては厳しいコースとなっています。
そんな条件の中、去年は初日にコースアウトしてリタイアとなってしまったフォルクスワーゲンのセバスチャン・オジェ選手が初日の暫定トップとなりました。2位、3位にもチームメイトのヤリマティ・ラトバラ選手とアンドレアス・ミケルセン選手が続き、なぜか母国イベントなのに勝ったことのないフォルクスワーゲンチームにとって幸先の良い出だしとなりました。
4位と5位にはヒュンダイのダニ・ソルド選手とティエリー・ヌービル選手。韓国メーカーではありますが、WRCチームの本拠地はドイツなのでこちらも力が入っています。怒涛の4台エントリーやイベント中のアピールなど積極的な姿勢を見せているので、できるだけ上位の結果も欲しいところ。
フォードの暴れん坊、オット・タナク選手はスタート直後にマシンを壊すハプニング。いっつも何か起こしてから速くなる人なので、クルマも大きな損傷はないようですしDAY2で覚醒するのか楽しみです。
来季の去就に揺れるシトロエンのクリス・ミーク選手は途中まで4位とまずまずの結果でしたが、6ステージ目でコースアウトしてしまいクルマも損傷。トップからは11分以上離される絶望的な状況です。そろそろチームのトップから愛想を尽かされてしまうんじゃないかと心配です。
この日の最終ステージでは、元F1ドライバーのロバート・クビサ選手(フォード)がコースアウトした衝撃でフロントガラスにヒビが入り、前が見えないので蹴破って再度走りだしたとのこと。他にあまり大きなアクシデントはなく、各選手とも慎重な滑り出しとなりました。
DAY2
DAY2は9ステージ、170.79km。軍事演習場という特殊なエリアを含むステージを走ります。軍の施設は荒れたコンクリートの路面や、路肩に並んだ戦車止めと呼ばれる大きな石など(クルマにとってのガードレールのように、戦車が道からはみ出してしまわないようにするために設置されています)他にはない特徴を持っています。もちろん戦車止めに当たれば大破してしまいますから慎重にならなくてはなりません。
この日もフォルクスワーゲン勢がトップ2を独占となりました。セバスチャン・オジェ選手が徐々に調子を上げ2位以下を引き離しにかかりました。追いかけるヤリマティ・ラトバラ選手、アンドレアス・ミケルセン選手もこれにはお手上げで、もう無理せず現在順位をキープする作戦を取ったようです。
フォードのオット・タナク選手はまたコースオフしてしまい、クルマの前部に木の枝を詰め込んだまま走ることになったりと、このイベントではいつもの活躍が見られません。コースの特徴のせいか大胆さよりも慎重さの方が必要なようで、地味に速いチームメイトのエルフィン・エバンス選手が6位を維持しています。
4位、5位には昨日と同様ヒュンダイのダニ・ソルド選手とティエリー・ヌービル選手がつけていますが、7位のシトロエン、マッズ・オストベルグ選手までは1分以内の混戦模様。簡単に順位が入れ替わってしまうので小さなミスも許されません。
最終日は4ステージのみですが、去年も独走していたラトバラ選手がいきなりリタイア、これで1位に繰り上がったクリス・ミーク選手も次のステージでリタイアと大波乱がありましたので、まだまだ何が起こるかわかりません。
DAY3
最終日DAY3は4ステージ67.34kmと短いためDAY2から順位に変動はなく、フォルクスワーゲン勢の1-2-3フィニッシュによって幕を閉じました。最後の最後に2位のヤリマティ・ラトバラ選手が本気を出して、トップのセバスチャン・オジェ選手が「ラトバラが鬼のように迫ってくるよ!」なんてインタビューで答えたりしましたが、タイム差がかなり離れていたので結果としては変わらず。フォルクスワーゲンにとっては鬼門となっていた母国イベントで、ようやくの初勝利となりました。
ダニ・ソルド選手とティエリー・ヌービル選手が4位、5位入賞と活躍したヒュンダイは、マニファクチャラー部門でシトロエンを抜きフォルクスワーゲンに次ぐ2位に浮上。こちらも活動の拠点ドイツで大きなプロモーションになったのではないでしょうか。
6位に入ったフォードのエルフィン・エバンス選手はフォルクスワーゲン以外で唯一ステージ最速タイムを記録しましたが、改良型マシンで初のアスファルトコース、まだまだセッティングがうまくいかないのか表彰台争いを挑むには少し力不足でした。
次のラリーオーストラリアでは早くもオジェ選手の年間チャンピオンが決まる可能性があります。もうちょっとライバルチームにも頑張ってもらって、もっと盛り上げて欲しいところです。
次戦のWRC 2015 第10戦 オーストラリアは9月10から開催されます。
最終結果
順位 | 選手名 | メーカー | タイム差 |
1 | セバスチャン・オジェ選手 | フォルクスワーゲン | – |
2 | ヤリマティ・ラトバラ選手 | フォルクスワーゲン | 23.0 |
3 | アンドレアス・ミケルセン選手 | フォルクスワーゲン | 1:56.6 |
4 | ダニ・ソルド選手 | ヒュンダイ | 2:09.3 |
5 | ティエリー・ヌービル選手 | ヒュンダイ | 2:33.8 |
6 | エルフィン・エバンス選手 | フォード | 2:52.1 |
7 | マッズ・オストベルグ選手 | シトロエン | 3:12.5 |
8 | オット・タナク選手 | フォード | 4:26.6 |
9 | ハイデン・パドン選手 | ヒュンダイ | 4:46.8 |
10 | カリド・アルカシーミ選手 | シトロエン | 4:54.5 |
今シーズンのドライバー順位等は以下にあります。
ビデオクリップ集
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド プレビュー
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド SS1-4
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド SS5-6
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド SS7-13
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド SS11 ティエリー・ヌービル選手のオンボードカメラ
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド SS14
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド SS15-20
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド SS21
WRC 2015 第9戦 ドイチェランド レビュー
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